• 「命の交差点」/秋谷りんこ著
    「命の交差点」/秋谷りんこ著

       がん病棟で働く看護師の卯月咲笑は、患者の思い残したことが「見える」特別な能力を持つ。患者の傍らに一人息子の幻影が見えたり、透き通った美しい空が見えたり…。寄り添いながら心のこもったケアをする咲笑。とりとめのない会話の中から、生きるヒントが見つかる。命の尊さと希望を描いた感動のシリーズ第3弾。(文

    • 2025年5月20日
  • 「天路の旅人」(上・下)/沢木耕太郎著
    「天路の旅人」(上・下)/沢木耕太郎著

       戦時中、日本の密偵として敵地の中国大陸奥深くに潜入した西川一三の壮大な旅を描くノンフィクション。チベット仏教の巡礼僧に成り済まし、敗戦後も歩みを止めず、ヒマラヤを越えてインドに向かう。足かけ8年に及んだ軌跡をたどり、未知の世界への探究心に突き動かされた生きざまに迫る。(新潮文庫・上737円、下

    • 2025年5月20日
  • 「マイナス×マイナスはなぜプラスになるのか」/鈴木貫太郎著
    「マイナス×マイナスはなぜプラスになるのか」/鈴木貫太郎著

       マイナス×マイナスはプラス、三角すいの体積は同じ底面積の三角柱の3分の1、分数の割り算は引っ繰り返して掛ける…。中高生時代に丸暗記した数学の公式や定理。でも、なぜそうなるのか。論理構成を理解する数学の本当の面白さを学び直す。実生活での直感と一致しない確率の話も、読者の数学的思考が試されて興味を引く

    • 2025年5月20日
  • 民報歌壇 樹の会/ヌプリ短歌会
    民報歌壇 樹の会/ヌプリ短歌会

       ヨイシヨせいの一二三 声と共に力湧きいる今日の始まり豊島 幸子散歩する君の尻尾に桜吹雪「もう一度会いたい」二度目の春に塩田 芳子樽前の尾根はだれ雪春来たと心わくわく深呼吸する藤田香代子お気に入り三菱アイの納車待ち新社会人は中学(校)へ赴任金内 花枝今ならば母の気持も分かるはず知ろうともせずに

    • 2025年5月20日
  • 民報俳壇 アカシヤ俳句会/葦牙俳句会
    民報俳壇 アカシヤ俳句会/葦牙俳句会

       空瓶の色とりどりや薄暑光岡澤 草司福寿草妻を見舞ひに週三度須藤 大硯久に会ふ友の一言春の風平尾 芙美ほくほくと微笑みたるや春の土中野佳代子予報士の声の昂ぶり初桜名取 光恵三代の丑年生まれ風光る中村千恵子海までの半里の川や水芭蕉竹内美枝子逃水や待ち人の影さがしをり鹿糠寿恵女花かん

    • 2025年5月20日
  • 「『陰翳礼讃』と   /    日本的なもの」/中村ともえ著/建築に注いだ作家の視点
    「『陰翳礼讃』と   /    日本的なもの」/中村ともえ著/建築に注いだ作家の視点

       これは極めて知的で刺激的な書物である。優れた日本の文化論として、海外でも広く知られる谷崎潤一郎の随筆「陰翳礼讃」を入り口として、さまざまな文学作品とその中で描かれる建築物、さらに桂離宮や伊勢神宮といった実際の建築物がどのように論じられてきたのかを照らし合わせながら戦前の日本と日本人の来し方を掘り下

    • 2025年5月13日
  • 「悪人列伝 大河ドラマ篇」/海音寺潮五郎著
    「悪人列伝 大河ドラマ篇」/海音寺潮五郎著

       直木賞作家の著者が、北条政子や日野富子、徳川綱吉、田沼意次ら、大河ドラマにもたびたび登場する日本史上の「悪人」を取り上げる。当時の時勢や世相から書き起こし、一次史料も駆使してその人柄を浮き彫りにしていく。握った権力の大きさにもよるが、強烈な個性や偏った人格が災いをもたらすのはいつの世も変わらない。

    • 2025年5月13日
  • 「悪意の日本史」/大塚ひかり著
    「悪意の日本史」/大塚ひかり著

       古典文学や歴史書に残された誹謗(ひぼう)中傷の記述から、悪意との向き合い方を探る。孝謙・称徳天皇、北条政子、吉良上野介らに向けられた中傷や悪口を考察。自身もSNSで炎上騒ぎに巻き込まれ執筆を思い立ったという著者は、自分の中の悪意を自覚し、慎重に精査することの重要性を説く。(祥伝社新書・1045円

    • 2025年5月13日
  • 「人生後半にこそ/   読みたい秀歌」/永田和宏著/読者を治癒する独り言
    「人生後半にこそ/   読みたい秀歌」/永田和宏著/読者を治癒する独り言

       世の歌人は、誰かに教訓を垂れようとして歌を書いているのではない。人生指南をしようとして歌を書くわけではない。ある日、ある瞬間、心に浮かんだかすかな思い。歌人たちはそれを独り言のように歌の形でつぶやいているだけなのだ。 退職をする。老いを感じる。病を患う。孫が生まれる。友と再会する。配偶者と死別す

    • 2025年5月13日
  • 銀河短歌会
    銀河短歌会

       散歩道川の辺に採みしふきのとう絵手紙描き君に送ろう桐渓 淑子知らぬ者同志で同じ歌唄う歌声喫茶心を繋ぐ神成 靖子枯れ果てしドラセナの樹に見つけしは小さき新芽の生き生きとして岡田 京子オレンジのベコニア際立ち春を呼び玄関フードに置きてウェルカム伊藤 妙子

    • 2025年5月13日
  • 苫小牧川柳社/佳句を求めて/ハスカップ集(4月号)から/「釧路川柳社同人」 河瀬風子
    苫小牧川柳社/佳句を求めて/ハスカップ集(4月号)から/「釧路川柳社同人」 河瀬風子

       階段を登れた足が重くなる箱崎 倫子人生はおっととととと綱渡り小林 立幸黒船が関税連れてやって来た佐々木いさお大の里おさな顔して勝ちきった大槻としこ春日和出合別れの分岐点坂本 富子夏に向けエアコン買うか悩む日々西内 一幸物価高慣れを見越してする値上げ中津 遊水何もかも踊る川辺の水の精

    • 2025年5月13日
  • 飽くなき探究心が生むホラー/「ユビキタス」を書いた/鈴木光司さん
    飽くなき探究心が生むホラー/「ユビキタス」を書いた/鈴木光司さん

       小説「リング」の作者でジャパニーズホラーの生みの親である鈴木光司さんが、新作「ユビキタス」のテーマに選んだのは〝植物〟。人類史をも書き換えるスリリングな物語には、「宇宙の森羅万象を克明に観察し、正しく記述したい」との思いがあふれる。4部作の幕開けにふさわしい、重厚なエンターテインメント小説に仕上が

    • 2025年5月13日
  • 「YABUNONAKA  /      ―ヤブノナカ」/金原ひとみ著/時代で激変する価値観
    「YABUNONAKA  /      ―ヤブノナカ」/金原ひとみ著/時代で激変する価値観

       真相がわからないことを「藪(やぶ)の中」という。ある出来事について人々の語る言葉に相違が生じることだ。芥川龍之介の短編小説「藪の中」で有名である。この作品は平安時代、藪の中で武士が殺され、犯人を巡って関係者の証言が食い違う話。 20歳で芥川賞を受賞した著者だが、芥川の題名を借りて挑戦したのが本書

    • 2025年5月13日
  • 「みしらぬ国戦争」/三崎亜記著/日本の精神風土に迫る
    「みしらぬ国戦争」/三崎亜記著/日本の精神風土に迫る

       三崎亜記が「となり町戦争」でデビューしたのは2004年である。小説すばる新人賞の受賞作だが、三島賞や直木賞にもノミネートされたのは、迫り来る戦争の恐怖という一点をシンボリックに捉えたからだろう。娯楽性よりも象徴性が強い作品で、死体も銃弾もないところで〈戦争〉の恐怖を描ききった。 あれから20年。

    • 2025年5月6日
  • フランスの手厚い出版支援/翻訳の後押し、学生文学賞も
    フランスの手厚い出版支援/翻訳の後押し、学生文学賞も

       「日本の読者にもフランスと同じように作品を受け取ってほしい」と語るジャン=バティスト・アンドレアさん=東京・南麻布のフランス大使公邸日本で翻訳刊行されたフランスの作品 文学作品の翻訳支援や作家の海外滞在、学生主体の文学賞…。フランス政府による出版文化の保護は手厚く、業界支援も多岐にわたる。書籍を「文

    • 2025年5月6日
  • 「なぜ人は自分を   /  責めてしまうのか」/信田さよ子著/苦痛の緩和に向けて
    「なぜ人は自分を   /  責めてしまうのか」/信田さよ子著/苦痛の緩和に向けて

       本書は、著者が顧問を務める心理相談機関でコロナ禍をきっかけに始めたオンラインセミナー「信田さよ子公開講座」の中から、特に反響の大きかった内容を基にまとめられた。 夫婦や親子の関係で悩みを抱える当事者に向け、著者がクライエントの言葉から感じ取り、学び、考え、実践してきたことを伝える。「母はまだ重い

    • 2025年5月6日
  • 「能力主義をケアでほぐす」/竹端寛著/より人間的な選択肢を
    「能力主義をケアでほぐす」/竹端寛著/より人間的な選択肢を

       福祉社会学、社会福祉学が専門の著者は、長い不妊治療の末、2017年、42歳で娘を授かる。子育てを妻だけに押し付けたくないと、分担し始めた。以前は仕事中毒で強迫的に業績を挙げて大学教員になった。一転、出張や講演をキャンセルし家事育児に終始した一日を「今日は何もできていない!」と嘆息する自分に気付き、

    • 2025年5月6日
  • 「ファシズムの教室」/田野大輔著
    「ファシズムの教室」/田野大輔著

       「田野総統」に忠誠を誓い、「制服」の白シャツ姿で団結し、学内の「リア充」カップルを糾弾する。そんなロールプレーを通し、ファシズムの仕組みと危険性を体感させようとした大学の授業の記録。ナチズムを長年研究してきた著者は「なぜ集団は暴走するのか」を明快に解き明かし、今の「ファシズム的な動き」にも警鐘を鳴

    • 2025年5月6日
  • 「子どもの体験       学びと格差」/おおたとしまさ著
    「子どもの体験       学びと格差」/おおたとしまさ著

       体験が不足すると負け組に転落―。親たちは体験の詰め込み教育に駆り立てられ、子どもたちは体験にまで格差意識を刷り込まれる。そんな「体験消費社会」で課金ゲーム化した体験は子どもたちに何をもたらすのか。子どもの本当の学びを取り戻すための啓発の一冊。「子どもは今を生きる生き物」という著者の警鐘をかみしめた

    • 2025年5月6日
  • 「やなせたかしの生涯  /  アンパンマンとぼく」/梯久美子著
    「やなせたかしの生涯  /  アンパンマンとぼく」/梯久美子著

       自己犠牲をいとわない人気キャラクターを50代で世に送り出し、誠実に生き抜いた漫画家の生涯を描く。やなせが創刊した雑誌「詩とメルヘン」の編集者として師事したノンフィクション作家が書き下ろした。両親と別離した幼少期や戦場で飢えに苦しんだ青年期の体験などを掘り下げ、アンパンマンに作者が託した思いを伝える

    • 2025年5月6日
  • 民報歌壇 原始林苫小牧/銀河短歌会/新墾
    民報歌壇 原始林苫小牧/銀河短歌会/新墾

       窓の辺の胡蝶蘭の花咲き盛り春の野原に飛びたち行かむか桐渓 淑子「おばあちゃん今日は僕のおごりだよ」得意顔してほほえむ孫は神成 靖子凍る朝石楠花の葉は固く巻き陽差しを受けてゆるみ始めり岡田 京子ふり返りまたふり返り手をふりて一年生の巣立ちゆく春伊藤 妙子いくたびも深く弥生を呼吸する道央のしばれ

    • 2025年5月6日
  • 民報俳壇 結ひの会/やまなみ俳句会
    民報俳壇 結ひの会/やまなみ俳句会

       まなざしに光ありけり卒業子山田  凡黄水仙朝の光のハイライト小松冨佐子春芝に老犬顎を預けをり坂口 悦子草の芽のぴんぴんぴんと角の如山角 瑞希包む掌の碗の温もり春惜しむ舘崎やよゐ豪快な笑ひは夫よ四月馬鹿高木美代子春夕べかぶりつきにて聴く落語砂田きぬ代ふるさとは思ひ出のなか犀星忌墨谷 

    • 2025年5月6日
  • 「ブレイクショットの軌跡」/逢坂冬馬著/現代社会に道を見失う人々
    「ブレイクショットの軌跡」/逢坂冬馬著/現代社会に道を見失う人々

       逢坂冬馬の第三長編は、静岡の自動車工場で働く期間工の青年のつぶやきから始まる。 2年11カ月続いた勤務の最終日、青年は製造ラインを流れるブレイクショットというスポーツ用多目的車(SUV)の車体内部に、1本のボルトが落下するのを目撃する。本来ならすぐにラインを止めなければならないのだが、ミスをした

    • 2025年4月29日
  • 歴史切り取るルポルタージュ/「原爆と俳句」を書いた/永田浩三さん
    歴史切り取るルポルタージュ/「原爆と俳句」を書いた/永田浩三さん

       「俳句は17音の緊張で、見事に瞬間を捉えることができる。その短さ故に心に留めやすく、共有もしやすい」と語る永田浩三さん=東京都練馬区 広島を中心に戦争と被爆の実相を長く見詰めてきたジャーナリストの永田浩三さんが、戦後80年を見据えて著書「原爆と俳句」を出した。「よく切れる刀で切ったかのように、歴史の

    • 2025年4月29日
  • 「歴史のなかの貨幣」/黒田明伸著
    「歴史のなかの貨幣」/黒田明伸著

       中世の東アジアで、海を越えて流通した銅銭。日本では12世紀まで米や絹が取引に使われていたが、釣り鐘や仏像鋳造の素材として大量に輸入された中国銅銭が通貨として広まった。15世紀には銅生産の活発化で中国銭の模造古銭が造られ、流通を支えた。国家権力から離れ、生き物のように東アジアに広がった銅銭に驚きを覚

    • 2025年4月29日
  • 民報俳壇 苫小牧ホトトギス会
    民報俳壇 苫小牧ホトトギス会

       帰る雁目で追うてをり虚子忌かな桂 せい久優しさを頂く余生春めけり長谷川淑子羽搏きは新たな風を呼ぶ帰雁千   香送別会日本史談義饒舌に森  美子暖かや玻璃を抜け来る日差しあり坂田 敦子雨音が誘う春眠覚めやらず髙橋紀美子生き抜いて元気で見たり桜かな ■(吉の士が土) 度 厚彦札幌の友の

    • 2025年4月29日
  • 「テクノ封建制」/ヤニス・バルファキス著     関美和訳/資本主義に反するモデル
    「テクノ封建制」/ヤニス・バルファキス著     関美和訳/資本主義に反するモデル

       ギリシャ財務相も務めた経済学者による本書は、グーグルやアマゾン、アップルなどの巨大テクノロジー企業が資本主義を根本から変化させていることに強い警鐘を鳴らしている。 現代のテクノロジー産業の特徴は「プラットフォーム」にある。音楽や映画、アプリなどを配信できる場を用意し、手数料を取るというビジネスモ

    • 2025年4月29日
  • 「『死後生』を生きる」/柳田邦男著/残された人の道しるべに
    「『死後生』を生きる」/柳田邦男著/残された人の道しるべに

       戦争や災害、事故、医療などを題材に長年取材を続け、日本のノンフィクション確立に寄与した著者。昨年米寿を迎えたが、執筆活動はとどまるところを知らない。何がそうさせるのか―。過去の記事と書き下ろしを併せた本書が「いのち」をキーワードに教えてくれる。 平仮名表記の「いのち」に、著者は生物学的な「生命」

    • 2025年4月29日
  • 「こども遊び大全」/遠藤ケイ著
    「こども遊び大全」/遠藤ケイ著

       昭和20~30年代に少年時代を過ごした作家・イラストレーターが、当時の子どもたちの定番の遊び計56種類を詳細な挿絵で紹介する。男の子編はベーゴマやクギ遊び、ちゃんばらごっこなど、女の子編はお手玉やあや取り、ままごとなど。写実的ながら温かみのあるイラスト、丁寧な手書き文字が郷愁を誘う。(ヤマケイ文

    • 2025年4月29日
  • 民報歌壇 新墾/ヌプリ短歌会/木曜短歌会
    民報歌壇 新墾/ヌプリ短歌会/木曜短歌会

       有珠川を終の棲みかと定めしか二羽寄り添ひて白鳥のゆく藤島 貞子シリウスは「焼き焦がす」とふギリシャ語なり亡き人の魂(たま)燃ゆる凍て星須藤 和代五番線のバス停に若き日よみがえる今はジョニィを待つこともなく渡邊 富子半分が空き地となりたるブロックも 人口減に転じて十年本波 裕樹安平川の草辺に君

    • 2025年4月29日