防衛増税、自民で反対論噴出 「唐突」「雑だ」、年内決定危ぶむ声

防衛増税、自民で反対論噴出
「唐突」「雑だ」、年内決定危ぶむ声

 岸田文雄首相が防衛力強化のため打ち出した1兆円規模の増税方針に対し、自民党内で9日、反対意見が噴出した。首相は増税の対象税目や時期、税率などを年内に決定する方針だが、実現を危ぶむ声が広がる。

   「増税ありきで唐突に無理やり決めようとしている」「1年かけて議論する話だ。プロセスが雑過ぎる」。自民党本部で行われた政調全体会議。怒号が飛び交う中、出席議員の意見表明が約2時間にわたり続いた。

 会議後に説明した松本洋平政調副会長によると、発言した50人強のうち40人程度が反対意見を表明。安定財源を確保するため、年内に増税の道筋を付けることに理解を示したのは十数人だった。

 防衛財源を巡り、首相は8日、2027年度時点で1兆円強を「国民の税で協力をお願いしなければならない」と明言。それまで段階的に税率を引き上げることにも言及した。

   ただ、迅速に結論を出すよう指示された党側には反発も広がる。ある議員は「まとまるとは思えないし、まとめていいような軽い話ではない」と突き放した。

 世耕弘成参院幹事長は9日の記者会見で、歳出改革の徹底や決算剰余金の活用などを最大化する議論が必要だと指摘。「今年、税目や税率を決定できるとは私は考えない」と語った。

 政府内でも、首相が念頭に置くとされる法人税の増税に慎重な意見が上がった。西村康稔経済産業相は会見で「企業が大胆な投資のスイッチを押そうという時に水を差すタイミングの増税は慎重になるべきだ」とくぎを刺した。

 「まずい状況になっている。党政調の理解を得られないと、全部吹き飛んでしまう」。政権幹部からは懸念の声が漏れ始めた。