新型コロナウイルスの感染が爆発的に拡大している中国を対象に、新たな水際対策を講じる動きが広がっている。日本やイタリアは中国からの渡航者に対する入国時検査の実施を決定。米国も入国に際しウイルスの陰性証明の提示を義務付ける。背景には、中国で大量の感染が起きる間に変異ウイルスが発生し、このウイルスが自国に流入するかもしれないという危機感がある。
中国政府は26日、来年1月8日から入国時の隔離措置を撤廃するとともに、国民の外国旅行を「秩序をもって再開させる」と発表した。国内の規制緩和に加え、外国との往来を正常化させる意図を明確にした形だ。
しかし日本などは、徹底したコロナ封じ込めを図った「ゼロコロナ」終結に伴う感染爆発を警戒している。米保健当局者は「中国で新たな変異ウイルスが出現しかねないと懸念している」と表明。国内の検査数減少などに伴い中国当局が開示するデータは不十分で、感染の実態把握が難しくなっているとも指摘した。
AFP通信などによると、日米伊に加え、台湾やインドが中国からの渡航に対し新たな規制措置を講じると発表している。イタリアのメローニ首相は、経由便で入国する例を考慮すれば、イタリアだけでなく欧州全体で対策を取らなければ実効性に乏しいとの見解を示した。
メローニ氏が率いる極右与党「イタリアの同胞(FDI)」は、経済活動を阻害するとして欧州連合(EU)によるコロナ規制に反対するなどし、9月の総選挙で勝利した。中国の感染状況の悪化が、姿勢の変化をもたらしたことになる。
ただ、規制が一気に拡大するかどうかは不透明だ。AFPによれば、EUの欧州疾病予防管理センター(ECDC)は29日の声明で、EU域内では集団免疫が十分に達成されており、EUとして中国からの渡航者に新たな措置を課すことは「不当だ」との見解を示した。 英政府の報道官も、入国時検査を再導入する計画はないと述べた。(時事)