Q…ウトナイ湖へハクチョウを見に行くと、小さくてきれいなカモメがいました。何というカモメですか?
A…ユリカモメだと思います。
ユリカモメは体長40センチほどの小さなカモメで、秋になると繁殖地のカムチャツカ半島などから飛来し、北海道を中継地にして本州以南に南下する旅鳥です。なので、秋と春にしか見られません。
ユリカモメの成鳥は、繁殖期になると脚やくちばしが鮮やかな赤い色になり美しいことから、「万葉集」や「伊勢物語」には都鳥(ミヤコドリ)という名前で登場します。ユリカモメという名前は、体の色が白いユリの花のように美しいことに由来するという説があります。ちなみにミヤコドリという野鳥が別種として実在しています。
鳥類には繁殖期と非繁殖期で羽やくちばし、脚などの色が変わる種類がいて、繁殖期のものを夏羽、非繁殖期のものを冬羽と言います。ユリカモメの夏羽は頭部から喉が濃い黒褐色で眼の周りは白く縁取られますが、冬羽は頭部からおなかにかけて白く、頬に黒い模様があり、くちばしは赤くて先端のみが黒っぽくなります。ユリカモメの夏羽が見られるのは繁殖地へ北上する春で、冬羽から美しい夏羽に変わって行く様子を見ることができます。英名の「Black headed Gull」は夏羽の色から来ています。
(文とイラスト 自然誌研究家〈ゆうふつ原野自然情報センター主宰〉村井雅之)=随時掲載