• 違うから面白い
    違うから面白い

       ある日、診療が終わって宿舎に戻り、インターネットを使ったオンライン会議に参加した。いろいろな地域から出席している人とあいさつを交わす。「寒いですね」とある人が言ったので、「こちらは今年はさほど寒くないんですよ」と答え、会議が始まった。   ひと通り話し合いは終わったので、最初にあいさつした奄

    • 2025年1月25日
  • ジャイアン
    ジャイアン

       一番好きな外国は?と聞かれたら、いつもシリアと答えている。冷戦まっただ中の1980年代後半、写真で見たパルミラの遺跡をどうしてもこの目で見たくなり、ソ連のアエロフロート機の激安チケットを手に入れ、モスクワ経由で「鉄のカーテン」の向こう側の古都ダマスカスに飛んだ。当時アエロフロートの操縦士はみなソ連

    • 2025年1月18日
  • 撮影時の楽しみ
    撮影時の楽しみ

       いまさらと言わないでほしい。映画「ドライブ・マイ・カー」を見た。濱口竜介監督2021年公開。村上春樹の短編小説を原作に描くヒューマンドラマ。妻との記憶が刻まれた車。聴けなかった秘密。孤独な二人がたどり着く場所。  いいものを見た。大事件が次々と発生するが静かに時が進んでいく。わたしなどは大し

    • 2025年1月11日
  • 印象値
    印象値

       天気予報は年中無休で情報をお届けする必要がある、大きなくくりでの社会インフラと言ってもいいものであるかと思うのですが、その裏には、情報を届ける人の存在が不可欠です。その一翼を担うようになってから、早くも10年目の年末年始を迎えることになりました。ある年は、大みそかから元日に日付をまたぐ瞬間を職場で

    • 2025年1月4日
  • この地で生きる
    この地で生きる

       穂別についに冬が来た。  12月半ばには2日連続で氷点下20度を下回る日があり、全国ニュースにも「むかわ町穂別」という名前が出たそうだ。「内地の親戚から”大丈夫なの?”と連絡が来たよ」と患者さんが教えてくれた。  面白いのは、そんな話をするとき、多くの人がニコニ

    • 2024年12月28日
  • 待ち遠しい札幌
    待ち遠しい札幌

       うれしい仕事を頂いた。北海道に行ける! 来年1月札幌での講演会の依頼。20年前女芸人として「ちょっとどこ見てんのよ!」というギャグで一世風靡(ふうび)したわたしだ(自分で言ってみました)。現在の仕事はありがたいことに多岐にわたり、ドラマ舞台執筆、そして講演会のお話も時々頂く。  初めて講演の

    • 2024年12月14日
  • 高い確率
    高い確率

       天気の予測精度の計算方法はさまざまなものがあり、気象予報士試験の出題範囲にもなっています。試験ではひねった計算問題はあまり出ないため、試験で出た際は点の取りこぼしが無いようにしたい問題です。気象庁の予報精度に関してはホームページに掲載されており、毎月中ごろに前月分が更新され、それ以前の過去の成績も

    • 2024年12月7日
  • 大横綱の人生
    大横綱の人生

       北海道は相撲王国。子どもの時はそう聞かされていた。そのシンボルともいえる元横綱の北の富士さんが亡くなった。  北の富士さんは、オホーツク管内美幌町生まれ。留萌市の小学校を経て、中学の半ばからは旭川市へ。スポーツ万能で道内の多くの高校から勧誘があったそうだが、結局、中学卒業と同時に相撲部屋入り

    • 2024年11月23日
  • 父と子
    父と子

       この日のため、出張用の小さなスーツケースの奥底に、ファイターズの青いユニホームをそっと忍ばせていた。CSシリーズでソフトバンクに2連敗を喫し、あとがなくなった10月18日の午後。私は居ても立ってもいられず、出張先の東京から、こっそり福岡へ飛んだ。  ソフトバンクのファンクラブに急ぎネットで登

    • 2024年11月16日
  • 言わせてほしい
    言わせてほしい

       映画を1人で見る時間は至福のひととき。映画館の雰囲気、ここでだけ食べたくなるポップコーン。どこの席にしようか考えるのもいい。今夜は後方中央の席。  かつて映画は一番前の席で見ると決めていた。自分とスクリーンの間に何もないって最高だ。全体を一度に見にくいため、首を左右に動かす必要があるが、それ

    • 2024年11月9日
  • 10年前と比べて
    10年前と比べて

       気象庁が発表する情報の近年の進化は目覚ましく、私が気象キャスターとして勤め始めた10年ほど前と比べると、天気予報で扱うデータは大きく様変わりしました。  その中で、今は無くてはならない情報というと、大雨による危険度が一目で分かる「キキクル」です。土砂災害や浸水、洪水の危険度を地図上で色分けし

    • 2024年11月2日
  • ファイターズの役割
    ファイターズの役割

       穂別に来てよかったことの一つに、「職場で堂々と野球の話ができる」というのがある。  「野球の話」とはもちろん日本ハムファイターズの話題を指す。道内ではどこでも同じだと思うが、「きのう、野球見た?」は「ファイターズの試合の中継を見たか」という意味になる。ほかの地域でそう言ったら、「メジャーリー

    • 2024年10月26日
  • 北米で縄文と出会う
    北米で縄文と出会う

       大陸の方から「〇国4000年の歴史」といった言葉が飛び出すとき、私は決まって「わが日本文明はひと桁上の1万6500年ですから~」と反撃するようにしている。津軽の大平山元遺跡から出土した土器は、土器片とすら呼べないほど痛々しく砕けていたが、炭素年代測定法で恐らく世界で最も古いとされ、2021年7月、

    • 2024年10月19日
  • 宇梶さんに食いつく
    宇梶さんに食いつく

       フジテレビ系(UHB)ドラマ反町隆史さん杉野遥亮さんダブル主演「オクラ」人情深い昭和刑事とクールな令和刑事の凸凹バディが”お蔵入り”寸前の未解決事件に挑む!  8日火曜日に初回スタートしましたが、ご覧いただけましたでしょうか? 井戸端会議好きの主婦刑事として、わたしも

    • 2024年10月12日
  • 全力ダッシュ
    全力ダッシュ

       放送中に気を付けなければならない点は多岐にわたりますが、秋になると解説することが多くなる台風についても注意が必要な点が多々あります。  というのも、気象庁以外の事業者が気象や波浪等の予報の業務を行おうとする場合、気象業務法第17条の規定により、気象庁長官の許可を受ける必要があるのですが、「予

    • 2024年10月5日
  • 季節を味わう
    季節を味わう

       お彼岸を過ぎたら急に涼しくなってきた。カボチャの収穫はまだ続くが稲刈りは終わり、農家の人たちもホッとしているようだ。  診察室で「ようやくひと段落ですね」と患者さんに声を掛けると、こんな答えが返ってきた。  「おかげさまで。でもまだ”秋じまい”があるので、あれこ

    • 2024年9月28日
  • 国連の正体
    国連の正体

       今、ニューヨークから羽田に戻るJAL5便の機内で本稿を書いている。  MIT(米マサチューセッツ工科大学)と当社は本年4月、電子伝導性炭素セメント材料「EC³」の社会実装プロジェクトをスタートさせた。前にも触れたが、コンクリート素材を蓄電体へと進化させる日米共同の技術開発プロジェク

    • 2024年9月21日
  • ひとつちょうだい
    ひとつちょうだい

       東京都世田谷区在住。スーパーは、生活クラブさんというお店の常連。生産者さんのお名前やメッセージを読みつつ買い物。お店の方にレシピを教わったりと、わが心の憩いのひととき。  きょうもスーパーの中をじっくりと見ながら回っていると「カボチャありますよ~カボチャどうですか~甘いですよ~北海道のくりゆ

    • 2024年9月14日
  • フル回転
    フル回転

       放送前に入念に準備していても、オンエア中に考えなければならないことも多く、放送中は大きく分けると三つのことを並行して行う必要があります。  一つは、当然のことながら、天気予報についての内容を話すことです。スタジオに入る前に準備をしているとはいえ、雨雲の様子などは、最後に確認した状況と変わって

    • 2024年9月7日
  • どちらも必死
    どちらも必死

       いきなり自分の話になるが、私は動物が大好きだ。子どもの頃から実家でいろいろなペットを飼い、東京にいた時はよく近郊の動物園巡りをしていた。  だから、穂別に来た頃は「獣害」といわれても、あまりピンと来なかった。「野生動物に囲まれた暮らしなんてステキじゃない」と心の中で思っていた。  とこ

    • 2024年8月24日
  • 「チンギス」という名の義経
    「チンギス」という名の義経

       今年のお盆休みは8年ぶりに江差(桧山管内)を訪れた。380年に迫る歴史を持ち、道内最古にして随一の絢爛(けんらん)豪華な夏祭り「姥神大神宮渡御祭」をもう一度この目で見たくなったからだ。毎年8月9日からの3日間、全国に散っている江差っ子たちがニシンの群れのように故郷に舞い戻り、まちは祭り一色となる。

    • 2024年8月17日
  • ありがとう旭川
    ありがとう旭川

       7月14日日曜日、晴天。待ちに待った旭川でのライブ「大泉洋with青木さやかザ・トークショー」。  今年から「with青木さやか」というライブを立ち上げた。全国さまざまな土地で、ゆかりのあるゲストさんとエンターテインメントをお届けするここだけの話、エンタメの楽しさを知っていただこう、売り上げ

    • 2024年8月10日
  • 実況が欠かせない
    実況が欠かせない

       天気予報をするために、コンピューターによって作られた予想資料を確認することは大事な作業ですが、「天気予報をするために一番大事なのは実況だ」と、研修の時、先輩から特に強調して教えられました。  「実況」とは気象の業界でよく使われる用語で、「今の天気」のことを差します。未来の天気を知るために「今

    • 2024年8月3日
  • 「助けて」と言おう
    「助けて」と言おう

       札幌で起きた事件について、コメント取材があった。介護疲れから認知症の妻を殺害したという罪に問われている高齢男性の裁判についてだ。  一通りコメントした後で、電話してきた記者がこう質問した。「香山さんが今いる町でも、孤立した状況で介護をしている高齢者はいるのでしょうか?」  私は返答に困

    • 2024年7月27日
  • フランス
    フランス

       人の思考を決定付ける高校と大学の7年間。この時期、私の心は「フランス」に支配されていた。15の春に親元を離れ、札幌で下宿生活を始めてすぐにアルチュール・ランボーにのめり込み、高校の授業そっちのけで仏語の辞書を片手に超硬質なダイヤともいうべき天才詩人のテキストにふけった。  おかげで大学は親の

    • 2024年7月20日
  • フランス【使用不可】
    フランス【使用不可】

       人の思考を決定付ける高校と大学の7年間。この時期、私の心は「フランス」に支配されていた。15の春に親元を離れ、札幌で下宿生活を始めてすぐにアルチュール・ランボーにのめり込み、高校の授業そっちのけで仏語の辞書を片手に超硬質なダイヤともいうべき天才詩人のテキストにふけった。  おかげで大学は親の

    • 2024年7月20日
  • 明け始めぬうちに
    明け始めぬうちに

       テレビ出演が始まり、初めに苦労したのが睡眠時間の調整です。朝の気象キャスターの一日のスタートは早く、現在出演している「おはよう北海道」の放送開始は午前7時45分ですが、起床の時間は未明の2時ごろです。できれば7時間は睡眠時間を確保したいので、出演の前日は夜7時ごろまでには床に就きたいところです。し

    • 2024年7月6日
  • 挑戦は何歳からでも
    挑戦は何歳からでも

       初夏が来て、診察室の雑談でも農作物の話題が多くなってきた。農家の人からはプロならではの苦労話などを、家庭菜園の人からはそれぞれの工夫などを聞かせてもらう。  80代でひとり暮らしの女性は、「自分が食べる分だけ」と思っていてもつい、いろいろな品種を作りたくなってしまう、と話した。たとえばラズベ

    • 2024年6月22日
  • 右も左も
    右も左も

       ロシアがウクライナに戦争を仕掛け、G7が対ロ禁輸を決断して以来、私はウラジオストクに住むロシアのパートナーとの連絡を一切絶ったことを本稿で以前触れた。禁輸措置は明確な戦争行為だ。政府の戦う意志に一国民として従い、プーチンの暴挙へ抗議の意思を示すためでもあった。秘書を介し、以来、メールも電話も一切の

    • 2024年6月15日
  • みんなは何を?
    みんなは何を?

       3月半ば。10年ぶりに会う札幌の友人を旭川駅に迎えに行き、一通り改札前で盛り上がり、歩いて居酒屋へ。夕方で人通りは増えてきたが、東京の比ではない。広い道路は、友人と並んで歩いても余裕で手を伸ばせるし、歩いていて窮屈じゃないな、と感じる。田舎道なわけでなく、歩行者天国の道路は整備され、きれい、かつ旭

    • 2024年6月8日