アーチェリー男子の古川高晴(39)=近大職=は6大会連続出場となる五輪での目標を聞かれると、こう言った。「パリでは個人、団体、混合団体の全種目で金メダルを目指す」
技術以上に精神力がカギとなる競技。勝利への過度な意識は矢のぶれにつながる。「経験上、先のことを考えてもうまくいったことがなかった」。その考えから、過去の5大会は「メダル」という言葉を避けてきた。
意識を変えるきっかけとなったのは2021年、東京五輪直前にテレビ番組のインタビューで対談した柔道男子60キロ級で五輪3連覇の野村忠宏さんとの会話。収録後に現役時代の意識について聞くと、「金メダルしか見ていない。取るための練習しかしていなかった」という答えが返ってきた。
東京では個人、団体で銅を獲得。12年ロンドン大会個人の銀以来、三つ目のメダルを手にした。パリでさらなる高みを目指そうと決意したときに、当時は「競技の特性が違うから」と参考程度に聞いていた野村さんの言葉を思い出した。「やっぱり金を意識して、口にして、金を取るための行動をしないといけない」。凝り固まった概念を覆すに至ったという。
パリに向けては、日本代表の金相勲コーチの勧めで新たなフォームづくりにも取り組む。「今までの考えだったら、受け入れられなかった。金を取るためのチャレンジ」。8月に不惑を迎える古川は新たな姿で、6度目の大舞台に立つ。