• (2)顔の表現
    (2)顔の表現

       日本列島で人を模した遺物が登場するのは縄文時代草創期だが、範囲はごく一部に限られる。古い時代の土偶は顔がないか、顔面が表現されていないものが多く、顔面表現を忌避していたと考えられる。  北海道では縄文時代中期(約5000年前)から東北地方北部と北海道に広がった円筒式土器に伴って板状の土偶が広

    • 2023年8月17日
  • 縄文と現代をつなぐ美術と考古(1)龍虎と共に描かれた土偶
    縄文と現代をつなぐ美術と考古(1)龍虎と共に描かれた土偶

       苫小牧市美術博物館は9月3日まで、特別展「縄文と現代~共鳴する美のかたち」を開いている。開館10周年や同市と青森県八戸市が結んだ交流連携協定「はちとまネットワーク」5周年を記念した企画で、絵画から土器まで200点以上を展示。美術、考古の各担当学芸員が4回にわたって解説する。       ◇

    • 2023年8月16日
  • (下) にじみ出る精神世界-渡辺貞一
    (下) にじみ出る精神世界-渡辺貞一

       青森市生まれの渡辺貞一(1917~81)は、48年の苫小牧での個展を皮切りに53年および62年に室蘭、64年には旭川で個展を開催。晩年に近い76年、77年、79年と立て続けに再び苫小牧で個展を開催するなど、北海道ないし当地にもゆかりのある画家といえる。  生来、病弱だったという渡辺は入退院を

    • 2023年5月31日
  • (中)美たたえる風景画-鹿毛正三
    (中)美たたえる風景画-鹿毛正三

       白い雲の合間からのぞく青空の下、なだらかに曲線を描く山容が遠景に広がる。近景の色鮮やかな紅葉は、その山をたたえる観衆のようにも映る。清新な色調と堂々たる構図、細やかな筆致による、光と空間の感覚を内に含む印象派風の画風からは、素朴なまなざしのままに自然美をたたえようとする画家の息遣いが聞こえてくるよ

    • 2023年5月30日
  • (上)自然へ抱く畏敬の念-遠藤ミマン
    (上)自然へ抱く畏敬の念-遠藤ミマン

       苫小牧市美術博物館は6月25日まで、「美術所蔵名品選 風景画×静物画編」の企画展を開いている。四季折々の自然や身近な果物、調度品を描いた油彩画、木版画など99点展示。遠藤ミマン、鹿毛正三、渡辺貞一の作品を担当学芸員が3回にわたって解説する。      ◇  道央圏南部に広が

    • 2023年5月29日
  • 能登正智展(下)
苫小牧近郊が舞台の版画集
    能登正智展(下) 苫小牧近郊が舞台の版画集

       能登正智の多彩な制作のうち、後年特に力を入れていたのが版画集の制作です。画に加えて文字も自刻自刷で、製本も自身で手掛けた丁寧な作りが魅力です。  王子製紙を定年退職後、道央佐藤病院で絵画による作業療法の活動に携わっていた能登は、かねて念願であった版画集作りに取り組むことを考え始めたといいます

    • 2023年3月3日
  • 能登正智展(中)
ガラス絵ならでは 多様な表現
    能登正智展(中) ガラス絵ならでは 多様な表現

       本展では、8点のガラス絵を展示しています。ガラス絵は、透明なガラスの裏面に直接絵の具を載せて描いた作品で、艶やかで宝石のような輝きを放ち、独特の魅力があります。一般的な絵画とは異なり、最初に描いた線や色が表面に見え、最後に載せた色が背面や奥行きを作り出します。  展示作品では、始めに色を載せ

    • 2023年3月1日
  • 能登正智展(上)
 独特な色彩「能登ブルー」
    能登正智展(上) 独特な色彩「能登ブルー」

       苫小牧市美術博物館は3月12日まで、苫小牧を拠点に活動した画家能登正智(のとまさとし)氏(1922~2001年)の企画展を開いている。生誕100年を記念し、約130点を展示。太古の世界を想像力豊かに表現した油彩画や木版画、ガラス絵の力作を担当学芸員が3回にわたって解説する。      ◇

    • 2023年2月27日
  • 「あみゅー大博覧会」より
(5) 約800点の昆虫標本
    「あみゅー大博覧会」より (5) 約800点の昆虫標本

       最後の回は、1930年代に苫小牧で採集された約800点の昆虫の標本をご紹介します。苫小牧の昆虫標本は当館だけではなく、道内外の幾つかの博物館でも収蔵されていますが、その中でも最も古いものの一つです。  標本の価値を高めているのが、標本を刺している針に付いている紙のラベルです。ラベルはその昆虫

    • 2023年1月5日
  • 「あみゅー大博覧会」より
(4)静川22遺跡のニシン椎骨
    「あみゅー大博覧会」より (4)静川22遺跡のニシン椎骨

       苫小牧市美術博物館の考古学の収蔵庫には、苫小牧市内にある311カ所の遺跡から出土した資料数万点が収蔵されています。土器や石器のほか、数ミリほどの小さい動物骨など多様で、そのすべてが数千年前の苫小牧にいた人々の暮らしを物語るものです。  今回の企画展の資料の中から、「学芸員お気に入りの資料」コ

    • 2022年12月29日
  • 「あみゅー大博覧会」より
(3)ハエ取り器「ハイトリック」
    「あみゅー大博覧会」より (3)ハエ取り器「ハイトリック」

       ちょっと変わった歴史資料を紹介します。  昔(50年くらい前まで)は、今と比べて公衆衛生がそれほど整備されていませんでした。また、牛馬やニワトリなどの家畜を飼育する家が多く、日常生活においてハエはとても身近な存在でした。  ハエ取り器「ハイトリック」は、生きたままハエを捕獲できるぜんま

    • 2022年12月28日
  • 「あみゅー大博覧会」より
(2)ミートコロッケの食品サンプル
    「あみゅー大博覧会」より (2)ミートコロッケの食品サンプル

       美術の分野からは、「エピソードのある資料」コーナーで展示中の作品を紹介します。この絵の直接のモチーフになっているのは、2019年に当館で開催した特別展「第一洋食店の100年と苫小牧」の際に歴史資料として製作したミートコロッケの食品サンプルです。その料理の写真は、展覧会の印刷物や看板などのメインビジ

    • 2022年12月27日
  • 「あみゅー大博覧会」より 
(1)資料の収集方法
    「あみゅー大博覧会」より (1)資料の収集方法

       苫小牧市美術博物館は1月15日まで、企画展「あみゅー大博覧会」を開催している。1985年に苫小牧市博物館として開館以来集めてきた約14万点の資料の中から美術、歴史、考古、自然史の各分野の学芸員えりすぐりの約100点を並べている。学芸員が5回にわたり、展示品などについて紹介する。       

    • 2022年12月26日
  • 珍しい収蔵品ずらり
苫小牧市美術博物館
    珍しい収蔵品ずらり 苫小牧市美術博物館

       苫小牧市美術博物館で集められていた「収蔵品」の一部が 展示されています。学芸員選りすぐりの約100点。歴史や美術品、 昆虫まで幅広く、興味深いものばかりが並んでいます。

    • 2022年12月15日
  • 谷内六郎展 壁画設置50年記念
(下) 子ども時代の記憶を絵に
    谷内六郎展 壁画設置50年記念 (下) 子ども時代の記憶を絵に

       谷内六郎の描く作品のほとんどは、子どもが主人公です。谷内は、病床で過ごすことの多かった子ども時代の記憶、感覚が描く絵の素(もと)になっているといい、心の中で幻燈に映すようにして絵にしてきたと語っています。(谷内六郎「私の絵の世界」『幼ごころの歌』1969年、新潮社、115ページ)  また、6

    • 2022年10月27日
  • 心の景色呼び起こし(中)
    心の景色呼び起こし(中)

        谷内六郎の描く風景の中には、さまざまな楽器が登場します。季節の訪れを奏でる楽器たちは、「まるで楽器のように」ではなく、「まさしく楽器」として描かれています。絵の中の景色は現実にはあり得ない光景であるはずなのに、無理なく受け入れることができるのはなぜでしょう。 作家の橋本治は、谷内六郎の作品に

    • 2022年10月26日
  • 谷内六郎展 壁画設置50年記念
(上) 春の音色が聞こえてくる壁画
    谷内六郎展 壁画設置50年記念 (上) 春の音色が聞こえてくる壁画

       苫小牧市美術博物館は11月6日まで、特別展「壁画〈芽の出る音〉設置50年記念 谷内六郎展」を開催している。画家谷内六郎の存在が広く知られるきっかけになった「週刊新潮」の表紙原画50点のほか、来苫した際に描いた絵など約60点を展示中。担当学芸員が3回にわたって作品の特徴などを解説する。    

    • 2022年10月25日
  • ウィーン世紀末の巨匠たち(下)
色彩、タッチで感情表出
    ウィーン世紀末の巨匠たち(下) 色彩、タッチで感情表出

       1918年3月に開催された、第49回ウィーン分離派展では、メイン・ルームにエゴン・シーレの19点の油彩画と30点の紙作品が展示された。画面下部の3分の1を占める文字は、シーレと共にクリムトの次の世代の画家として活躍した、表現主義的な作風を展開したオスカー・ココシュカの影響を指摘できる。両者に共通す

    • 2022年8月20日
  • ウィーン世紀末の巨匠たち(中)
独自の境地示す筆触
    ウィーン世紀末の巨匠たち(中) 独自の境地示す筆触

       ウィーンを代表する巨匠としてクリムトと並び称されるエゴン・シーレであるが、その画業の初期には、黄金を用いた装飾的なクリムトの作品を意識し、自らを「銀のクリムト」と称していたという。  本作でモデルを務めたカール・グリュンヴァルトは、第1次大戦期の1915年にシーレが徴兵されてプラハに入営した

    • 2022年8月19日
  • ウィーン世紀末の巨匠たち(上)
絵画に工芸的な装飾
    ウィーン世紀末の巨匠たち(上) 絵画に工芸的な装飾

       苫小牧市美術博物館では28日まで、特別展「芸術の都ウィーンとデザインの潮流」が開かれている。19世紀から20世紀初頭にかけて活躍したウィーン分離派の作品や芸術運動の影響を受けてデザインされた工芸品などを展示している。担当学芸員がウィーンの巨匠と呼ばれる画家グスタフ・クリムトとエゴン・シーレの作品に

    • 2022年8月18日
  • トヨタ自動車北海道創業30年記念特別展
    トヨタ自動車北海道創業30年記念特別展

       トヨタ自動車北海道創業30周年を記念した特別展が 苫小牧市美術博物館で開かれています。 油彩絵など64点が展示されていますが、代表作を同美術館の 細矢久人学芸員に特徴などを説明してもらいました。

    • 2022年8月9日
  • (中庭展示・下) 繰り返す大地の変化を追体験
    (中庭展示・下) 繰り返す大地の変化を追体験

       無数の木々の幹に青色の線が、一定の高さを保ちながら配されている。作者の川上りえによると、その水平線は、遠い昔にかつてそこにあったかもしれない架空の水面を視覚化したものだという。生い茂る草木やそれを育む大地が形成した複雑な自然の表情と、作者の手により挿入された人為的な水平線という両者のコントラストは

    • 2022年6月24日
  • (中庭展示・中) 「揺らぎ」が発する「正義」への問い
    (中庭展示・中) 「揺らぎ」が発する「正義」への問い

       前回紹介した川上りえの新作と同様の題名を持ち、類似した構造を持つ本作は、札幌市資料館において2010年に発表された。同館が元来、当時の高等裁判所に当たる控訴院であったこともあり、川上は「正義」をテーマとして設定することで、その場所に基づいた展示を試みた。本作が「てんびん」を連想させる形状を持つこと

    • 2022年6月23日
  • (中庭展示・上) 不均衡構造に加わる外的要因
    (中庭展示・上) 不均衡構造に加わる外的要因

       苫小牧市美術博物館の今年度の中庭展示は、石狩市在住の美術家川上りえさん(60)が手掛けた5方向に分岐するてんびん。ステンレス製のてんびんは幅最大約5メートル、重量100キロ超の大作だ。担当学芸員が来年3月まで展示される同作品のほか、川上さんの過去の作品について、独自の考察を交えながら3回にわたって

    • 2022年6月17日
  • (動物の絵)身近な姿を個性豊かに
    (動物の絵)身近な姿を個性豊かに

       苫小牧市美術博物館は26日まで、収蔵品展「動物の絵」を開催している。同展では、収蔵美術作品の中から動物が描かれた絵画12点を展示している。担当学芸員が作品の特徴などを解説する。        ◇  動物の姿は人々の想像力を広げる題材として、古くから世界中の美術作品の中で表現されてきた。

    • 2022年6月9日
  • (アイヌ刀・下) 墓の副葬品で多く出土
(動画あり)
    (アイヌ刀・下) 墓の副葬品で多く出土 (動画あり)

       アイヌ刀は民族資料として博物館等に収められているもののほかに、遺跡からも多く出土します。遺跡から出土する場合、多くはお墓の副葬品として出土します。  弘前大学の関根達人教授による分析では、全体の4割弱のお墓から出土しており、男性に限ると6割、女性でも1割強で刀が副葬されています。これは世界中

    • 2022年5月25日
  • (アイヌ刀・中) 魔を払う道具や宝物として
    (アイヌ刀・中) 魔を払う道具や宝物として

       エムシは刀身を和人から交易などで入手します。この時にほとんどの刀身は刃をつぶしたり、そもそも刃が付いていない刀身となります。これは松前藩などの和人側がアイヌに武器となり得る刀が渡らないようにしたためです。また、アイヌ刀の刀身の多くがさびているのは、刃が光っていると魔物がその光を見て体をかわしてしま

    • 2022年5月24日
  • (アイヌ刀・上) 闘争目的ではない3種の刀
    (アイヌ刀・上) 闘争目的ではない3種の刀

       苫小牧市美術博物館は6月26日まで、企画展「アイヌ刀 エムシ・タンネプイコロ・タクネプイコロ」を開催している。担当学芸員がアイヌ刀の種類や用途について3回にわたって解説する。      ◇  アイヌ刀は蝦夷刀(えぞとう)とも呼ばれ、アイヌが持っている刀の総称です。ただ、一口にアイヌ刀と

    • 2022年5月23日
  • (4) 緊張感と解放感が同居 山脇克彦(1968~)
    (4) 緊張感と解放感が同居 山脇克彦(1968~)

       大阪市生まれの構造家・山脇克彦(1968~)は、組織設計事務所所属時に高層建築から中小規模木造建築、文化財耐震補強設計と多様な実績を残した後、2015年に札幌市内にて独立、自身の事務所を立ち上げる。建築における骨組みともいえる構造設計を基盤としながら、風土に根差した木造建築を多彩な架構システムによ

    • 2022年2月16日
  • (3) 「沙流川アート館」の日々 こだまみわこ(1963~)
    (3) 「沙流川アート館」の日々 こだまみわこ(1963~)

       北見市に生まれたこだまみわこ(1963~)は、91年より平取町に移り住み、旧川向小学校「沙流川アート館」の運営と、この場所での制作を続けている。「沙流川アート館」は共同アトリエ、展示、絵画教室が行われる地域のアートセンタ―で、市街地から沙流川を上流に進み、競走馬の牧場が広がる小高い所に立地する。こ

    • 2022年2月12日