胸の高まり

胸の高まり

 千歳市が「国際空港のまち」の歴史を紹介する時、誇るように取り上げるのは「村民総出で滑走路を整備した」事実。飛行場整備と飛行機の着陸の経緯は1983年発行の増補千歳市史に詳しい。

   小樽新聞社(当時)の北海1号機が千歳飛行場に初めて着陸したのは26(大正15)年10月22日。今から98年前のことだ。この年の8月に私鉄の北海道鉄道が開通し、千歳村には千歳と美々の二つの駅が設けられた。同社はさけますふ化場の見学と観楓の団体約200人を千歳に送り込むことになり、千歳駅に到着した観楓客に社機から歓迎ビラをまく企画を立てた。「着陸し、飛行機を村民に見せてほしい」という要望に視察の操縦士らは「木の株を取れば可能」と答えた。

   中心部の約100戸が話し合い、整地を決定。小学生、男女青年団、在郷軍人など村民約400人が2日間、汗だくで作業し、ひょうたんから駒が出るように観楓会から飛行場ができた―そうだ。

   好奇心あふれる村民の奉仕が、100年後の2026年の開港100周年につながった。今、千歳では次世代半導体製造のラピダスの工場建設が進む。千歳だけでなく近隣にも影響の広がりが報道されている。進出計画の成否を想像し、村民の子孫たちの胸の高まりを思う。(水)