3 日本CCS調査(JCCS) 中島(なかじま) 俊朗(としあき) 社長 苫小牧に可能性感じる G7会合をアピールの機会に

3 日本CCS調査(JCCS) 中島(なかじま) 俊朗(としあき) 社長 
苫小牧に可能性感じる G7会合をアピールの機会に

 ―昨年を振り返って。脱炭素社会実現へ二酸化炭素(CO2)を分離、回収、地中にためるCCSが改めて注目された。

   「昨年は国がしっかりCCSを進めると、具体的に出してきた1年だった。苫小牧の実証試験でも『今後の法整備が必要』と課題を認識したが、政府に受け止めていただいた。2030年の社会実装に向け、(23年度から)先進的CCS事業が始まり、早ければこの秋にも新法の成立が期待される。CO2の排出源や貯留する事業者など関係者の目の色も一気に変わった。日本CCS調査も苫小牧の実証設備をカーボンリサイクルに活用できるようメンテナンスを続けている」

   ―JCCSの苫小牧CCS実証試験センターは、19年にCO2目標30万トンの貯留を達成し、CCSが安全に実用化できる技術と証明した。

   「新型コロナウイルス感染拡大後、情報発信を思うようにできなかったが、行動制限がなくなりセンターの視察も増えた。昨年4~12月は208件、1682人を受け入れた。海外からのお客も多く、CCSへの期待や関心の高まりを改めて感じた。今後は国民に理解を深めていただく必要があるが、ここでの活動がより重要になっていく。4月にはG7(先進7カ国首脳会議)気候・エネルギー・環境相会合が札幌市で予定されており、苫小牧をアピールする機会になれば。地元からも要望など声をぜひ上げてほしい」

   ―苫小牧でCCS事業化の可能性をどう見ているか。

   「苫小牧は素晴らしい環境。地元の方に温かく受け入れていただき、ポテンシャルをすごく感じる。市長を先頭にした苫小牧CCUS・ゼロカーボン推進協議会、石油資源開発の産業間連携など検討も進んでいる。CO2の貯留能力も高く、(CCS実証で使用した)萌別の井戸1本だけで約500万トンの余地がある。精査は必要だが、地層地質構造全体で5億トン入る可能性があり、勇払ガス田の有効活用も考えられる」

   「JCCSは全国の貯留適地調査を行っているが、太平洋側の産業集積地付近はいろんな制約があり調査が進んでいない。貯留はどちらかと言えば日本海側で、それゆえに船舶輸送システムも検討している。苫小牧やその周辺はCO2排出源の産業も集約されてコンパクト。CCSやU(有効利用)も加えたCCUSの社会実装モデルになっていく可能性は高い」

   ―21年度から進めるCCUS拠点化実証も、24年度には世界初とされる液化CO2の船舶長距離輸送を始める。

   「昨年5月から苫小牧では先行して受け入れ設備の工事を進め、(昨年12月時点で)進捗(しんちょく)率は20数%。タンクは形になりつつある。3月にも京都府舞鶴市で出荷設備を着工し、24年度の終わりぐらいに船舶輸送が始まる。引き続きいろんな情報発信に努めていきたい」

  メモ 本社東京。国内初の民間CCS技術統合株式会社。2008年5月に石油元売りや石油開発など大手9社で設立した。株主は22年11月現在33社。

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