記憶
- 2020年8月11日
戦争の記憶が遠ざかるとき、/戦争がまた/私たちに近づく。/そうでなければ良い。 八月十五日。/眠っているのは私たち。/苦しみにさめているのは/あなたたち。/行かないで下さい 皆さん、どうかここに居て下さい。 石垣りん「弔詞―職場新聞に掲載された一〇五名の戦没者名簿に寄せて」の後段の
戦争の記憶が遠ざかるとき、/戦争がまた/私たちに近づく。/そうでなければ良い。 八月十五日。/眠っているのは私たち。/苦しみにさめているのは/あなたたち。/行かないで下さい 皆さん、どうかここに居て下さい。 石垣りん「弔詞―職場新聞に掲載された一〇五名の戦没者名簿に寄せて」の後段の
ハトの形をした銘菓、鳩サブレーで知られる豊島屋(神奈川県鎌倉市)は毎年、「鳩の日」の8月10日に記念グッズを売り出す。今年はペットボトル再生材のエコバッグをオンラインショップ限定で発売した。正直、エコバッグ持参の習慣はないがコンビニなどがレジ袋の無料配布をやめ、買い物時に困ることが多くなったためこ
小学校の高学年のころ家の解体現場で不思議な物を見た。居なくなった飼いネコのミイラだ。板張り壁の建物を地ぐいに乗せた隙間だらけの家だった。 ネコは干からびて、うっすらと毛の色が残るだけだった。灰色と白のまだら模様のネコの名前は、確かタロ。ネズミ取りが上手ではなく、歴代の飼いネコの中では、評価
水色の空に、絵筆でサッと描いたような白い雲が浮かぶ。8月に入り、札幌は一気に気温が上昇して暑くなった。大通公園でミニビアガーデンが始まり、チカホでは4万本の本道の花を展示するイベントも開催。コロナ禍で感染拡大を警戒しつつも、少しずつ「日常」が動き始めている。 日が落ちても気温があまり下がら
使い捨てマスク、消毒液に続いて第3の買い占め・転売騒動が起きている。大阪府の吉村洋文知事が4日昼の記者会見で発言した、ポビドンヨードが含まれたうがい薬のことだ。知り合いの薬局経営者に聞くと、知事会見から間もなく「うがい薬があれば譲って」と電話で問い合わせがあったそうだ。その薬剤師が今回の騒動を知っ
車を買い替えて1年弱。あちこちに感知器があり、走行中や駐車時に危険があれば、音や画像で警告してくれる。これは必要なのかと思う機能もある。 道路地図一冊で十分という考えだから、GPS(全地球測位システム)で現在地や目的地を表示する「カーナビ」を使うのは初めてだ。毎日の始動時、女性の声で、きょ
最近、新聞で時々目にする言葉に「ワーケーション」がある。7月29日の記者会見で菅義偉官房長官が、新型コロナウイルスの感染拡大で打撃を受けた観光業の早期回復を念頭に、「新しい旅行や働き方のスタイルとして普及に取り組んでいきたい」と政府の考え方を示し脚光を浴びた。 ワーケーションは「ワーク(労
船で何度か国内旅行をしている。客室を自室のようにゆったり使えるし、雄大な大海原や神秘的な星空の眺めを存分に楽しめるからだ。しかも船内イベントは盛りだくさん、寄港地では観光を手ぶらでできる。 ただ、今年はさすがに船を怖いと感じた。2月に米国のクルーズ会社が運航する豪華客船で、新型コロナウイル
新型コロナウイルスと人間の戦いの行方はワクチンと、治療薬開発の成否に懸かっていると言われる。進む開発作業に、世界中の注目が集まっている。 政府はきのう、アメリカの大手薬品メーカーと、6000万人分のワクチン供給で基本合意したと発表した。開発に成功すれば、来年6月までに供給する合意だ。
正午すぎに当日夕刊の試作紙面を見て記事や写真に誤りがないか確かめをする。写真説明で、指定した文字の削除箇所に間違いあり―。最近あった職場の「ひやりはっと」事例だ。 仕上げ目前の大事な最終確認になおも隙があったと反省した。 過日の朝に苫小牧港・西港で船がぬかりなく出航する様子を見た。
あの年から、私は7月が嫌いになりました―。4年前の7月26日、相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で入所者19人が殺害され、職員を含む26人が重軽傷を負った。19歳で犠牲になった「美帆さん」の母親が、報道機関に寄せた手記に書かれていた言葉だ。事件の翌年は7月のカレンダーを見ることができず、破っ
「日本語オノマトペ辞典」の編者、小野正弘さんが、新著「オノマトペ 擬音語・擬態語の世界」(角川ソフィア文庫)で、方言の中にある、個性的で温かな言葉たちを紹介している。 オノマトペは何かの音を言葉で表すゴーン、キーンなどの擬音語や、回転を「クルクル」のように状態を表す擬態語のこと。子ネコの足
勤務する白老支局の本棚を整理していたら、戦争をテーマにした絵本が出てきた。終戦1カ月前に起きた米軍の白老空襲を描いた作品で、作者は旧白老小の元教師だ。 1945年7月14日午前9時40分すぎ、海の方から飛んできた数機の艦載機が学校や周辺地域に機銃掃射を仕掛けた。幸い児童は登校しておらず、出
12日に白老町に開業した民族共生象徴空間(ウポポイ)。アイヌ文化の復興、発展の拠点となるナショナルセンターを旗印とし、施設内はアイヌ語が「第1言語」。解説パネルやサインなど、すべてアイヌ語から始まり、日本語や英語などが続く。表記を見るだけでも、学べることは多い。 例えば「自動販売機」は「イ
かなり以前のことになる。自宅近くのスーパーの従業員出入り口に止められたミニパトカーに、高齢の女性が警察官に促され、乗り込むところを見た。 普段着姿。動揺しているようには見えなかった。来店者の出入り口から十数メートルしか離れておらず、駐車場からは表情も見えた。何があったのかは分からない。当時
体育の日がスポーツの日となって、きょうは本来なら2020東京五輪の開会式当日だった。大会は来年に変更されたが、世界はまだ新型コロナウイルスの感染拡大を止められないでいる。4連休の日本も全国的に第2波の様相を呈する中で政府のキャンペーンが始まり、人々が国内を移動する。コロナとの共生の仕方はこれで正し
ふらりと宿屋を訪れた自称金持ちの男はただのおしゃべり好きの庶民だが、人の良い宿屋の主人は「千両箱を漬物石に使っている」といった男のほら話を真に受ける。見えを張り続ける男はなけなしの金で、主人が副業で扱う宝くじを買うはめになるが、思いがけず一等の千両が当たる。上方落語の「高津の富」は桂枝雀バージョン
大雨の日の取材で、冠水の被害が広がる住宅街の道路に普通乗用車で乗り入れたことがある。深さは20センチほどか。何とか脱出し終えてからゾッとした。 泥水だから水深が分からず、縁石も排水溝も見えなかった。止まれば動けなかったに違いない。もしエンジンが止まったら―。そんなことを考えながら数百メート
アジサイが咲いている。夏空が広がり気温も上がった、きのうの札幌。暑さの中、道行く人たちは大半がマスク姿。ススキノでクラスター(感染者集団)が発生するなど、道都も新型コロナウイルスとの長い闘いが続く。 コロナ禍で夜の会食が極端に減り、自宅の部屋で音楽を聴く機会が増えた。先日は世界で反響を呼ぶ
命のつながりとは何だろう。先日、直木賞を受賞した馳星周さんの著書「少年と犬」(文藝春秋刊)を読み、そう自分に問うた。生きる者同士の出会いと別れ。そこに息づくささやかな希望が描かれた作品に、図らずも涙腺が決壊した。短編で織り成す話の中心にあるのは、人の気持ちに寄り添った一匹の犬。かつて取材で訪れた被
正月、孫たちが帰省した騒乱の中で、夏の再会を思い描いていたものの、新型コロナウイルスが日本に上陸して思惑はすべて帳消しになってしまった。 あれから半年。今では世界中で1380万人以上が感染し、死者数が60万人に近づいている。リーダーが経済優先を掲げ、マスクを着けたり外したり揺れるアメリカが
「たら」「れば」の話は不快に思う人がいるかもしれない。それでもあえて持ち出すのは、最近の新型コロナウイルスの感染者の拡大が尋常でないと思うからだ。 16日の国内の新規感染者は622人。東京、大阪、埼玉は国の緊急事態宣言が解除された5月25日以降、最多。全国で600人を超えるのは、4月11日
新型コロナウイルス感染予防のための自粛で、やむなく抱え込んでいたうつうつ感。これを一気に発散してくれる朗報が、きのう突然飛び込んできた。苫小牧東高校出身の作家、馳星周さんの直木賞受賞だ。 1996年のデビュー作「不夜城」で初めて候補になって以来、7度目で受賞した。過去に馳さんと一緒に候補に
「ぜひ現地を見てほしい。○○が来てくれた―」。そんな地元の要望や評価もあるからなのだろう。大災害の発生時には、政治家らの視察が行われる。 いつも思い出すのは、以前に取材で見た豪雨被害を受けた自治体の忙しさだ。警察や消防が中心になる人的被害の対策がヤマを越せば次は道路や橋などの復旧の準備作業
75年前の1945年7月14、15両日に北海道空襲があった。翌月15日に関し、〈講堂に集合させられ、玉音放送を聴いた〉と記した人がいた。旧制苫小牧中学生徒だった辻幸雄さん。 10代で時代の激変に直面し、〈戦時軍国主義から平和主義へと百八十度の転換が行われ、先生方もわれわれ生徒も大いに戸惑っ
白老町の民族共生象徴空間(ウポポイ)が開業した。道内唯一の国立博物館「国立アイヌ民族博物館」を中核施設に、アイヌの歴史や文化を展示や体験プログラムなど多様な手段で伝える。 11日の開業記念式典には、国から菅義偉官房長官、萩生田光一文部科学相、青木一彦副国土交通相が出席した。この式典をめぐっ
線状降水帯という魔物が、九州の南部や北部、本州の各地を襲い続け1週間がたった。天気予報では週が明けてもまだ、激しい雨が続きそうだという。 個人の記憶だけでなく、記録を何度でも読み、伝えなければ災害の備えにはならない。苫小牧市が1998年に発行した「市制五〇周年記念苫小牧のあゆみ」でこの町の
あの子が生きていれば、今ごろどんな女性になっていただろう。もう20年以上たつけれど、女子中学生が列車に飛び込んだ熱い夏の日をふと思い出す。 学校でいじめを受けていた。耐えきれず教室を飛び出した。泣きながら線路の方へ歩く姿を見た人もいた。仲間外れ、誹謗(ひぼう)中傷と、中学に入っても執拗(し
九州、四国、近畿、東海と記録的な大雨が続いている。氾濫する河川や冠水した道路、広範囲な浸水。各地で尊い命を奪った惨状、甚大な被害に息をのむ。集中豪雨をもたらしたのは線状降水帯。広域的な大規模水害が頻発するようになった近年、よく耳にするようになった。自然の脅威はこれまでの常識をいとも簡単に打ち破る。
久しぶりに手をひいて 親子で歩ける嬉しさに―。島倉千代子さんのCDを元気だった母と一緒に聞いたことをよく思い出す。「東京だョおっ母さん」は1957年の曲だというから、母が30代の頃に聞いていた歌だ。 私事ながら母は認知症。亡くなるまでの数年を専門の施設で過ごした。指の先で拍子を取り、小さな