• アイヌ新法の理念
    アイヌ新法の理念

       「私たちアイヌ民族は日本政府の目には決して存在してはならない民族でした。しかし、私は幽霊ではありません。皆さんの前で今しっかりと立っています」。白老町で暮らし、北海道ウタリ協会理事長を務めた故野村義一さんが1992年12月、ニューヨークの国連本部で演説した有名な一節。日本にも先住民族が存在し続けて

    • 2021年5月25日
  • 模索
    模索

       新型コロナウイルス感染症の拡大が続いている。道内の死者は23日現在、累計で1001人。ついに1000人の大台に乗った。同じ出来事で死者数を毎日報道する、かつてない事態。16日に発令された緊急事態宣言を待つまでもなく、コロナによる死が異例の事態を告げ続けている。  一方でその事態を、読者に伝え

    • 2021年5月24日
  • 単純
    単純

       毎日、朝から晩まで新聞やテレビで何十回となくコロナ、ウイルスという言葉を読み、聞いているのに、理解の方はなかなか進まない。  中公新書「感染症 広がり方と防ぎ方」に、ウイルスの変異の仕組みが紹介されていた。  生物が子孫をつくるとき、親の遺伝子とは少し違った変わり者(変異株)が若干、生

    • 2021年5月22日
  • フォトカレンダー
    フォトカレンダー

       厚真、安平、むかわの高校生が撮影した写真のフォトカレンダーがこの春、初めて発行された。2カ月ほど前、同僚が記事を書き、本紙「まちからまちへ」面で紹介した。胆振総合振興局が胆振東部地震の被災地で元気に活動する厚真高、鵡川高、穂別高、追分高の生徒に作品を募り、復興支援を目的にしたアサヒビールの寄付金を

    • 2021年5月21日
  • 緊急事態
    緊急事態

       東京オリンピック開幕まで2カ月余り。新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、開催への懐疑論は強まる一方だが政府は開催ありきの姿勢を崩しておらず、菅義偉首相もロボットのように「選手や大会関係者の感染対策をしっかり講じ、安心して参加できるようにするとともに国民の命と健康を守っていく」と繰り返すばかりだ。

    • 2021年5月20日
  • 体罰
    体罰

       厚生労働省が昨年11~12月、全国の5000人の親や祖父母など養育者を対象に行った初の実態調査で、33・5%が過去半年以内に「体罰を与えた」と答えたそうだ。  小学校で何度か体罰を経験した。黒板の前に男子全員が一列に並び、端から順に平手打ちをされたことがある。理由はもう覚えていないが、バチン

    • 2021年5月19日
  • 感染爆発
    感染爆発

       5月の雨が降っている。緊急事態宣言が発令された、一昨日の日曜日。札幌市中心部を歩いた。普段の休日と人出は、あまり変わっていない。自宅マンションのテラスから手が届きそうなオオバボダイジュの緑が、濃くなっている。季節は初夏へ向かっている。  道内の新型コロナウイルスの最激戦地・札幌では先週、会議

    • 2021年5月18日
  • ホストタウン
    ホストタウン

       東京五輪・パラリンピックの開催がどうなるのだろう。年齢などを問わず、多くの人が関心を持っている問題だ。  国際オリンピック委員会(IOC)や政府、組織委員会は開催へ突っ走るが、世論調査などでは懐疑的な声が大きい。  こうしたオリ・パラの開催可否と合わせて、いやそれ以上に自治体を悩ませて

    • 2021年5月17日
  • 変異
    変異

       わが家にも、新型コロナワクチン接種の案内が届いた。通院している内科に20回ほど、自分で電話をかけ続けて接種の日程が決まった。  本州では有力者や自治体の首長、職員らによる接種手続きの不正や接種条件の柔軟過ぎる解釈が相次いで報道されている。自分には五月の晴れた青空のごとく何のやましいこともない

    • 2021年5月15日
  • 変異株
    変異株

       これが新型コロナウイルス変異株の驚異なのか。道内の感染者は13日、712人に達し、道民の恐怖感をあおっている。2日に感染者326人を数え、過去最多だった昨年11月20日の304人をほぼ半年ぶりに更新したばかり。今回は2週間もたたないうちに感染者が一気に2倍以上増えた。  感染者の70%以上が

    • 2021年5月14日
  • 検温
    検温

       新型コロナウイルスの感染が拡大してから、催事場などの入り口で検温をされるようになった。その時よく使われているのが、額などから発せられる熱を検知し、体に接触させずに検温する非接触式体温計。検温は家庭や地域でも日常化しつつあり、この手の体温計の利用はこれから増えていくかもしれない。  体に触れな

    • 2021年5月13日
  • 崩壊
    崩壊

       勤務していた石狩南部の支局で火葬場の新築事業を取材したことがある。火葬炉を幾つ設けるかを考えるときの深い知恵を教えられた。  年間死者数や人口の増減見通しは検討の最大の基礎だが、加えて近隣市町村を含む、災害に備える「万一への追加」があると聞いた。夕張市に炭鉱があった当時、数十キロ離れたその町

    • 2021年5月12日
  • 求愛の春
    求愛の春

       今月初旬の休日、日中に苫小牧市西部にいて空を見上げていると、けたたましい鳥の鳴き声と羽音が聞こえた。その方向に目をよく凝らすと、オオジシギだと分かった。  記者は宅地辺縁に立っていて、道路を隔てた先にはヨシが茂り、低木が林をまばらにつくる谷地があった。上昇と急降下を繰り返す1羽が一帯上空を忙

    • 2021年5月11日
  • 基準
    基準

       札幌市を対象地域とする「まん延防止等重点措置」の北海道への適用が始まった9日、道内の新型コロナウイルス感染者は初めて500人を超えた。道のコロナ対策は昨年2月、国の動きを待たずに独自に発出した緊急事態宣言から始まった。その後、国の緊急事態宣言を経て、昨年11月からは集中対策、今年4月にはゴールデン

    • 2021年5月10日
  • 危機感
    危機感

       新聞やテレビで日本や世界の新型コロナウイルスの感染者数や死者数を確かめるようになって1年数カ月。不思議も毎日、増えていく。  鳥取県や島根県などの感染者数がなぜ少ないのかも、不思議の一つだ。大阪府の新規感染者が1005人、東京都が907人、北海道が248人だった7日、鳥取と島根は7人と2人。

    • 2021年5月8日
  • ガラス越し
    ガラス越し

       高齢者施設で暮らす母親との面会は常に玄関のガラス越しだ。互いに声が聞こえないから、会話の手段は、施設が用意する携帯電話。差し入れの品も直接手渡しできないため、職員にお願いする。新型コロナウイルスの感染拡大によって、触れ合う機会が奪われてから1年以上たつ。親子を分断するガラス1枚が、いつも分厚い壁の

    • 2021年5月7日
  • SMS詐欺
    SMS詐欺

       新型コロナウイルス感染拡大の影響で、暮らしが変化した読者も多いと思う。当方は以前もこのコラムで書いたが、巣ごもりを心掛けていたら、通信販売の利用が増えた。飲み会がなくなって交際費は減ったが、お取り寄せグルメの乱用で食費がかさみ、冷蔵庫は日本酒で埋まっている。  全国各地から生酒を注文している

    • 2021年5月6日
  • ドライブ
    ドライブ

       第4波とされる新型コロナウイルスの感染が全国的に拡大している中で、今年もいろいろと行動を制限しなければならない大型連休も終盤。11連休の人はまだ5日ほど残っているかもしれないが。  感染対策を徹底した宿泊プランに助成し、利用者が最大半額の割引料金で宿泊できる「新しい旅のスタイル」を提案して道

    • 2021年5月4日
  • コロナ慣れ
    コロナ慣れ

       新型コロナウイルス禍2度目のゴールデンウイーク。4都府県に緊急事態宣言が発令され、道内も2日の新規感染者が過去最多を更新した。政府は感染拡大防止へ不要不急の外出を控えるよう重ねて訴えているが、コロナ慣れも相まって、人の流れの抑制は限定的に見える。重症者も全国で急増しており、野党は「国民や選手の命と

    • 2021年5月3日
  • 虐待
    虐待

       「犬が人をかむのはよくあること。しかし人が犬をかめばニュース」。何がニュースか。悩む新米記者への、先輩の冗談交じりの助言。  帯広市のばんえい競馬の44歳の騎手が馬の顔を蹴った。4月18日の新馬能力検査でのこと。インターネットで画像が配信され「虐待だ」と批判を浴びた。その場面をテレビで見た。

    • 2021年5月1日
  • 第4波
    第4波

       満開の桜の木の下を歩いた。大型連休に入った札幌・中島公園。小さな子どもが愛犬と一緒に走り抜けて行く。札幌には不要不急の外出・往来自粛が要請されているが、家族連れでにぎわっていた。  中心部の地下街も同様。普段の休日と、そう変わらない人出だった。昨年の今頃、本道にも緊急事態宣言が発令され、ほと

    • 2021年4月30日
  • まちづくり
    まちづくり

       まちづくりという言葉がある。本紙でもよく使われる。もう何十年も課題として横たわる中心市街地活性化や駅前再開発、交通体系の見直しまで幅広い分野で使えるとても便利な言葉だ。  ただ、まちづくりとは? と問われれば明快に答えるのは難しい。建物を造ることだけではなく、道路を整備するのでもない。何とな

    • 2021年4月29日
  • 難民
    難民

       買い物難民という言葉が使われ始めたのは20年ほど前か。コンビニが増え、配送サービスの増加などで問題は解決したかに見えたが、今また別の高い壁が延び始めた。  大型店の進出によって住宅街や農漁村の小規模店が消え、車を持たない高齢者が日々の食料品の購入にも不便を強いられるのが当初の難民問題だった。

    • 2021年4月28日
  • 指導者の条件
    指導者の条件

       新型コロナウイルスの感染を恐れて出無精になり、ご多分に漏れず拙宅の断捨離を少しずつ進めている。そんな時に書棚で見つけた本が「指導者の条件―人心の妙味に思う」(PHP研究所発行)。松下電器(現在のパナソニック)を一代で築き上げ、「経営の神様」と呼ばれた松下幸之助氏の著書だ。  1975年に出版

    • 2021年4月27日
  • 出生数
    出生数

       まちでこいのぼりが泳ぐ姿を見掛けるようになった。5月に入れば、じきにこどもの日を迎える。この日が近づくと出生数が報道されたりするが、ここしばらくは毎年のように減っている。例えば2010年は107万人だったが、20年は87万人と、10年で20万人も減っている。  総人口が減っているのだから、出

    • 2021年4月26日
  • 宿題
    宿題

       日曜日はまた各地に寒さや雨の予報。休日は外出や接触を控えなさいと天気の神様の指示。東京などは3度目の緊急事態宣言始動日だ。  最近、週刊誌の新聞広告を見て、老後に関連した話題が多くなったと感じるのは、自分がその対象年齢になったからなのだろう。見出し文字の一行一句が自分のどこかに引っ掛かる。

    • 2021年4月24日
  • 脱出手段
    脱出手段

       テレビの衛星放送などでよく放映する映画の中で何度もチャンネルを合わせたくなる作品は「大脱走」。1963年封切りで地上波各局放送が幾たびも反復する傑作だ。  時あたかも第2次大戦中にドイツの収容所から脱出を図る捕虜となった連合軍士官の群像劇が繰り広げられる。一癖も二癖もある登場人物たちを当時の

    • 2021年4月23日
  • 三度目の正直
    三度目の正直

       苫小牧市内にも桜の便りが届いた。ゴールデンウイークも近い。だが今年も、気持ちが浮き立つ連休とはならなくなった。東京、京都、大阪、兵庫の4都府県に新型コロナウイルスの緊急事態宣言が発令される見通しで、宣言は昨年4月、今年1月に続いて3度目。4都府県とも宣言に準じた「まん延防止等重点措置」の適用中で、

    • 2021年4月22日
  • 地図
    地図

       取り壊された家や商店の跡を見て、そこにあった建物の形がかすんで行くのに気付く。懐かしい景色はそんなふうに記憶からも消える。  地図が好きだ。最新の国名や地名はインターネットで確認をするが、大判の地図は、歴史も含めて一望できる気がする。道路地図も居間や机上の探しやすい場所に何冊か置いている。

    • 2021年4月21日
  • アイヌ文学
    アイヌ文学

       美しい人妻が若い神に天の国へ連れ去られてしまう悲話、家の宝物を奪った悪い伯父を懲らしめる勧善懲悪の物語―。登別出身のアイヌ文化伝承者・故金成マツが約90年前、地域の語り部から聞き取り、筆録したウエペケレ(散文説話)だ。  マツがローマ字筆記のアイヌ語で残したウエペケレは160編に及ぶ。しかし

    • 2021年4月20日