第211通常国会が23日召集され、岸田文雄首相が衆参両院本会議で施政方針演説に臨んだ。少子化対策を最重要課題に掲げ、「出生率を反転させなければならない」と決意を表明。防衛費増額に伴う安定財源の確保については「先送りせず、今を生きるわれわれが将来世代への責任として対応する」と訴えた。
首相は演説で、昨年の出生数が80万人を割り込むことが予想されるとし、「社会機能を維持できるかどうかの瀬戸際」と危機感を表明。年齢や性別を問わず社会全体が関わる「次元の異なる少子化対策」を実現するとして、6月までに予算倍増に向けた大枠を示す考えを示した。財源については「各種の社会保険との関係、国と地方の役割、高等教育の支援の在り方などさまざまな工夫をする」と説明した。
防衛力の抜本的強化については、2027年度までの5年間で43兆円の予算を確保し、反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有や南西地域の防衛体制の整備などに取り組むと表明。「安全保障政策の大転換だが、憲法や国際法の範囲内で行う」と強調した。財源は歳出改革など行財政改革に努めるとしつつ、不足分については「増税」といった表現を避けた。
新しい資本主義に関しては、分配で消費が伸び経済成長につながる「好循環」のかぎが賃上げだと指摘。中小企業や政府調達参加企業の賃上げに意欲を示した。6月までに日本型職務給の導入モデルを示し、「新しい資本主義を次の段階に進めたい」と語った。
原発政策を巡っては、従来方針を転換し、廃炉となる原発の次世代革新炉への建て替えや、運転期間の延長を進める方針を打ち出した。
新型コロナウイルス対応では「第8波を乗り越えるべく全力を尽くす」と表明。感染症法上の位置付けを春に「5類」へ引き下げる方向で検討し、マスク着用ルールについても見直す意向を明らかにした。
首相は5月に地元広島で開く先進7カ国首脳会議(G7サミット)に触れ、「『核兵器のない世界』へ国際的な取り組みを主導する」と宣言。インド、アフリカなど「グローバルサウス」への関与強化もうたった。
一方、憲法改正については「制定以来初めてとなる改憲」に向けた議論進展に期待を表明。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)や「政治とカネ」の問題では再発防止を約束した。
会期は6月21日までの150日間で、25日から各党代表質問が始まる。