(12) 繁殖馬に復帰 ステッペンウルフ 産駒”ゼロアワー”躍動で注目 血統が紡ぐ「物語」も魅力

種付けシーズンを終え、日高町新生ファームで元気に過ごすステッペンウルフ

 10月に入ると、種牡馬の今年の種付け(牝馬との交配)頭数が、競走馬の総合商社や繋養するスタリオンなどから公表される。血統や自身の競走成績、あるいは産駒の走りによる種牡馬としての実績などが評価基準となって人気馬は200頭を超える種付けをこなしている。一方で10頭に満たない馬もいる。門別競馬場で開催されているホッカイドウ競馬で今年、たった1頭の産駒が活躍し、その父が3年ぶりに種牡馬に復帰した。

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   現在、種牡馬登録されているサラブレッドは約270頭で、繁殖牝馬は約1万2000頭。あくまで仮で平均を算出すると、種牡馬1頭につき牝馬は44頭という計算になる。もちろん現実は、成績によって種付け料も違えば、交配頭数にも差が出るのが、優勝劣敗と言われる種牡馬の世界だ。

   ホッカイドウ競馬で今季、1頭の産駒が活躍しその名が広く知られた種牡馬がステッペンウルフ(8歳)。産駒ゼロアワー(牝2歳、佐々木国明厩舎、日高町・新生ファーム生産)がデビュー戦となった5月のフレッシュチャレンジ競走を8馬身差で圧勝し、8月にフルールカップ、9月にフローラルカップと重賞2連勝を果たした。

   父ステッペンウルフは競走馬としてホッカイドウと南関東で12戦5勝し、大井競馬で重賞京浜盃を勝つなど活躍した。血統面も評価され2021年に種牡馬入りし、その年1頭に種付けをして、翌22年に誕生したのがゼロアワー。ただ、厳しい種牡馬の世界にあって、22、23年と種付けは行わずにいた。復帰への道が開けたのは関係者の馬への強い思いにほかならない。ステッペンウルフを現役時から所有しゼロアワーの生産者兼馬主でもある新生ファームの木村敬生代表は「競走馬として走ってくれたし、子供を残してあげてもいいかなと思って。オーナーブリーダー(生産者兼馬主)だからできたのもあります」と話す。

   今年、ステッペンウルフは4頭に種付けを行った。「他の牧場さんからも申し込みを頂きました」と木村代表。ゼロアワーのデビューは5月15日、種付けシーズンも終盤に入りかけていた時期で「来年は種付け数も増えるのではと思っています」と言う。ゼロアワーの出走レースは、24日門別での重賞ブロッサムカップ。この原稿を執筆している時点では結果は分からないが、今後も含め活躍を期待したい。

  (フリーライター・大滝貴由樹)

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