• 絶対
    絶対

       その人は当時14歳の少年だった。午前0時を何分か回ったところで、空襲警報が鳴り響いた。B29が低空飛行で次々に東京に侵入してきた。そして焼夷(しょうい)弾を次から次へと落とす。火に囲まれて逃げている最中、東へ行くか、西へ向かうかで迷った。東を選んで荒川の支流の中川へ飛び込んで助かった。少しでも元気

    • 2024年3月11日
  • 課題
    課題

       3月11日午後2時46分―。東北地方太平洋沖地震の発生日時を覚えている。地震や津波を含む全体の災害名は東日本大震災。彼岸が近づき、13年前の3月も日増しに暖かくなっていたはず。しかし金曜日の午後に、大きな揺れが関東以北を襲った。どす黒い津波が東北の沿岸に襲い掛かる様子が、テレビ画面に繰り返し映され

    • 2024年3月9日
  • ふに落ちない
    ふに落ちない

       やはりふに落ちないし、納得もできない。多くの人がそう思っているのではないか。自民党派閥のパーティー裏金問題だ。衆院政治倫理審査会は開かれたものの、裏金の使途ははっきりしないし、解明されずに残った疑問点は多い。  40年以上も前に旅客機の受注をめぐる世界的な汚職を背景につくられた「政治倫理綱領

    • 2024年3月8日
  • 指導者
    指導者

       一日の気温の寒暖差を予測する気象用語に数字の語呂合わせでお見事(0・3・5・10)がある。雪の日は0度、雨の日は3度、曇りの日は5度、晴れの日は10度の差があるという。地域によって差が表れるようだが、3月に入ってからの苫小牧は、この「お見事」が程よく当てはまる。今朝も寒かった。  11月に本

    • 2024年3月7日
  • 渡り
    渡り

       数千キロを南下して冬を越し、春にまた子育ての土地へ北上する渡り鳥の隊列や声に感動するのはなぜだろう。白鳥やガンが、隊列からはぐれないよう針路を教え合ったり、励ますように鳴き交わす声は毎年、季節になれば、苫小牧市西部の住宅地にも空高くから聞こえてくる。  「クエックエッ」「コーコー」という声を

    • 2024年3月6日
  • 孤独・孤立
    孤独・孤立

       病や発作で誰にもみとられずに自宅で1人で亡くなる「孤独死」。生前に身内や近所と付き合っていれば「孤独死」、人との交流がなければ「孤立死」という分け方もあるよう。いずれにせよ一人暮らしなら何歳の人にも起こり得る。  悩みや苦しみを抱え、自分の命を自ら断って亡くなる人もいる。いじめが原因で自死し

    • 2024年3月5日
  • 日本のリーグ
    日本のリーグ

       バスケットボール男子のBリーグ公式ウェブサイトに載る「歴史」の項目序文は「2016年秋、野球・サッカーに次ぐ日本3番目のプロスポーツが発足しました」と始まる。単一から2リーグへの分裂、日本協会の国際資格停止処分、相次ぐチームの経営破綻―といった十数年来押し寄せた難局を率直に振り返り、「『新リーグ』

    • 2024年3月4日
  • 選別
    選別

       「自分では片付けられないと、母から頼まれて―」。きのう朝のテレビで、能登半島地震発生から2カ月になる故郷に関東から駆け付けたという娘さんが、がれきの山に挑む様子が紹介されていた。崩れた家や壊れた家具、屋根瓦の山が並ぶ被災地の様子に改めて言葉を失う。  茶わん一つ、雑誌一冊にも思い出や思い入れ

    • 2024年3月2日
  • 雪解け
    雪解け

       「自ら出席し、マスコミオープンの下で説明責任を果たしたい」。公開するかどうかで与野党が折り合わず、衆院政治倫理審査会の開始が見送られた2月28日、岸田文雄首相がこう表明し、きのう、きょうの開催が決まった。公開に消極的だった安倍派の出席議員に圧力をかける「捨て身」の策と指摘された。  一国民と

    • 2024年3月1日
  • 脱炭素
    脱炭素

       日本酒造りで複数の蔵元がプロジェクトを組むケースが全国各地で目立っている。ライバル同士が共通テーマで技術を高め合い、より魅力的な酒を生み出す。秋田県5蔵の「NEXT5」、長野県5蔵の「59醸(ごくじょう)」などが有名だ。記者も各地から取り寄せている。  中でも異色が山形県4蔵の「山川光男」。

    • 2024年2月29日
  • 名称
    名称

       日高山脈という漢字4文字を見ると、それだけで姿勢が正しくなる気がする。30代前半の赴任地・日高で初めて登った山が無謀にも山脈の最高峰・幌尻岳(2053メートル)だった。登山道脇の高山植物は花期を終え、赤や黒に輝く実を付けていた。氷河期に氷が削った七ツ沼カール(圏谷)の紅葉の美しさを忘れない。ナキウ

    • 2024年2月28日
  • 審査会
    審査会

       自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件は、やっと当事者が出席する政治倫理審査会にこぎ着けそうだと思っていたら、26日の段階では与野党間で公開、非公開の折り合いがついていない。審査会には安倍派、二階派の事務総長経験者、閣僚経験者ら5人が出席することになるものの、公開の在り方で27日午前も調整中だ。説

    • 2024年2月27日
  • よっちゃん
    よっちゃん

       「跳び箱8段跳べた?」「余裕のよっちゃんだった」「今どき(小学生が)そんなふうに言う?」「言うよ」  先日、うちに遊びに来た小学5女児とのやりとり。余裕のよっちゃん。もはや中年以上しか使わない言い回しかと思っていたので驚いた。イカソーメンや盆菓子が大好物というちょっと渋い子なので「例外」の烙

    • 2024年2月26日
  • 2年
    2年

       ウクライナと言えば小中学生の頃の社会科。世界地図のあの辺りの問題には、穀倉地帯という文字に○を付けたり、小麦という文字と線で結んでおけば―そんな失礼な記憶がある。1996年秋、ウクライナ大使になった黒川祐次氏は、中公新書「物語 ウクライナの歴史」で、チャイコフスキーもドストエフスキーも宇宙船も、栄

    • 2024年2月24日
  • 春へ
    春へ

       日が長くなった。昨日はまた雪になったが、ジェットコースターのような気温の乱高下が続く。背丈ほどあった札幌の雪山も少し小さくなった。うららかな春日和に気持ちよく吹き寄せる風を「光風(こうふう)」と呼ぶそうだ。先日は、そんな風も吹いた。春が近づいている。  春は別れの季節でもある。道庁2階にある

    • 2024年2月23日
  • 揺れ
    揺れ

       壁の時計の秒針を見ながら50秒という時間の長さを体感してみた。1分弱は、生活の中では長くない。しかし、それが建物を揺すり、破壊していく時間だとしたら―。ガタガタ、ユラユラつぶやきながらの50秒間の、何と長かったこと。  元日夕方に起きた能登半島地震の複雑さが明らかになっている。9日付本紙の気

    • 2024年2月21日
  • 天使の梯子
    天使の梯子

       先日、苫小牧西地域から国道36号を通って車で出勤途中、「天使の梯子(はしご)」という自然現象を目にした。太陽が雲に隠れている時に、雲の切れ間から地上に向かって放射線状に差す光のこと。スポットライトで照らされたような光の帯を幾筋も海上に伸ばし、神々しく見えた。名前はイエスの弟子の一人が夢の中で、空か

    • 2024年2月20日
  • 面白がる
    面白がる

       年々時が早く過ぎると感じるようになった。専門家によると、人は初めての経験をすると印象に残って時を長く感じ、何事にも慣れてくると印象に残ることが減って時を短く感じるらしい。要は生活に新鮮味が乏しくなったのだろうか。  気付けば同級生が少しずつ減っていて、子どもの頃や青春時代を話題に「そうそう、

    • 2024年2月19日
  • 後悔
    後悔

       いじめが原因になった小中学生や高校生の自死の報道があると、「加害者たちのその後」を思う。罪を問われることはなくても、自分の言動が基になって人が命を断った事実は、消えない。もし、相手の苦しみに気付いても謝る相手はもういない。どうすればいいのだろう―。  札幌市で2021年、中学1年生の女子生徒

    • 2024年2月17日
  • 冬の防災
    冬の防災

       厚真町豊川自治会の自主防災組織が実施した「積雪寒冷期における防災訓練」の様子が先月、本紙の近郊面に載った。地域住民ら12人が、雪害で停電が発生したという想定で避難所生活の不便さを体験した。胆振東部地震の教訓を生かそうとする人たちの意思が取材記者の筆致から伝わった。参加者はレトルトのカレーなどの非常

    • 2024年2月16日
  • 喉元過ぎれば
    喉元過ぎれば

       道内居住者の新型コロナウイルス感染が2020年2月14日に初めて確認されてから丸4年がたった。昨年5月には感染症法の位置付けが5類に引き下げられ、大きなイベントの「3年ぶり」「4年ぶり」の再開も相次ぎ、マスク無しの人も増えた。今月の「さっぽろ雪まつり」は東区のつどーむ会場も合わせた全面再開となり、

    • 2024年2月15日
  • 転勤
    転勤

       「いい町だったでしょう」。ある町からの転勤の時、引っ越し荷物を積んだトラックの運転手さんに言われた。「いい町だった」。その町を離れる転勤者や家族から聞き続けて覚えたとか。きのうから春の気温。荷物の積み込みや見送りに来た友人や近所の人たちの、乱暴で温かい別れの言葉とともにふと思い出す。  手元

    • 2024年2月14日
  • 除雪
    除雪

       きょう、あすと日中の気温が一気に高まる天気予報。今冬の苫小牧は気温が高めで推移しているが、2月半ばにして一足早い春の訪れだ。季節外れの異常ともいえる暖かさに、懸念がないわけではないが、雪解けが進むのはうれしい。今冬は雪かきに追われる日が多かった。  記者は雪が多く降りそうな朝は、いつもより1

    • 2024年2月13日
  • 目標
    目標

       2024年が開けてから1カ月以上が過ぎた。災害や事故の発生、使途不明の政治家の裏金問題とため息もつきたくなる事象が相次いだ。それでも前向きな姿勢は必要不可欠だと言い聞かせている。  今年も一年の「目標」を立ててみた。昨年は目標の3割も達成できなかったのに懲りずに考えた。登れそうな山を選び、読

    • 2024年2月6日
  • 春の訪れ
    春の訪れ

       駆け出し記者のころ、取材先で「三寒四温」の言葉が理解できず、自分の不勉強さとモノを知らないことの恐ろしさを学んだ。その三寒四温の言葉が当てはまるのか。このところ寒気と暖気が忙しく変わる。寒い日は暖房用灯油の消費量も激しい。春が待ち遠しい。  世界保健機関(WTO)が冬の適切な室温を18度以上

    • 2024年2月5日
  • 蔵書
    蔵書

       テレビで、背景に書籍で埋まった書棚を置き専門用語を駆使していろいろな出来事を解釈してみせる人がよく映る。  あれも読みたい、これも買いたい―と書店の棚の前で財布の中身を考えて悩んだことは何度もあるが、書棚を他人に見せる、見られるという機会は無かった。きっとこれからも無い。「蔵書量で人間の価値

    • 2024年2月3日
  • 理由は
    理由は

       今月は好きな人にチョコレートを渡して思いを伝えるバレンタインデーがある。チョコの種類は当初「本命」だけだったが、気付けば「義理」「友」のほか、家族で味わう「ファミ(ファミリー)」、世話になっている人への「世話」が加わり、さらに男性から女性に渡す「逆」もあるというから際限がない。  東京のハー

    • 2024年2月2日
  • スケート賛歌
    スケート賛歌

       今週続開中の第78回国民スポーツ大会冬季大会スケート・アイスホッケーは終盤戦で、都道府県選手団の1700人超が苫小牧に集い、競技に力を注ぐ。前身の国民体育大会(国体)時代から数えて当地6回目の大イベントがたけなわだ。  第2次大戦後に始まった国体スケート・アイスホッケー大会は1950年に初め

    • 2024年2月1日
  • 反省
    反省

       1月がきょうで終わる。元日の夕方に令和6年能登半島地震が発生し、長くつらかった1カ月。仮設住宅も2月には入居が始まる。停電や断水も完全復旧にはほど遠いものの、めども見え始めた。  私たちは大きな地震のたびに備えの点検、強化を図ってきたつもりだ。わが家では1982年の浦河沖地震の後、家族の布団

    • 2024年1月31日
  • 夕刊時評
    夕刊時評

       「とまこまいシンボルストリートテラス」が27日、スタートした。2月24日まで、市道駅前本通りのJR苫小牧駅南口周辺から約650メートル区間をイルミネーションで飾る。苫小牧市が、5年間続けた駅前のイルミネーション「とまイルスクエア」をやめ、新たなにぎわい創出事業として始めた。  「新たに生まれ

    • 2024年1月30日