◇4 津波への備え課題 災害時、公助の役割重要に

◇4 津波への備え課題 災害時、公助の役割重要に
イオンモール苫小牧の屋上駐車場で初めて行われた津波避難訓練。市民の防災への関心は高い

 「防災への関心は高まっているように思う」―。苫小牧市危機管理室の職員は6日、イオンモール苫小牧の屋上駐車場で初めて行った津波避難訓練を見て、そう実感した。事前に地域の明野柳町内会に避難者役の協力を打診した上、「参加自由」と広報したところ、他地域の住民や同店の従業員も含めて約90人が参加。想定を上回った。

   参加者は幼児を連れた家族連れや高齢者のグループ、足の不自由な人などさまざま。同町内会の鈴木俊文会長(75)も「商業施設が協力してくれるのは住民として心強い。毎年のように全国でも災害があるので、参加者が増えたのでは」と指摘。同商業施設も「今後も協力したい」と前向きな姿勢を見せる。

   防災をテーマにした市出前講座への依頼は近年、コロナ禍を経て急増している。同室によると、2023年度は前年度比24件増の72件で、今年度の開催件数は9月末時点で43件を数え、担当職員は「昨年度を上回る勢い」と明かす。

     ◇

   石破茂首相は自民党の総裁選で「災害大国で専門の官庁がないのは異常だ」と主張。4日の衆参両院本会議で所信表明演説に臨み、新たに「防災庁」の設置準備を急ぐ考えを示した。防災・減災対策の抜本的強化は、言うまでもなく待ったなしだ。

   国内では地震、津波の脅威に加え、風水害も激甚化。石川県では1月に能登半島地震、9月に豪雨と大規模災害が相次ぎ、土砂崩れの爪痕が深く刻まれ、多くの建物が倒壊したまま。復旧が思うように進まず、国や地方自治体が担う公助の役割に注目が集まる。

   東日本大震災など過去の災害を教訓に、将来を見据えた対応も一層、問われている。苫小牧市では、道が21年に公表した浸水想定で、大津波による浸水域が拡大し、地域によっては住民が逃げ遅れる課題が浮上している。

   市は勇払とときわの両地区を、津波避難対策の重点地域に定めた。勇払地区では公民館を改修して避難機能を強化し、錦糸・ときわ地区では津波避難施設を新設する案を示している。いずれも整備費用が莫大なため、市は国の補助制度を当てにするが、先行する他自治体では補助が要望を下回るケースも発生している。

   ただ、市を含めた太平洋沿岸の道内39市町は、国の「津波避難対策特別強化地域」に指定され、巨大地震に係る津波への備えが喫緊の課題。ときわ町内会の小山征三会長(68)は「防災は国がリーダーシップを発揮しないと動かないところもある。これだけ各地で災害が起きているのだから、スピード感を持って対応してほしい」と願う。(終わり)

   ※この企画は、報道部・石川鉄也、藤岡純也、姉歯百合子、河村俊之が担当しました。