【ベルリン時事】ドイツ政府は25日、独製主力戦車「レオパルト2」をウクライナに供与すると発表した。他国による供与も認める。報道によると、米国もこれに合わせて戦車「エイブラムス」を提供する方向で検討しており、早ければ25日にも発表する見通し。決定されれば、ウクライナ支援で大規模な「戦車連合」形成につながる。ロシアの反発は必至で、攻防の激化は避けられない。
独政府は声明で、レオパルト2を保有する他国と合わせて「2個の戦車大隊」編成を目指すと表明。独メディアによれば、計台程度の規模が想定されている。ショルツ首相は「(支援国が)緊密に協力することが正しい。これからもそうする」と強調した。
ドイツは第1弾として14台を供与。これとは別にポーランドが、自国保有の14台をウクライナへ引き渡す手続きに入っている。フィンランドやオランダ、スペインなども追随する姿勢。製造国ドイツが供与を認めたことで、こうした動きがさらに広がりそうだ。
米国からはエイブラムス数十台が送られる可能性がある。バイデン米大統領は25日(日本時間26日未明)、ウクライナ支援に関し演説する。英国は既に戦車「チャレンジャー2」14台の供与を決め、フランスでも戦車「ルクレール」供与の可能性が取り沙汰されている。いずれもウクライナ兵の習熟訓練や整備に時間が必要で、実際に戦地へ配備されるまでは数カ月を要する見込み。
領土奪還を目指すウクライナは、ロシアによる大規模な攻勢に警戒感を高め、欧米諸国に戦車供与を強く要望してきた。ゼレンスキー大統領は通信アプリ「テレグラム」で、ショルツ氏と電話したと明かし、「重要で時宜を得た決定を聞いた。心から感謝する」と歓迎した。
欧米製の主力戦車は地上戦で敵陣を突破する破壊力を持ち、こう着が続く前線で大きな威力を発揮すると期待されている。とりわけレオパルト2は「最も成功したモデル」(英シンクタンク)と評され、欧州諸国が計約2000台を保有。部品の調達も容易で、ウクライナ軍には最適と見なされてきた。
強力な兵器は戦況への影響が大きいことから、ドイツは北大西洋条約機構(NATO)とロシアの全面衝突につながりかねないと警戒し、単独での供与決定に慎重だった。ショルツ氏はレオパルト供与の条件として、米国によるエイブラムス提供を挙げたとされる。ロシアをけん制するため、米国を巻き込む狙いがあったもようだ。
米国側は当初、エイブラムスの運用コストや取り扱いの難しさを理由に「提供する意味がない」(国防総省)と難色を示してきた。しかし、ドイツが決定を先延ばしする中、提供が必要との見方が米国内でも広がり、両国間で協議が続いていた。