体を痛めて車を手放し、いろいろなものが遠くなった。母の6回目の命日の墓参は、めいの車に乗せてもらって済ませた。風はやや強かったものの晴れて暖かく30分ほどの焼香は日光浴も兼ねた。
往路の車内での話題は幹線道路沿いの中規模スーパーの相次ぐ閉店だ。「新しい店ができたけど遠いみたい。歩く以外に移動手段のない人はどうすればいいのかな?」。買い物の悩みは減らない。
復路では偶然、厳しい現場を見た。80歳前後と思われる女性が幹線道路の歩道を歩いていた。買い物袋を持ってつらそうにゆっくり、とぼとぼと歩いていた。歩幅は測ったように靴の大きさの半分ほど。1歩前進するのに2~3秒はかかっているようだ。1回の買い物に、時間はどれくらいかかるのだろう。最近閉店したばかりのスーパーが見えた。代わりに使える店は、見つかったのだろうか。
知人は、行きつけのスーパーの駐車場で以前に見た光景を思い出すとうれしくなるそうだ。「よかったらどうぞ」と帰路の同乗を勧める、やや若い夫婦と、遠慮しながら、お礼を繰り返し乗り込む高齢者の、優しいやりとりだ。「そんな人間関係がいろいろな店や施設に少しずつでも広がれば、住み慣れた自宅で安心して暮らせる高齢者が増えるのに―」(水)