白老町の女性たちでつくる「ポロトの母さんの会」(大須賀るえ子代表)が、エント茶と呼ばれるアイヌ民族伝統の野草茶作りに今秋も取り組んでいる。町内で自生するシソ科植物・ナギナタコウジュを茶葉にしたもので、ティーバッグタイプの商品を開発、販売してから今年で10年目。会のメンバーは「アイヌ伝統の健康茶の素晴らしさを伝えたい」と張り切っている。
同会は、ポロト湖畔にあった観光施設ポロトコタンの民芸会館「ミンタラ」で土産店の経営、販売に従事していた女性らでつくるグループ。アイヌ民族の食文化を伝えようと結成した同会は、民芸会館でエント茶原料の乾燥ナギナタコウジュを販売していたが、2009年に会館が閉館したため、販売も中止。その後、メンバーらは「会を再起させて、本格的にエント茶を作ろう」と集まり、野草に詳しい北見工業大学教授の助言を受けて、11年にティーバッグタイプの商品「エントのお茶」を開発した。
アイヌ語でエントと呼ぶナギナタコウジュは、日当たりの良い原野などで自生する一年草。乾燥させた穂や枝には利尿、発汗などの効果があるとされる。アイヌ民族は、強い香りが病魔を遠ざけると考え、日常的に茶にしたり、かゆの香り付けにも使った。幕末に蝦夷地(北海道)を踏査した松浦武四郎(1818~88年)の日誌にも、アイヌ民族がエント茶を飲んでいたことが記されている。
同会は今秋も、町内の原野で茶葉用のナギナタコウジュを採取し、来年も育つよう種をまいた。14日にはメンバーの自宅で大須賀代表ら6人が、干した穂と枝をはさみで切り分ける作業に取り組んだ。穂と枝は今後、北見市の北見産学医協働センターで粉砕。2000個のティーバッグにした後、会のメンバーがパッケージに詰めて商品にする。
ティーバッグ商品を開発してから10年目の節目を迎えて、大須賀代表は「エントを健康づくりに利用したアイヌ民族の知恵を知ってもらいたい」と話し、これからも商品作りを続ける考えだ。
「エントのお茶」は税込みでティーバッグ10個入り540円、20個入り1015円。駅北観光商業ゾーン(ポロトミンタラ)の観光インフォメーションセンターと、同町竹浦の「はまのマルシェ」で扱う。