苫小牧東部地域の産業用地を造成、分譲する株式会社苫東(辻泰弘社長)。今年はちょうど創立から25年の節目を迎える。破綻した旧会社から、「新生苫東」として成長した一つにリサイクル産業の流れが強く後押しした。
2013年。資源リサイクル産業の積極的導入を目指し、その基本的な考え方を示す「苫東地域循環産業拠点形成構想」が策定された。苫東は苫小牧港の東西両港に近く、密集する住宅地からは遠い。広大な用地を抱えることは「逆に拡張用地があるということ。リサイクル産業は点在しているケースが多いが、集積させていくメリットがある」(辻社長)と指摘する。
リサイクル産業というと「廃棄物」のイメージが先行するが、辻社長は「分別すると資源になることが前提になった。サーキュラーエコノミー(循環経済)であり、SDGs(持続可能な開発目標)の発想にもつながる」と話す。
苫東で先鞭(せんべん)をつけたのは、東港臨海部に進出したサニックスエナジー。世界にも例がない廃プラスチック専焼のボイラーによる資源循環型発電システムを導入した。同じく臨海部では総合リサイクル業のマテック、医療系産業廃棄物処理の空知興産、産業廃棄物処理のC&Rが続いた。
柏原地区では、使用済み家庭電化製品のリサイクル処理を行う北海道エコリサイクルシステムズが操業。プラスチック容器類を再生樹脂に加工する明円工業も立地し、家庭から出るごみを資源化している。北海道ダイキアルミは、自動車部品にも利用されるアルミのリサイクルだ。このように、苫東は幅広い産業が立地しているのも特徴だ。
こうしたリサイクル関連の引き合いは多く、辻社長は「(企業は)これからもリサイクルをセットに考えていく時代だ。主軸の一つになる」と話し、苫東が循環経済の受け皿として成長していく見通しを強調する。
リサイクル産業が集積する理由の一つに、物流の利便性は欠かせない。東港には、日本海航路を持つ新日本海フェリーが就航する。近接する西港に目を転じれば、フェリーの太平洋航路が集約する。船舶によるルートだけを見ても「系列が一本では大変だが、代替のルートが確立されているのは大きい」(辻社長)と指摘する。
さらに東港は国際コンテナターミナルを要する。経済が活発な東アジア圏と国際航路を開設。4基のガントリークレーンが並び、コンテナを荷役する姿は北の玄関口そのものだ。
陸路も道央自動車道のIC(インターチェンジ)、高規格道路の日高自動車につながる。JR貨物苫小牧貨物駅までわずか9キロ。新千歳空港も20分程度の距離だ。
まさに陸海空の交通の要衝であり、「物流の複線化には苫東が大変便利」(辻社長)な立地環境がある。こうした優位な状況が企業の進出を後押ししてきた。物流関連での代表例はスズキグループの部品センター苫小牧の新設(2022年稼働)。新車の納車整備を一括して行う納整センターも建設された。
コメリグループは全国で10番目となる大型流通センターを開設(18年稼働)。ここから全道のホームセンター「コメリ」に商品を運んでいく拠点で、商品流通の要。コメリはコンテナとフェリー、二つの系列で運ぶ。苫小牧港の機能を存分に生かしている。