鍋や汁で食べるのがうまい、晩秋が旬の魚といえばトウベツカジカ(ケムシカジカ)。磯のマカジカ(トゲカジカ)と共に「なべ(鍋)こわし(壊し)」と呼ばれる。胆振太平洋エリアでは産卵のため晩秋の限られた期間に岸寄りする。岸壁や防波堤などで重量級のカジカ釣りが楽しめる。
10月下旬に取材に訪ねたのは室蘭港と周辺の漁港。この時期、トウベツカジカのポイントは苫小牧から噴火湾の各地にあり、40センチを超える良型を足元で狙えるから、カジカファンらがさおを出す。
伊達市の黄金漁港でソフトルアーを使って釣りをしていた室蘭市内の60代の男性は夕方の満潮前の”上げ”の時間帯に1時間で4匹をキャッチした。30センチ台の小型や産卵後とみられたものはリリースし、50センチの良型1匹だけをキープするという。大物は腹部がでっぷりと膨らみ、一見して抱卵の個体と分かる。男性は「トウベツは毎年この時期の楽しみ。卵はしょうゆ漬けにし、身と肝とあらはカジカ汁で食べたい」とうれしそうだった。
男性の釣り方はシンプルだ。アブラコ狙いで使う9フィートのルアーロッドと3000番台のスピニングリールの組み合わせ。リールにはPE1号のラインにナイロン4号をリーダーとしてつないだ。仕掛けは、根掛かりの心配のない黄金漁港ではジグヘッドリグ一択という。ジグヘッドは7グラムで、これに3~4インチのワームをセット。ワームはシャッドテール系とボリュームのあるクロー系を交互に替えて使っていた。色はシャッド系が青、クロー系はラメ入りの赤。男性は「きょうは活性が高い。どちらも反応が良い」との印象だ。
ソフトルアーでカジカを狙う場合は、ワームを魚にアピールし、かつ食わせの間を取ることが釣果につながる。キャストして仕掛けが着底したら、スローなずる引きや小刻みなバンピングでワームをアピールし、長めにステイする。これを繰り返し、足元までしっかりと丹念に探る。魚信がなければコースを変えて同じく誘う。
魚信は「コツ、コツ」「ククッ」と小さいことが多い。魚体のサイズ感と真逆で、投げ釣りだとさお尻が跳ね上がることもあるのにワームだと魚信は繊細。しかし魚信が小さくても、カジカならではの重量感がある上、水面直下では激しく暴れる。大きな口は上下にびっしり鋭い歯が並んでおり、無理に抜き上げればリーダーは傷が付いて簡単に切れる。たも網は必須だ。
フック(針)を外す際はカジカの口に手を入れてはいけない。カジカの顎の力はかなり強い。けが防止のため、釣り用のプライヤーなどを活用したい。