体操男子で2016年リオデジャネイロ五輪団体総合金メダルに輝いた34歳の田中佑典(田中ク)が、14日までの全日本個人総合選手権で円熟味あふれる演技を披露した。得意の平行棒と鉄棒で高得点をマークし、他の種目も大きなミスなく予選7位。決勝は順位を上げて6位になった。2大会ぶり3度目の五輪となるパリ行きに前進し、「五輪で金メダルを取るという気持ちが自分を強くしてくれる」と実感を込めた。
2年前、五輪個人総合2連覇の内村航平さんは33歳で引退した。現役終盤は内村さんでさえ鉄棒に絞らざるを得なかったが、田中は今でもオールラウンダーとして高いレベルを維持。「われながら変人だなと思う。なんか、おかしな域に来た」と冗談交じりに自分を評する。
秘訣(ひけつ)は基本に忠実な体操にある。動きに無駄がないので、練習から余計な体力を使わなくて済む。体の痛みで練習量を確保できなくても、質の高さと百戦錬磨の経験でカバー。全日本で実施した平行棒の技のこなしは、誰よりも美しく見えた。
今はコーチとしてサポートしてくれる兄の和仁さんや、世界選手権で「エレガンス賞」を獲得した姉の理恵さんも、演技の美しさに定評があった。全員オリンピアンという「田中3きょうだい」の中で、最後の現役として奮闘する末っ子。「レベルが高い代表選考会で争えているこの瞬間を楽しんでいる」。田中家の伝統を体現しながら、もう一花を咲かせようとしている。