―道副知事などを経て、昨年6月に2度目の社長に就任した。これまでを振り返って。
「社会情勢は激変し、脱炭素に大きくかじを切っている。社長1期目(2011年6月~13年3月)後にできた人脈、経験を生かしながら取り組んでいる。苫東(地域)は一つのエリアではなく、北海道をけん引し、国家的な取り組みにもつながっている。地元の皆さまに苫東の動きを知ってもらい、連携、協力しながら進めることが大事」
―前回の社長時代にメガソーラー(大規模太陽光発電設備)誘致などを実現した。今後の展望は。
「苫東はメガソーラー最適地。冷涼で雪が少なく、平坦な土地があり、日射量も多い。バイオマス発電、北海道電力などの水電気分解、水素の利用もこれから。今はカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出ゼロ)がメインだが、苫東は(化石燃料を再生可能エネルギーに転換し、社会経済システムの変革を目指す)グリーントランスフォーメーション(GX)が向いている。立地条件や交通インフラは整っており、GXやサプライチェーンの再構築に貢献できる」
―GXを具体的にどう進めるか。
「企画営業5人でプロジェクトチームを立ち上げて勉強から始めた。現在は中期目標(23~25年度)を策定中だが、GXの流れに乗れるよう足掛かりをつくりたい。豊富な森林資源があるので、利活用できないか調査もしている。間伐材の利用や癒やしの空間など、苫東地域内で演出していきたい。(安平川治水対策の)遊水地整備も着実に進んでおり、野鳥のサンクチュアリ(聖域)のようにもなる。産業と自然の共生は苫東の使命でもある」
―脱炭素実現で水素の利活用も注目される。
「時代の流れを的確に捉えて、積極的な基盤整備を進めないといけない。プライベートバース=苫東埠頭(ふとう)=は石炭中心だが、水素やアンモニアを輸入する流れがあると想定し、受け入れるための設備投資を検討している。(北電や石炭輸入のコールセンターなど)利用する側のゴーサインにすぐ動ける」
―医療などの総合化学業大手カネカ(東京)が進出し、来年5月に柏原で工場を稼働しようと建設工事を進めている。
「カネカ進出が決まってから、いろんな企業の問い合わせがある。物流の拠点など苫東の優位性がかなり理解されてきており、新しい分野が立地する流れに手応えを感じている。柏原地区もかつては需要が見込めず、土地が売れる状況ではなかったが、カネカ進出に遅れることなく進めようと、造成に向けた準備に着手した。(カネカ北側)10ヘクタール以上で昨夏から伐採などをしている。全部ではなく小割で進めると思うが、4、5年後には売れるようにしたい」
メモ 苫小牧東部地域、通称苫東地域で産業用地の造成や分譲などを行う第三セクター。筆頭株主は日本政策投資銀行で、道や苫小牧市、厚真町、安平町などが出資している。