白老町は8日、今年度試験導入したホッケの閉鎖循環型陸上養殖の試験採卵・授精作業内覧会を、町虎杖浜の専用施設で開いた。いぶり中央漁業協同組合の職員や漁業者8人が、元北海道栽培漁業振興公社の技術顧問で町地域おこし協力隊員の川下正己さん(67)らによる採卵と授精の様子を見学した。
卵は9月24日に60グラム、1日に53グラムを採取。この日はさらに雌2匹から計107.5グラムを取り、雄5匹から精子を取り出した。卵は淡い青緑色をしており、受精すると濃い緑褐色に変化するという。
川下さんによると、卵は40日後にふ化し、10センチほどの稚魚を来春までに約1000匹飼育していく計画。「雌の個体が少なく卵が採取できるか不安だったが、確保できた」と安堵(あんど)の表情を見せ、「無事にふ化してくれたら」と語った。採卵と授精作業は15日にも行う予定。
同漁協でスケソウダラ漁などを手掛ける宮下洋一さん(45)=登別市=は「興味があって見学に来た。将来の漁業者の安心と選択肢を広げるためにも事業を軌道に乗せてほしい」と話していた。
町の陸上養殖事業は、高度な水処理技術により海水を陸上の閉鎖空間で循環させて魚を養殖する。魚の安定生産、漁業関係者の所得安定、町独自の水産資源のブランド化を目的に試験導入した。産学官の連携でランニングコストのデータなどを3年かけて収集、分析する。