8 苫小牧港の脱炭素化 CNP形成計画作り進む 道内初LNG供給実証試験を実施

8 苫小牧港の脱炭素化 CNP形成計画作り進む 道内初LNG供給実証試験を実施
苫小牧港の脱炭素化の動きが加速する

 国は2020年10月、50年までに温室効果ガスの排出ゼロ(カーボンニュートラル、CN)を目指すと宣言した。日本の物流を支える港湾・臨海部には二酸化炭素を大量に排出する製油所や発電所、鉄鋼、化学工業が多く立地し、苫小牧港も後背地に広大な工業団地を抱える。今年は港の脱炭素化を図るカーボンニュートラルポート(CNP)の実現に向け、実証実験や計画作りが進められた。

   苫小牧港は道内港湾貨物量の約5割を扱う北日本最大の港で、20年には横浜港を抜いて全国3位の取扱貨物量を記録するまでに成長した。寄港する多くの船舶の燃料は今後、従来の重油より温室効果ガスの排出が少ない次世代エネルギーへの転換が求められる。LNG(液化天然ガス)燃料を補給する「LNGバンカリング」拠点を苫小牧港に形成すれば、船舶から排出される二酸化炭素を削減できるだけでなく、船会社がLNG燃料船へと転換した後の継続利用にもつながる。

   苫小牧港管理組合と石油資源開発は19~20年、「苫小牧港LNGバンカリング検討会」を開催。苫小牧港で実施する場合の課題の洗い出しや解決方法の検討、適用法令の確認を進めてきた。今年9月には苫小牧港・西港の北ふ頭3号岸壁で、道内初のLNGバンカリング実証試験を行った。陸側のタンクローリーから商船三井(東京)のLNG燃料タグボート「いしん」(247トン)のタンクへ約5トンの燃料を供給。同管理組合の平沢充成専任副管理者は「作業手順や規制面の整備など多くの成果を得ることができた」と手応えを語る。

   25年には、商船三井フェリーなどが苫小牧―大洗航路にLNG燃料船2隻を就航させる予定。将来的に苫小牧港でのLNGバンカリングの需要拡大が見込まれ、同管理組合などは実証試験で得た知見を生かし、受け入れ体制を構築していく。

   同管理組合と北海道開発局はCNPの実現に向け「苫小牧港CNP形成計画」の策定作業を進めており、9月に骨子を発表した。苫小牧港での二酸化炭素排出量を30年度に13年度比で48%削減し、50年度までにカーボンニュートラルを目指すとしている。10~11月には、次世代エネルギー供給・備蓄拠点などの技術提案を公募し、道内外から6提案を受けた。脱炭素を実現することで港湾周辺への企業誘致を積極的に展開し、就労機会の増加や地域活性化にもつなげたい考えだ。

   同形成計画は近く素案がまとまり、年明けのパブリックコメント(意見公募)を経て今年度中に策定される。平沢専任副管理者は「全国の港湾で脱炭素化に向けた動きが加速している。苫小牧港も立ち遅れることなく進めていきたい」と意欲を見せている。

  (高野玲央奈)

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