九谷赤絵の極致(上) 魅力的な赤と金の細密描写

九谷赤絵の極致(上)
魅力的な赤と金の細密描写
展覧会の会場風景。222点の作品を展示

 「九谷赤絵」とは、九谷焼の様式の中で、赤と金の細密描写を特徴とします。その技法は、中国の宋赤絵を起源に江戸時代に日本に伝わったものです。江戸時代後期に現在の石川県加賀市に開窯した宮本屋窯(1832〈天保3〉~59〈安政6〉年)は、赤絵を大成したとされており、類まれな緻密な文様で埋め尽くされた器面は、見るものを眩惑(げんわく)させるかのような幻想的な魅力を持っています。余白のない文様と赤い色彩は、ともすれば過度な装飾に流れる危険性をはらむでしょう。

   しかし、宮本屋窯の赤絵は、独特の陰りを帯びた灰味の素地に、深みのある赤と落ち着きのある金彩が知的な意匠と呼応しています。その技巧と品格ある華やかさは、実物を前にすれば誰の目にも明らかだと思います。

   宮本屋窯の優品の中でも、窯の主画工であった飯田屋八郎右衛門が手掛けた絵付けは特に優れた技巧で、宮本屋窯は別名「八郎手」や「飯田屋」とも呼ばれています。今に伝わる「八郎手」には、使用された形跡がほとんどないことから、作られた当時から鑑賞用であったと考えられています。

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   苫小牧市美術博物館で25日まで開催中の特別展「九谷赤絵の極致~宮本屋窯と飯田屋八郎右衛門の世界」。全国7カ所の巡回展で、九谷焼の名品222点が並ぶ。立石絵梨子主任学芸員が歴史に触れながら見どころを紹介する。

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