イタリアに住む友人が現地で乳がんの手術を受けた。どれほど不安で心細いか―と心配したが、イタリアの人たちの「決して放っておかない姿勢に救われている」という。彼女らに「そっとしておいてあげよう」とか「何か必要ならば言ってくるだろう」という発想はなく、手術当日の麻酔が半分効いている時から病室に来る、詩や美しい写真をスマホで送ってくる、ラザニアやお菓子を届けに来る―で「ふさぎ込む暇もない」という。
右乳房の全摘手術をした友人だが、同国では摘出と同時に乳房を再建することが標準治療に位置付けられ、形成外科医も治療チームの一員。再建の費用負担はなく、形成外科に通う必要もない。「見た目だけの問題ではなく、精神的にも重要」という考えからで、再建手術をする人が2割に満たない日本の治療環境が良くなるよう、多くの人にイタリアの現状を知ってほしいと友人は言う。
先月は乳がんのチャリティーイベントにピンクのTシャツを着て参加した。イタリアでは乳がん治療中の女性たちを「ドンナ・ローザ」、英語で「ピンク・レディー」と呼ぶそうだ。日本でも、ピンクリボンをシンボルに、検診と早期発見の呼び掛けや患者支援などの運動が広がっている。10月は乳がん月間。(吉)