• 出版不況    SNSに活路/下/若者に届く本の紹介動画/「コスパ」「タイパ」に応える
    出版不況    SNSに活路/下/若者に届く本の紹介動画/「コスパ」「タイパ」に応える

       三宅香帆さんのユーチューブチャンネル。読書術などの投稿が人気 活字離れが叫ばれるが、書籍の紹介動画をきっかけに読書に興味を持つ若者もいる。なるほど、本を読む楽しさを伝えるユーチューバーや若手書評家らの熱意や創意工夫には目を見張るものがある。 「小説紹介クリエイター」のけんごさんは、本の粗筋や魅力に

    • 2025年2月11日
  • 「怪物たちの食卓」/赤坂憲雄著/喰い、喰われる存在
    「怪物たちの食卓」/赤坂憲雄著/喰い、喰われる存在

       「食べちゃいたいほどかわいい」という愛と呪縛のささやきは、もっぱら男から女に向けられるものらしい。一方で、女から男へ向けられる愛と怨念のささやきでもある―と以前「性食考」を書いたこともある赤坂憲雄は始める。とすると、男が主、能動で非対称というのだろうか。 食べるとはどのような行為か。飲み込む。吸

    • 2025年2月11日
  • 「京都占領」/秋尾沙戸子著/空間と歴史の絡み
    「京都占領」/秋尾沙戸子著/空間と歴史の絡み

       戦後80年になる現在、「占領時代」というのは忘れられたテーマだろう。日本全土が連合国軍の占領下におかれ、部隊が配置されていた。その過程で多くの公文書が作成され、日米の文書館を探ればその実態が分かる。各地で今も続けられている占領期の研究の成果が本書である。 京都の占領について最初の究明を行ったのは

    • 2025年2月11日
  • 「父のビスコ」/平松洋子著
    「父のビスコ」/平松洋子著

       父が病床で最後に欲し、うれしそうにぼりぼりとかじった昭和のビスコの味。平成の末に故郷の岡山を襲った豪雨の衝撃と、かつて聞いた明治生まれの祖父母の戦争の話が、自然とつながっていく感覚。国内外の食文化を扱ったエッセーで定評のある著者が、岡山・倉敷の風土を軸に3世代の記憶をたどる自伝的随筆集だ。読売文学

    • 2025年2月11日
  • 「軽いめまい」/金井美恵子著
    「軽いめまい」/金井美恵子著

       舞台は1990年代の東京・世田谷。分譲マンションで暮らす専業主婦の夏実は、蛇口から流れる水を見詰めるとめまいを覚える。幼い息子2人は健やかで、夫との関係も良好。豊かで満ち足りた生活で揺らぐ自意識を、乾いた筆致で捉える。単行本刊行は97年で、2023年に英訳され欧米で評判を呼んだ。(講談社文芸文庫

    • 2025年2月11日
  • 民報俳壇
    民報俳壇

       凍鶴となり湿原に生きにけり桂 せい久北斎の冬荒波の絵のごとく森  美子初旅や濃い目に引いているルージュ千   香今日の空春待つ心沸ひてきし坂田 敦子百歳の声をはずませ初電話長谷川淑子初明り大海原を染めてをり ■(吉の士が土) 度 厚彦悴める荷の手交互にポケットへ髙橋紀美子下萌えの

    • 2025年2月11日
  • 「降りていこう」/ジェスミン・ウォード著石川由美子訳/逃亡奴隷の少女の視点
    「降りていこう」/ジェスミン・ウォード著石川由美子訳/逃亡奴隷の少女の視点

       アメリカ合衆国は1776年に独立を果たしたが、南部には綿花や米やサトウキビなどの大農園があり、黒人奴隷を大勢使って収益を上げていた。 この小説は、そうした時代に数々の辛酸をなめる奴隷少女が主人公だ。愛する母と離ればなれになり、悪天候の中、遠い奴隷市場へ徒歩による移動を強いられ、行き着いた先の大農

    • 2025年2月4日
  • 「トイレと鉄道」/鼠入昌史著
    「トイレと鉄道」/鼠入昌史著

       都市近郊路線を除けば必ずある列車のトイレ。かつて垂れ流しだったことを覚えている人もいるだろう。個室が快適な空間になったのはごく最近のことだ。洗浄・処理の技術開発などの裏事情を含め、限られた空間に秘められた鉄道トイレ史を詳細にたどる。清掃現場の苦労には頭が下がる。心して使いたい。(交通新聞社新書・

    • 2025年2月4日
  • 民報歌壇
    民報歌壇

       年末に行事重なり賑々しプレゼントあり微笑み交す片岡 トキ春らしく陽ざし明かるい今日の午后差しくる光心嬉しく小亀 淑子おおみそかカラオケ大会開かれし心のこして外出したり菅野 和子寒い朝車の窓に雪さらり結晶の図柄レースのように中井るみ子孫帰りあっと言う間に日が過ぎて七草がゆの具材そろえる木村百合

    • 2025年2月4日
  • 出版不況    SNSに活路/上/読者と作家をつなぐ新ツール/「note」が広げる可能性
    出版不況    SNSに活路/上/読者と作家をつなぐ新ツール/「note」が広げる可能性

       「note」のパソコン画面。さまざまなジャンルの記事が投稿される SNSは新刊書の告知や宣伝のほか、作家と読者の交流の場としても活用され、出版界の中で存在感を高めている。とりわけ投稿プラットフォームの「note」は、コロナ禍を境に出版社や作家のアカウント登録数を伸ばし、読書ファンの間で大きな注目を集

    • 2025年2月4日
  • 「擬人化する人間        /  脱人間主義的文学プログラム」/藤井義允著/データ化されたモノとして
    「擬人化する人間        /  脱人間主義的文学プログラム」/藤井義允著/データ化されたモノとして

       衰退したはずの文芸評論が最近復活しつつある。倉本さおりや水上文など、文壇的な権威と距離を置く女性評論家の活躍が目に付くが、現代文学を材料に大きな主題を世に問う本書が出現したことに、ロートル文芸評論家の私はワクワクしてしまう。書名を見ただけで、著者の意気込みが伝わってくるが、「擬人化する人間」「脱人

    • 2025年2月4日
  • 「皮膚のデザイン」/廣川玉枝著/長く愛される理由は?
    「皮膚のデザイン」/廣川玉枝著/長く愛される理由は?

       デザインに関する書籍を手に取るとき、人はどのような期待を抱くだろうか。美しいデザインそのものを見たい気持ちと同じくらい、その背後に潜む物語や思想への興味も大きいはずだ。本書はそんな好奇心を満たすための一冊である。 著者、廣川玉枝はイッセイミヤケでニットデザイナーとしてキャリアを開始。2006年に

    • 2025年2月4日
  • 「工藤會事件」/村山治著
    「工藤會事件」/村山治著

       北九州市を根城に、市民殺傷や発砲を繰り返して治安を揺るがせた全国唯一の特定危険指定暴力団、工藤會。その首領らを逮捕した検察・警察の頂上作戦の舞台裏を関係者の証言に基づいて描く。指揮命令系統の解明という暴力団捜査の「壁」に苦闘する過程は「もう一つの工藤會事件」と言われる「餃子の王将事件」を考える上で

    • 2025年2月4日
  • 民報俳壇
    民報俳壇

       初詣オータニ君を今年また沼田 泥舟てのひらに母のお手玉お元日大坂 清子四時(しじ)に咲く花のあふるる初暦名取 光恵父母の歳はるかに越ゆや年新た櫻井 伸良新婚の部屋の真白き初暦山田  凡転ばぬやうにそろりそろりと事始小松冨佐子新海苔や優しく和紙の帯ほどく坂口 悦子椅子に児の片手袋やイー

    • 2025年2月4日