人の世
- 2020年12月31日
コラム担当の一人として振り返れば、今年は「人の世」を考えることが多かった。本道は1月に新型コロナウイルスの最初の感染者が発表され、2月以降は平時の感覚はなくなった。コロナによってさまざまな問題が表面化し、取り上げる視点をあれこれ考えた。 「人の世」というと「智に働けば…」「住
コラム担当の一人として振り返れば、今年は「人の世」を考えることが多かった。本道は1月に新型コロナウイルスの最初の感染者が発表され、2月以降は平時の感覚はなくなった。コロナによってさまざまな問題が表面化し、取り上げる視点をあれこれ考えた。 「人の世」というと「智に働けば…」「住
あすは大みそか。この時期になると、いつも取材で訪れていた知的障害者施設に泊まり込み、年越しのお手伝いをしたことを思い出す。 「福祉の現場では―」と、すぐにいきり立つ若い記者はトランプゲームの人数合わせ以外、きっと、何の役にも立たなかったに違いない。少し肩の力を抜きなさいと、親しくなった職員
例年なら忘年会シーズン真っ盛りだが、新型コロナウイルス流行でまちにそんな雰囲気はない。感染拡大防止へ大人数での会食や飲み会の自粛が呼び掛けられる中、「5人以上で会食していた」と政治家らを批判するニュースが繰り返し報じられている。緊張感の無さに怒りの声が噴出するのは当然として、なぜ5人以上が駄目か。
〈雨は夜更け過ぎに 雪へと変わるだろう…〉。札幌の24日は、こんな山下達郎さんの名曲「クリスマス・イブ」の詞のような天候になった。新型コロナウイルス対策の発表で、夜になった鈴木直道知事の記者会見の取材を終え、帰宅途中に札幌駅周辺の地下街を歩くと、複数のケーキショップ前は長蛇の列。スス
広辞苑によると、道義とは「人の行うべき正しい道」のこと。きのう、衆参両院の議院運営委員会テレビ中継を見て安倍晋三前首相の答弁を聞き、改めて調べてみた。 「桜を見る会」の夕食会をめぐる国会答弁に事実と違う内容があったとして前首相が求めて開かれた、異例の質疑の場。前日の記者会見では「国民と国会
13日に道央自動車道の苫小牧中央インターチェンジ(IC)が開通した。定期的に札幌―苫小牧間を行き来している記者にとっては、心待ちにしていた新しいアクセス拠点。それまで利用していた苫小牧東ICと比べると、市内中心部までの移動時間が20分以上も短縮され、利便性が格段に良くなった。日没後に札幌へ向かうと
苫小牧市街地は積雪ゼロで情緒あふれるホワイトクリスマスとはいかないようだ。子供たちへのプレゼントを持つサンタクロースを乗せ、そりを引くトナカイさんが良い子の家々を無事に回れるか心配だ。 自民党5派閥の後ろ盾を得て鳴り物入りで誕生した菅義偉政権だが、わずか3カ月で支持率が急落している。政権発
幼稚園年長さんの記憶力は侮れない。「正月は行けるからね」。夏に帰省断念を説得したときの一言を根拠に、ぐずる孫がいるらしい。 わが家のお嫁さんの反省。苫小牧のおばあちゃんとおじいちゃんは、新型コロナウイルスに感染すると重症になる可能性があるからね―と言っても、幼児に理解は難しい。正月にはおば
この師走はクリスマスのディナーショーやコンサートがほとんどなかった。言うまでもなく感染症が理由だが、そもそも今年は舞台やホールを使う文化イベントの大半が延期や中止になった。たとえ開かれても多数の人が「不要不急の外出」と会場入りを自粛し、それを見越して中止されたものもあるだろう。 文化イベン
今月初旬、所用で行った苫小牧の白鳥王子アイスアリーナから外に出て、隣地の中央公園に目をやるとカラスが十数羽飛んでいた。2羽の行動にくぎ付けになった。 木の実をくわえながら羽ばたいて垂直上昇し、それを宙に放り出した途端に急降下し、くわえ直す。目の錯覚かと思い、見続けると2羽だけが同じ動きを再
真摯(しんし)、誠実である人は、この言葉で自分を説明する必要がない。高慢な人がそれを隠したいときに、この言葉を使うらしい。 前首相の言動から学んだ。芸能人を含む8人の会食に参加していた菅義偉首相が先日、「国民の誤解を招くという意味では真摯に反省している」と謝罪した。会食は新型コロナウイルス
就職して初めての勤務地は横浜だった。それまで二十数年間、札幌でしか暮らしたことがなかったので、夏の暑さは想像を超えていた。部屋にエアコンはなく、夜中に水風呂に漬かってしのいだこともあった。冬は冬で底冷えがして、室内はどこに行っても薄ら寒い。乾いた街を歩きながら、切ないほど「雪が見たい」と思った。年
本紙白老支局の近くにある食肉店が先日、やたらとにぎわっていた。いてつく寒さの中でも店前で長い列をつくる客の目当ては、お買い得の白老牛肉や加工品。安いうちにたくさん買い込み、贈ったり、家族が集まる年末年始の食卓を飾ったりするのだろうか。白老町民といえ、普段はなかなか口にできない高級肉。セールにつられ
真冬並みの寒さ。7文字を書くのは簡単だが、寒い。朝、1、2の3でドアを開けて新聞を取る。その十数秒間の何と長くつらいこと。 先日の新聞に、国際自然保護連合の絶滅危惧種最新版が紹介されていた。植物では北海道の春を代表するオオバナノエンレイソウの名があって驚いた。 北海道新聞社「北海道
新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。苫小牧市内に限っても、保育園でクラスター(感染者集団)が発生したり、市幹部の感染判明に伴って市議会が休会したり。市役所第2庁舎はきょうまで、市民の立ち入りが制限されるなど、緊張感のある局面が続いている。 過日の紙面で伝えたが、市は職員の感染判明を受
新型コロナウイルスの感染拡大は第3波のただ中。春の第1波が収まった後、専門家たちが今冬の爆発的な感染拡大に警鐘を鳴らし、個人の意識と行動の変容、働き方、医療や保健衛生の態勢づくりを強く訴えていたのを思いだす。 自衛と利他のためのマスク着用や手指消毒、3密(密閉、密集、密接)の回避などは日常
パーソナルコンピューター、通称パソコンの機能のごく一部を利用して文章を書いている。好奇心が弱いのか他の機能に手が伸びない。 電気機器の説明書を読んで、理解する根気と能力を失うのが老化の始まりだという。ワードプロセッサー(日本語文書作成機)を使い始めたのは1980年代の前半だから遅くはなかっ
新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。道内では12月に入ってすでに98人の感染者が死亡。1カ月としては最多だった11月の84人を上回っている。道は集中対策期間を1カ月余り延長。25日までの2週間は札幌と旭川で感染のリスクを回避できない場合、不要不急の外出を自粛するよう求めている。感染リスクを回
冬の夕日は一瞬のうちに沈むせいか、どこか哀愁が漂う。先日、札幌で見た冬の落陽は美しかった。今年も残すところ3週間。少年時代に比べ時間が過ぎる速度がとても速く感じられる。師走が行く。 一昨日はビートルズのメンバー、ジョン・レノンの命日だった。彼が米ニューヨークで狂信的ファンの凶弾に倒れたのが
「若いころの苦労は買ってでもしなさい」。昔は、そんな説教の好きな年長者が身内や職場に何人かいたものだ。今はどうなのだろう。 「空腹の時代」とでもいうべき時間が過去にある。高度成長期と重なっていて何とか生き延びた。かびと日焼けの臭いの染み込んだ古本を読み、古い映画を見て、怠惰の見本のように過
日本赤十字社によると、新型コロナウイルスには感染症として三つの顔がある。一つは「病気そのもの」で、残る二つは「不安」、そして不安からくる「嫌悪・偏見・差別」。この3要素がウイルスのさらなる拡散を招くという。 どのような流れなのか。ホームページでは〈未知のウイルスに対する不安〉↓〈
「スタッフはとても疲れている。看護師たちは真っ昼間から泣いている」。AFPが6日、米国テキサス州ヒューストンにある医療機関の医師の言葉を伝えている。新型コロナウイルス感染患者の受け入れが止まらず、「看護師たちは精神的に参っている」という。その医師も連続260日勤務しているのだそうだ。 コロ
アイヌ語で「小さな川」を意味する名前の川の左岸で育った。主要な道路は右岸にあり、石炭を運ぶトラックの列を対岸から見ていた。 小学校の入学前、左岸の細い砂利道に自動車が来ることは少なく、たまにエンジンの音が聞こえると、子どもたちは遊びを中断して道路に駆け寄ったものだ。通り過ぎた後、走って追い
新型コロナウイルスの流行で雇用が悪化し、失業者が増えている。働くハードルが高くなっているこんな時、若い世代はどんな仕事を志望するのだろう。 職業選択に役立つ情報を青少年に紹介するインターネットサイト「13歳のハローワーク」では毎月、中高校生の人気職業ランキングを発表している。これによると、
東京五輪の1年延期をはじめ新型コロナウイルス禍の時勢に数えると切りがない異変が相次いだ今年のスポーツ界。選手は当然、ファンにも驚天動地の展開が連続した。 地域紙の本紙が取材対象としているアマチュア野球にとっても、当地チームがこぞって目指す国内栄冠を懸けた各大会中止が春から続出し、辛抱を余儀
ただ手を合わせているだけなのだが、この2年ほど、毎日朝に小さな仏壇に灯明をあげ、線香を供えて合掌するのが習慣になっている。 分家育ち。家に仏壇はなく、経どころか線香の火のつけ方や消し方、立てるか寝かせるか、それは一本のままか折るか、鈴は何度打つかなど、まったく知らず、いまだ我流のまま。位牌
2020年も残り1カ月。新型コロナウイルス一色の一年だった。いや正確に言えば、年が明けたばかりの頃は、その存在すら知らなかった。本紙が新型コロナウイルスを初めて報じたのは1月17日、中国武漢市の死者の記事だ。 すべての人がマスクを着け、人との距離を取っている今、新聞をめくり、人でごった返す
アイヌ文化が根付く白老町に、伝染病をもたらす悪い神をウサギが勇敢に追い払い、人間の村を守ったという神謡が残されている。 海の向こうから村へ近づく青い霧は病気の悪い神。それを丘から見た1匹のウサギが大急ぎで浜へ駆け下り、おしっこを引っ掛けて退散させた―。そんな物語だが、ウサギが頑張ったのか、
どうして、こんなことになったのだろう。新型コロナウイルス感染者が世界で6000万人を超えた。死者も増え続け140万人以上。 日本での感染確認も14万人、死者数は2000人を超えている。札幌は今や東京、大阪と並ぶ危険地帯。毎日の新聞やテレビで数字の増加を見てため息が出る。「甘く見ないで」。医
道行く人に話を聞く街頭取材。新聞記者にとって基本的な仕事だが、新型コロナウイルス感染拡大に伴って、やりづらさを感じる機会が増えている。感染予防で他の人との接触を極力避けようとする人が増えたことはもちろん、マスク姿でお互いの表情がとかく伝わりづらいことが大きい。 街頭取材では当然ながら、「答