決勝のバトルが終わり、ジャッジのスコアが出るまでに少し時間があった。AMIこと湯浅は「全部を出し切れた。ステージを楽しめた」と胸を張って結果を待った。カウントダウンの後、表示された得票数は16―11。初代五輪女王の座をつかみ、感情があふれ出た。
この日こなしたバトル数は、実に15。同じムーブの繰り返しは好ましくないとされる中、引き出しの多さが光った。本来は決勝で出すつもりだったムーブを準決勝で投入した。「その判断がなかったら、この結果にはなっていないと思う」。昨年の世界選手権覇者「NICKA」とぶつかった決勝では、軟体動物のように全身を自在に動かした。よどみなく、滑らかに。これぞ湯浅というムーブを詰め込んだ。
昨年の世界選手権と杭州アジア大会で優勝を逃し、五輪切符を手にするまでに予想以上に苦しんだ。「やりたいことはこれなのか。やめてしまおうかと思ったこともあった」。精いっぱい踊っても、結果につながらないもどかしさ。繊細なタイプゆえに、精神的に追い込まれていた。
五輪という未知の舞台を諦めなかったのは、周囲の支え、ブレイキンへの愛情があったから。踊り終えて、こう実感を込めた。「ブレイキンを知らない世界の人にも(魅力を)伝えることができた。やってきてよかったな」。パリの中心で確かな輝きを放ち、最高の笑顔が戻った。