民報歌壇 原始林苫小牧
- 2025年4月1日
ちらちらと雪降る日なり足元に春の陽射しで溶けだす雪よ中井るみ子テレビより春の香りが届きそう桜満開なの花咲きて木村百合子大荒れと言はれし予報も我が町は雪も少なく風も穏やか宮崎 靜恵杖をつく我を支へて息子(こ)は歩く何軒も行く病院めぐり湯浅 悦子癌で逝く共に励みし農友の冥福祈る弥生の夕べ山田 志
ちらちらと雪降る日なり足元に春の陽射しで溶けだす雪よ中井るみ子テレビより春の香りが届きそう桜満開なの花咲きて木村百合子大荒れと言はれし予報も我が町は雪も少なく風も穏やか宮崎 靜恵杖をつく我を支へて息子(こ)は歩く何軒も行く病院めぐり湯浅 悦子癌で逝く共に励みし農友の冥福祈る弥生の夕べ山田 志
ユヴァル・ノア・ハラリ氏の新刊「NEXUS 情報の人類史」(上・下)「AIの進化は急激なのに本の執筆には時間がかかる。新刊では2010年代までの出来事をつづった」と話すユヴァル・ノア・ハラリ氏=東京都港区の慶応大三田キャンパス 人工知能(AI)の台頭で世界はどう変わるか―。6年ぶりの新刊「NEXUS
高校古文の学習で、まず、「宇治拾遺物語」の「児(ちご)の空寝(そらね)」を学んだ人は多いに違いない。説話は短く完結しているので、入門期の教材にふさわしい。「今昔物語集」を素材に芥川龍之介が「羅生門」を書いたと学んだ人もいるだろう。だが、今、説話の研究は大きく変わりつつある。国際化と情報化の中で、日
子供の頃、世界をどう見ていたのかは、薄い靄(もや)がかかったかのように茫洋(ぼうよう)としていて―評者を含め、いつの間にか大人になってしまった者らは、そうした違和感をどこかしら抱かずにはいられないのだ。 本書には9作の短編小説が収められているが、この種のもどかしさに、確かな手触りをもって応答して
冬川のゆるき流れに浮くごとく鴨十六羽群れ守りいる桐渓 淑子それぞれに四方山話を持ち寄りて刻を忘れて弾む女子会神成 靖子ガンダムに聖闘士星矢(セイントセイヤ)・キンケシと子ら少年の遺物あらわる伊藤 妙子祭りにて出合いし友の児(こ)にふれて頬柔らかに愛しい笑顔岡田 京子能登復興祈る我にも儘ならぬ
NHKの大河ドラマ「べらぼう」にはまっている、という声をよく聞く。「べらぼう」は吉原で生まれ育った「蔦重(つたじゅう)」こと蔦屋重三郎が出版の世界で活躍し、江戸のメディア王へと成り上がっていくその生涯を描くものである。 本書の著者は「べらぼう」の近世美術史の考証を担当。東京国立博物館の学芸企画部
地下鉄サリン事件の被害者と、救命や後遺症ケアに携わった人を中心に、オウム真理教に関わった32人の証言をつづる。猛毒ガスが忍び寄る恐怖と被害の実相が伝わる。弁護士でエッセイストの著者が「なぜ事件が起きたか」を問い直し、若者をオウムに引き付けた「神秘体験」を考察。体験は偽りという科学的メッセージが必要
春暁や又寝の夢の遠退きて岡澤 草司剪定の鋏はづませ後継者遠藤 孝明野球部の気合一声山笑ふ竹内 直治叶ふ夢叶はぬ夢や豆を撒く須藤 大硯蕗味噌を作れば叔母に会へさうな平尾 芙美梅ひらく作法知らずの茶の湯かな中野佳代子野球帽の似合ふ少女や風光る名取 光恵異邦人溢るる駅や春隣中村千恵子冬
昨年、8000㍍峰全14座登頂を成し遂げた写真家で登山家の石川直樹さん。3年前には世界最難関とされる標高8611㍍の「K2」を制覇、その様子を切り取った写真集を今年刊行した。 「町の日常や村の文化、ネパールの少数民族シェルパの暮らしなど、全てを撮っていくのが自分のスタイル」。石川さんが用いるのは
天皇の来し方行く末を歯に衣(きぬ)着せず語り合う。神代の頃から現代まで、ミカドの地位や時の為政者にとっての位置付け、民衆の目線を丁寧に腑(ふ)分けする。悠久の皇室の歴史に比して「万世一系」は明治期に打ち立てられた思想にすぎないことを改めて指摘。近年の女性・女系天皇論に肩肘張らなくても、と思わせてく
「手塚治虫『火の鳥』展」のエントランス=東京・六本木の東京シティビュー手塚治虫氏 「漫画の神様」と呼ばれる手塚治虫(1928~89年)が35年をかけて取り組んだ傑作長編「火の鳥」。その魅力に迫る初の大規模展「手塚治虫『火の鳥』展」が、東京・六本木の東京シティビューで開かれている。5月25日まで。
本書は日本におけるアメリカの社会的・文化的影響を研究してきた社会学者が、米ハーバード大学で「日本の中のアメリカ」を論じた授業の講義録である。アメリカ人向けの授業とはいえ、われわれにとっても「目からうろこ」の卓見に満ちている。 その鍵は「アメリカの中の日本」という反転した視点だ。日本がアメリカ的な
三陸の港町・仙河海市で暮らす人々の「3・11」前後の暮らしを丹念に描いた連作短編集。著者は、モデルである宮城県気仙沼市で数年間、教員をしていた経験がある。笑いあり涙あり、静かに、当たり前に続いてきたそれぞれの人生を津波がのみ込んだ。「あの日」を直接描かないことで、失われたもの大きさが胸に迫ってくる
人生って何だろう。来し方を振り返り、ふと思ってしまう夜がある。そんな年頃の読者に「刺さる」ミステリーだ。 浜辺美佐は夫としゅうとめと暮らす家を出た。かつて親代わりを務めてくれた叔母、弥生の様子がおかしいと行政から連絡があり、世話をするという理由ができたからだ。 叔母を訪ねるのは結婚以来二十数年
南アフリカの哲学者デイヴィッド・ベネター氏の「生まれてこないほうが良かった」を邦訳した著者が、氏の打ち出す反出生主義を紹介する。「子どもは作るべきでない」「人類は絶滅に向かった方がいい」という思想だ。強い抵抗を想定しながら、極論を和らげたアプローチを提示し、より多くの人の注意を引く入門書に仕立てて
最もよく使われる約1000の季語を抽出し、それらに約3700の言い換え(傍題)や関連語を添えた。14年ぶりの改版で、特に例句を一新。例えば「花」の傍題は「花影」など8語、関連語は「残花」、例句は金子兜太「人体冷えて東北白い花盛り」など7句。手軽ながら、総索引など付録も充実する。(角川ソフィア文庫
ハスカップ集(2月号)からさまざまな人生を聴く深夜便坂本美地子 ラジオ深夜便は年齢を問わず聴いているようですが、特に高齢者に人気があるようです。身近な生の思いが伝えられて、共感したり慰められたり励まされたり。眠れない夜などに枕元で優しく寄り添ってくれるのが、長年続いているラジオならではの良さな
もう春か今年の干支が首を上げ高野ついこ物価高節酒したいが少し無理西内 一幸母偲ぶ背中にもたれ居眠りを箱崎 倫子トランプがガザの市民をもてあそぶ佐々木いさお万札のつもりで千円釣りを待ち中津 遊水暖冬とつかの間安堵灯油代坂本 富子突然の老々介護先見えず酒井 藤男夢解く幸せ時間蝶結び横関
原発稼働の是非を巡り、揺れる司法判断。その背後には、良心と組織統制のはざまで葛藤する裁判官の素顔も見え隠れする。最高裁による人事支配の構図と、その原点にある「判事補再任拒否事件」の影響などを掘り下げ、司法の限界を浮き彫りにする。社会派ジャーナリストが100人超に取材して内実に鋭く迫ったノンフィクシ
読み進めながら、ここまで自分の視点が変化することを実感できる本と出合うのは初めてである。 本書は、アジア諸国における恋愛文学と言葉遊びの中に浸透する仏教の教えを掘り起こすという斬新な切り口によって、これまでの常識とは異なる仏教の一面を明らかにしている。 各章でインド、中国、韓国、日本、ベトナム
心理学者が描画テストに使った絵、たわいないブログに投稿された絵、保育園児が描いた絵、殺人事件の現場に残された絵…。異なる年代に描かれたさまざまな絵を通して、一見無関係に思える数々の出来事がつながり、ある恐ろしい事件の存在が浮かび上がるミステリー。覆面作家のベストセラーで、30カ国・地域での翻訳も決
サグラダファミリアがある国際都市バルセロナに魅了され、定年後に移住した元新聞記者の10年にわたる「2拠点生活顚末(てんまつ)記」である。大好物の日本製とは似て非なる味や食感の現地の豆腐に我慢できず、「自分で作ろう」と豆腐屋開業を思いつく。 人生下り坂からの大転換を決めたのは伊能忠敬の「一身二生」
ハンドベル「さくらさくら」響かせてサロン仲間と春を呼び込む桐渓 淑子筋力の弱りし吾の手を案じ便利グッズを買いきし嫁は神成 靖子ふた月を紅色あせずカランコエ語らうごとく冬陽と傾斜伊藤 妙子幼き日みなと唄いし童謡は久に聴いても忘れずなつかし岡田 京子兄の名で呼ばれていてもそのままで祖父とこの世
「軽はずみな発言をせず、対立や分断をあおらない」と語るジェーン・スーさん=東京都千代田区 世の女性たちの相談事にさっそうと応えてきたコラムニストのジェーン・スーさん。新刊エッセー「へこたれてなんかいられない」では、50歳を迎えて感じる体の変化などを赤裸々につづり、「ご機嫌に生きていく」ためのアイデア
家族ミステリーの傑作短編6作を収めたアンソロジー。愛人との間の子どもを捨てる松本清張の「鬼畜」や、一家心中の謎がさまざまな視点で語られる宮部みゆきの「不文律」など名品が並ぶが、白眉は小池真理子の「花ざかりの家」。若い妻を自死で失った男が、15年後にその不倫相手の家に招かれる。美しくも恐ろしい結末が
理想と現実が違うことは、多くの人が身をもって知っているはずだが、それでも未来に向けるまなざしには、願望や根拠のない臆測が入りがちだ。そして人間は、しばしば客観的な情報分析の結果を理性的に論じる者より、自信ありげな断定口調で熱弁を振るう政治家を信頼してしまう。 現実の社会的、経済的なプロジェクトに
東北のショッピングモールで保護された男児を巡る人間模様を描いた「熊はどこにいるの」。社会から疎外された女性たちの物語は、切実で痛々しくも、どこか幻想的な雰囲気をまとう。そこには、4年前に盛岡市へ移住した木村紅美さん自身の経験が投影されている。 50代のリツとアイは、東北の人里離れた山村で息を潜め
雪深し一歩一歩をふみしめて厳しき季節に身を守り行く中井るみ子二年ぶりに逢えた大鷲大樹に番でとまる風格まして木村百合子もくもくと煙を上げる発電所青空高く吸ひ込まれゆく宮崎 靜恵週三回デイサービスに通ふ我脳トレゲームで楽しく過ごす湯浅 悦子家前で転びて大きな瘤つくる二度と御免のたん瘤なるよ矢部
貧富の格差や排外主義、差別、性暴力から武力紛争まで、人権が脅かされる世界中の多くの問題にビジネスが加担している。国連人権理事会が「ビジネスと人権に関する指導原則」を採択してから14年。企業の責任が厳しく問われるようになった世界の潮流の変化を紹介するとともに、対応が遅れる日本の現状を厳しく問う。(
長崎県対馬市。約1万5000世帯、人口3万人強が住む島の「JA対馬」で2019年、巨額の横領事件が発覚した。 かねてよりこの事件への関与がうわさされていた正職員、西山義治(当時44)の運転する車が海中へ転落し、西山は溺死した。自殺と断定されたわけではないが、彼の死後、共済金の不正受給の全貌が判明