弾き語りサークル「VEGA」代表 長縄 弘美さん(72) 音楽の力で喜び与える 定年退職後再び手にしたギター 仲間と演奏励む

「音楽を通して輪が広がっていくのが素晴らしい」と語る長縄さん

 泉谷しげるの「春夏秋冬」、井上陽水の「神無月にかこまれて」―など好きなフォークソング3曲を苫小牧市文化交流センターの多目的ホールのステージから、ギターの弾き語りで披露した。9月、地元のミュージシャン・シャイポール久保田さん(63)が主催した音楽イベントに出演した際の一幕。この中で陽水の「東へ西へ」も歌い、聴かせどころの「ガンバレ、みんなガンバレ」のフレーズが会場に響きわたった。

   穂別村(現・むかわ町)出身で農家の長男だったが、穂別高校を卒業後、日本電信電話公社(通称電電公社、現NTT)の苫小牧市内の支店に就職した。職場の同僚がバンドを組んでいた縁で初めてエレキギターを購入し、バンドに参加した。

   当時は、職場のレクリエーションで頻繁にあったダンスパーティーが発表の場だった。「市内にあったダンスホールにも行き、どんな曲がはやっているかを調べたり、盛り上げるために曲の順番も工夫したりした」と回顧する。最初は踊り出せなかった参加者たちが次第に曲に合わせて体を自然に揺らし、表情が笑顔に変わっていく様子を見て音楽の力を感じたという。

   バンドでは主に歌謡曲を演奏していたが、自分が好きだったのは、陽水や吉田拓郎などの1960、70年代のフォークソング。「苫小牧市民会館で聴いた(フォークグループの)五つの赤い風船のコンサートが素晴らしくて」ときっかけを懐かしみ、一人でフォークギターを練習していた。

   バンドは職場の配置転換で3年ほどで自然消滅。それから39歳で西サモア(現サモア)に単身赴任し、2年余り、現地の通信設備の技術指導に当たった。帰国後も帯広、札幌と転勤が続き、忙しい日々を送る中、ギターを手に取ることもほどんどなくなっていた。

   定年退職から2年後の62歳の時、市文化会館で弾き語り教室の貼り紙を見つけ、再び音楽を始めようと決意。通った教室の講師がシャイポール久保田さんだった。彼が立ち上げたVEGAの存在も知り、2019年からメンバーの中で最年長者として代表を任されている。「ギターを再開した当初は手が動かなくて大変だった。週1回の教室だけでは足りなくて、カラオケボックスに行き、自主練習を重ねた」と笑う。

   VEGAは市内を中心に現在10人が所属し、平均年齢65歳ほど。コロナ禍を経て、昨年から地域のイベントにも積極的に参加。今年はさらに、人前で演奏する機会は増えた。VEGAのメンバーとのアンサンブルでは、5年ほど前から始めた打楽器のカホンで支えている。「音楽は一生続けたい。自分だけでなく、演奏を聴いてくれた人に喜んでもらえるのも、やりがいになっている」

  (河村俊之)

  ◇◆ プロフィル ◇◆

   長縄弘美(ながなわ・ひろみ) 1952年2月、穂別村(現・むかわ町)生まれ。62歳から始めた太極拳は今も続けている。心身を鍛えながら音楽活動も長く続け、人生を謳歌(おうか)できたら、と願っている。苫小牧市山手町在住。

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