日本漢字能力検定協会が先ごろ、多くの国民が選んだ今年一年を表す漢字を「戦」と発表した。ロシアによるウクライナへの侵攻や北朝鮮からのミサイル発射が続いていることを思えば当然か。
ちなみに記者は「黒」を選んだ。三つの黒が思い浮かんだからだ。一つ目の黒は「宗教と政界」。7月に起きた安倍晋三元首相銃撃事件を発端に、信者に高額献金を求める宗教団体と多数の政治家の関係が露出した。二つ目は「五輪と金(かね)」。問題の多発した東京2020オリンピックでは、開催1年後の8月にも組織委員会の元理事が収賄容疑で逮捕された。
この手の黒は、政界や財界の圧力で隠蔽(いんぺい)されることもある。しかし今は、大きな自然災害に何度も見舞われた平成の30年を経て令和に入った。働き盛りには子どもの頃に被災し、数々の不条理に泣きながら成長してきた人が多い。まっとうな政や組織を求める気持ちが強く、権力や金に弱い人の業を見逃すまいという意識がさまざまな現場で働いた結果、問題が明るみに出たのだとしたら、時代の変化を感じる。
最後の黒は、落語家三遊亭円楽さんの9月の逝去。大喜利が好評のテレビ番組「笑点」では「腹黒キャラ」を演じて人気を博した。「えんらくっち」のいない笑点は今も寂しい。
そんな回顧をしながら、年の瀬に机周りの大掃除を進めている。しっかり汚れを清め、良い年を迎えたい。(林)