北海道アイヌ協会理事長 加藤忠さん(81) 「ようやく」感慨と期待 多様性認め合う大切さ発信を
- 2020年5月23日
白老町の自宅からほど近い民族共生象徴空間(ウポポイ)前を愛車の自転車で通るたび、真新しい建物を眺めては完成の喜びに浸る。北海道アイヌ協会理事長として身を粉にし国へ訴え続けた「差別のない共生社会の実現」。国がアイヌを法的に先住民族と位置付け、政策推進の”扇の要”としたアイヌ文
白老町の自宅からほど近い民族共生象徴空間(ウポポイ)前を愛車の自転車で通るたび、真新しい建物を眺めては完成の喜びに浸る。北海道アイヌ協会理事長として身を粉にし国へ訴え続けた「差別のない共生社会の実現」。国がアイヌを法的に先住民族と位置付け、政策推進の”扇の要”としたアイヌ文
千歳市で幼い頃からアイヌ文化に触れ、儀式や舞踊を学んできた。民族共生象徴空間(ウポポイ)の開業を「アイヌへの注目度が高まる中、大きなコミュニティーができるのはいいこと。僕たち若手が伝承者として育ちやすい環境になる」と歓迎する。 父方の祖母がアイヌ民族。6歳の頃から、祖母のいとこで千歳地域のア
さまざまな種類の彫刻刀を駆使し、木に新たな命を吹き込む。細かなうろこ模様を彫り込む時は息を潜め、のみの先端に気力を集中させる名工。開業を控えた民族共生象徴空間・ウポポイに「アイヌ文化の拠点施設として、若い工芸作家たちを育ててほしい」と技術継承の場となることを強く願う。 渦巻きやとげの形を多く
「ウポポイ(民族共生象徴空間)に200億円も使っているが、アイヌの総意とは思えない」。アイヌの精神文化を熱心に伝承するがゆえに、アイヌ同士でも意見は対立する。2019年に新ひだかアイヌ協会を抜け、新たに静内アイヌ協会を設立。アイヌの尊厳を取り戻そうと奔走し、「アイヌのあるべき姿」と向き合ってきた。
「ウポポイ(民族共生象徴空間)ができることで若い人がアイヌに興味を持ち、文化を伝えようとしてくれている。それだけでもとてもありがたいこと」 アイヌ文化を伝承する団体「苫小牧うぽぽ」で先頭に立って活動。ウポポイへの期待は、いやが上にも高まる。後継者を育てる大変さを日頃から実感しているだけに、
「観光の側面は否定しないが、それだけで突っ走ってはいけない。アイヌ文化の伝承、言語の継承につながるよう、民族共生象徴空間・ウポポイに研究機関としての役割を果たしてほしい」 言葉の節々にこもる力。文化と言語の伝承に取り組み、先住民族としての権利回復のために活動してきた。揺るぎない信念は、父親
「遺骨の尊厳を守ることは、今を生きるアイヌの尊厳を守ること。遺骨問題はアイヌの根幹」―。北海道大学などが研究目的で保管していた先祖の遺骨を、地元の土に返そうと活動してきた。返還申請のない遺骨がアイヌ文化復興拠点・民族共生象徴空間(ウポポイ)の慰霊施設に集められる現状に「人道上、おかしい。同胞がさま
「若い人が誇りを持って頑張っている。『アイヌに生まれてよかった』と自信を持って働いている」 アイヌの踊りや音楽、工芸などの素晴らしさを伝えようと、民族共生象徴空間(ウポポイ)で準備を進める若者たちを温かい目で見守る。白老アイヌ協会の理事長として開業を心待ちにしてきた。「ウポポイができて終わりで