お金の代わりに人の得意なことを運用する「とくいの銀行 白老支店」が19日、白老町大町2のカフェ結で開行した。支店長として「とくい」の登録や引き出し、マッチングなどを担当する店主の田村尚華さん(48)は「どんな得意なことでも交流のきっかけになります」と意気込み、積極的な登録と引き出しを呼び掛けている。
「とくいの銀行」は、「防災知識を楽しく話せる」「陸上で水泳指導ができる」といった自分の「とくい」を登録して預け、誰かが預けた別の「とくい」を引き出して交換する仕組み。各自の得意なことが誰かに「役立つ、助かる、喜ばれる」という体験を生み出し、お金には変えられない価値を交換する機会とコミュニケーションを地域に創出する。
札幌市在住の美術家、深澤孝史さん(37)が2011年3月、アートプロジェクトとして茨城県取手市の井野団地で始めた取り組み。以来、10年以上続いており、「とくいの銀行 井野本店」では現在、約600件もの「とくい」が登録、運用されている。期間限定の支店はこれまで各地に開設され、常設店としては白老支店が本店に次ぎ2店目。
田村さんは、多くの人が気軽に助け合える仕組みを模索していた際に深澤さんと出会った。20年に町内で開かれた飛生芸術祭でのことで、「とくいの銀行」の取り組みを知り意気投合。白老町でも開行しようと準備を進めてきた。2カ月ほど前に町内で「とくい」の登録受け付けを始め、すでに約70人から100件が集まっているという。
19日は開行式と登録者の「とくい」を知ってもらう交流の場「ひきだし」イベントを初めて行った。深澤さん、田村さんら関係者が出席したほか、開行を聞きつけた町民が参加し、店の前でテープカットを行い拍手で開行を祝福。イベントでは、胃カメラを苦しまずに飲める方法や防災知識の解説を聞いたり、ハンドマッサージやレトロゲーム機を使った音楽ライブなどを楽しんだりした。
深澤さんは「みんなの得意が資源になり、交流が広がる場になれば」と笑みを浮かべ、田村さんは「どんな得意なことにも、必要とする人がいる」と銀行をアピールした。「ひきだし」イベントは2カ月に1度のペースで開催する予定だ。
「とくい」の登録や引き出し、登録された「とくい」の閲覧は、支店と町社会福祉協議会で可能。支店の営業時間は午前10時~午後6時。定休日は毎週木曜日(月によって不定休)。問い合わせはカフェ結の田村さん 携帯電話090(5439)4096。