つくり笑顔  三上(みかみ) 剛(つよし)

つくり笑顔 
三上(みかみ) 剛(つよし)

 一介の高専教員でしかない私でも、最近はホームページなどに顔写真が載る。先日も、東京にある高専機構本部からホームページを作るので、そこに載せる顔写真を送ってほしいと依頼が来た。本校のホームページに載せている若い頃の顔写真を送ったら、数日後、先方から不受理のメールが届いた。

   不受理の理由は「笑顔」の写真が欲しいとのことだった。あいにく、そんな写真は持ち合わせていない。スマホで自撮りをすることにした。笑顔をつくってみたが、何度やってもぎこちない顔になる。インターネットで笑顔のつくり方を調べて、口元を引き気味にしたり、眉を上げたりもしたが、どうも自然な笑顔にならない。難しいものだ。普段、それほど仏頂面ではないと自分では思っているのだが。

   30分ほどスマホの前で格闘したが、結局、満足のいく写真は1枚も撮れなかった。とうとう諦めて、引きつった笑顔の写真を送ったが、そのときふと思った。先方も「今の顔写真をください」とは言いにくいので、「笑顔の写真をください」と言ってきたのかもしれないと。

   最近は写真の加工技術がとても発達している。さすがに本人と判別できないくらい加工してしまうと問題だが、少し見栄え良く加工するくらいは簡単にできる。加工後の写真と若い頃の写真、どちらがましなのか分からないが、加工した写真を送っても不受理だったに違いない。ごまかそうとすると、返って仕事が難化するものだと痛感した。

  (苫小牧工業高等専門学校教授)