今年も新型コロナウイルス感染拡大で始まり、収束せずに暮れようとしている。年明け早々の第6波、夏場の第7波、そして、今も続く第8波。東胆振の医療提供体制も都度、逼迫(ひっぱく)している。一方、水際対策の大幅緩和をはじめ、「コロナ前」を取り戻す動きは加速。とまこまい港まつりをはじめ、3年ぶりに復活したイベントも目立った。国は感染症法上位置付けの見直しを議論しているが、新たな備えの構築は待ったなしだ。
今年は感染状況の変化を踏まえ、国や道のコロナ対応も変容した。保健所や医療機関の負担軽減、医療サービスの重点化につなげようと、重症化リスクのない人は原則、自らの健康管理で自宅療養する流れができた。感染症法上は「2類相当」のままで、感染者への就業制限など強い措置が取れるが、コロナ対策は新たな段階を迎えた。
苫小牧市のみで週別感染者数が1000人を超えた2月、苫小牧保健所は道や管内各市町にとどまらず、派遣会社の応援を仰ぐほど行き詰まった。感染者全員への電話連絡などに、膨大な負担が掛かっていたが、この疫学調査の重点化、みなし陽性の運用に踏み切り、難局を乗り越えた。
9月には全国一律で「全数把握」が見直され、感染症法に基づく届け出の対象は65歳以上や妊婦らに絞り込みされた。市内では第6波以降、行動範囲が広い若年層を中心に感染が広がり、ワクチン未接種の子ども、重症化リスクのある高齢者と、順番でうつる傾向にあるが、7割以上が届け出の対象外となった。
保健所や医療機関の負担は減ったが、感染症法上は積極的な情報開示を義務付けながら、自治体ごとの感染者数すら把握できない状況。岩倉博文市長は定例記者会見で「(感染者数を)『分からない』としか答えられないのはいかがなものか」と率直な思いを口にした。市民が危機意識を共有する機会は損なわれた。
市内のワクチン接種率も鈍化した。10日現在、初回(1、2回目)接種を終えた人は14万人弱、接種率は82・9%だが、オミクロン対応の改良型ワクチン接種率は23・3%、約3万9300人にとどまる。副反応と重症化の可能性を両てんびんに、若年層を中心に敬遠する傾向にあり、市健康支援課の名越真浩課長は「年末年始は人と会う機会も増える。検討している人はぜひ年内に接種を」と訴える。
株特性の変化で重症化率は低減しても、感染者の母数が増えれば、重症化する人数も押し上げる。感染症指定医療機関の市立病院では年明け、中和抗体薬を投与する入院もあり、患者の「回転」は早かった。現在は80代、90代の高齢者が中心で、いったん入院すると長引くケースが多い。
市医師会は国の方針に沿って、発熱外来・検査の拡充など力を入れてきただけに、沖一郎会長は「2類は本来、入院が必要だが、今はなし崩し。そして患者の多くは5類の季節性インフルエンザ並み」と指摘。感染状況と医療、そして社会経済活動がかけ離れた現状を危惧し、「国は本質の議論をしっかりし、早く決めてほしい」と訴える。
(金子勝俊)
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2022年も残すところ、あとわずか。今年起きた主な出来事を振り返る。