―昨年を振り返って。
「2022年度は過去最高の生産量、売上高を予定していたが、半導体不足の影響は大きかった。売上高は見通し(昨年12月時点)で約130億円と最高になりそうだが、21年度(過去最高の約122億円)からは思ったよりも増えない。需要はあるが(車両本体工場の停止で)唐突に生産調整するなど、工場を止めることはなかったものの、思うように生産できなかった。電気、ガスなどのエネルギー費も高騰し、収益としては非常に厳しい」
―対策は。
「省エネ活動を推進してきたが、新たにタブレット端末形式の超音波カメラを導入し、エアー漏れを見える化して改善している。従来は生産を止めて工場内を静かにして、ラインだけエアーを流して聞き分けていたが、漏れを発見するのは非常に難しかった。可視化で人間の耳に聞こえない漏れも拾えるようになった。工場中の配管を全部チェックするなど、地道にできることからやり、ロスを最小限に抑えている」
―昨年9月から新たに電動ウオーターポンプ(EWP)の部品、サクションカバーの製造を始め、電動化の向上につなげた。
「新ラインが無事に立ち上がった。(製品納入先の)アイシン東北も同じように新ラインを起こし、(EWPに組み付けて)トヨタ自動車東日本に供給している。当初は月産1万台でスタート予定が、計画よりも多く同2万台とほぼフル生産で始まった。将来は月産約7万台の予定だが、こちらも半導体の状況に左右され、本当に悩ましい。(工場全体で)半導体不足が改善されないと生産を伸ばせず、ぎりぎり最高の更新が続くイメージ。業界全体の状況を見ると当面、それ以上は造れない」
―電動化、カーボンニュートラル(温室効果ガスの排出ゼロ、CN)への対応が急務だ。
「(ハイブリッドシステムの新たな次世代エンジン)第5世代向け部品を生産できるよう準備を始める。こちらも半導体の影響があるため、時期はずれ込むかもしれないが、春には設備を入れて生産体制を整えていく。トライを重ね、ロスをなくし、競争力のある生産現場を構築する」
「EV(電気自動車)の部品生産はまだだが、アイシングループとして電動化の検討を進めており、その中でわれわれの取り組みも決まる。ただ、ガソリン車は急になくならず、(ガソリン車やEVが)100かゼロではない問題。既存の商品、新しい商品いずれも生産性を高めないと、必要とされる会社にならない」
「CNを計画的に進めるため、太陽光発電をPPA(電力販売契約、事業者が太陽光パネルを設置し、同社が電気料金を支払う仕組み)で導入する考えはあるが、グループ全体で検討しており(最終判断まで)もう少し時間が必要だ」
メモ
自動車部品総合メーカー、アイシン(愛知県)の100%子会社。従業員は530人規模で現在、土曜も稼働する2直3班のフル生産を続けている。