若い頃、記者のコラムで速度違反の取り締まりを「ねずみとり」と書いたことがある。後日、当時の某警察署副署長から、雑談の中でやんわり注意された。「取り締まりに引っ掛かったら誰もが面白くない。職場や家族、仲間うちの会話の中で、ねずみとりを使うのは構わない」。しかし、「コラムとはいえ、記事で使うのはどうかな?」
副署長は「速度の取り締まりにはどういう意味があるのか、何のために行っているのか、改めて交通ルールを考えてみて」と穏やかに諭した。コラムの意図は直接取り締まりとは関係なく、全く違うところにあったので「目くじらを立てて怒る話でもないけれど」と笑って付け加えた。
先日、今風の若者との会話で「ブンヤ」(新聞記者)という単語が飛び出した。「今の言い方はTPOを考えた方がいいかも。私はあまり気にならないけど、不快に思う人もいる。問題ないと思うならそのままでいいよ」と笑って伝えた。後日会うと「問題ないと思ったが、一部の先輩に聞くと注意された。今までそういうことを笑って言ってくれる人がいなかった。ありがとうございます」。相手が受け入れやすいように礼儀と作法を、角を立てずに伝える難しさ。(高)