• 「美土里倶楽部」/村田喜代子著/夫婦の不思議を思う
    「美土里倶楽部」/村田喜代子著/夫婦の不思議を思う

       「夫婦グセ」という言葉を聞いて、本書の主人公、美土里はハッとする。長年連れ添った夫を亡くしたばかり。夫恋しい、肌恋しいと泣き暮らしていた自分を「夫婦グセの重症」だと自覚する。 そんな美土里が未亡人仲間を得て、夫婦の不思議を思い、生と死についての考察を繰り広げる約1年半の物語である。 未亡人俱楽

    • 2025年6月3日
  • 「新版いくさ世を生きて」/真尾悦子著
    「新版いくさ世を生きて」/真尾悦子著

       凄惨(せいさん)な沖縄戦の戦場を逃げ惑い、辛うじて生き延びた住民の女性たちの証言を伝えるルポルタージュ。記録作家が終戦から30年余りたって聞き取った体験談は鮮明だ。飢えに苦しみ、撃たれ、友軍にもおびえた逃避行の情景と、占領下に横行した性暴力の実相が浮かび、トラウマの深刻さにも胸を締め付けられる。

    • 2025年6月3日
  • 善悪を問うファンタジー/「皇后の碧」を書いた/阿部智里さん
    善悪を問うファンタジー/「皇后の碧」を書いた/阿部智里さん

       「読んだ人の中に何かが残る作品を書きたい」と話す阿部智里さん=東京都新宿区 緻密に構築したファンタジー世界と多様なキャラクターが人気の作家、阿部智里さんが最新作「皇后の碧(みどり)」を刊行した。「今を生きる中でこんなことがあるよね、でもこの主張ってこんな見方もできるよね、という『視点』への問いを盛り

    • 2025年6月3日
  • 「黒蝶貝のピアス」/砂村かいり著
    「黒蝶貝のピアス」/砂村かいり著

       元アイドルの菜里子の下で働くことになった環。かつての憧れの人を前に胸を高鳴らせるが、人付き合いが苦手な菜里子と打ち解けられずにいた。それでも、仕事を通じて次第に心を通わせていく。複雑な家庭環境で育った女性二人が励まし合い、両親や恋人、友人との関係性を見詰め直す、希望に満ちた物語だ。(創元文芸文庫

    • 2025年6月3日
  • 「警察官の心臓」/増田俊也著/目そむけられぬ問題
    「警察官の心臓」/増田俊也著/目そむけられぬ問題

       いま目に見えているものが善なのか悪なのか。難しい判断です。しかし人に対する印象にしろ事件の捜査にしろ、見えているものだけで決めつけない。そのことの大切さが本書の底流にはくっきり流れています。 愛知県岡崎市、地蔵池と呼ばれる溜(ため)池で見つかった一体の遺体。身元の名前は土屋鮎子といい、76歳で熟

    • 2025年6月3日
  • 「和菓子の京都増補版」/川端道喜著
    「和菓子の京都増補版」/川端道喜著

       室町時代から続く京都の老舗和菓子店の十五代目当主が残した名著が35年ぶりに復刊。柔らかい語り口でつづる菓子作りと京都への思いは色あせるどころか、ますます重みを増して読者に迫る。「御粽司(おんちまきし)」として宮中に献上してきた粽作りの場面は圧巻。効率とは相いれない手仕事を通じ、伝統とは何かを教えて

    • 2025年6月3日
  • 「多 動 脳」/アンデシュ・ハンセン著     久山葉子訳
    「多 動 脳」/アンデシュ・ハンセン著     久山葉子訳

       「スマホ脳」などベストセラーを連発した著者の最新刊。多動、衝動性、注意困難が特徴のADHDについて、遺伝性の脳の特質であり、決して疾患や障害ではないと強調。その特質は、ヒトが狩りで暮らしていた太古の昔には大きな利点であったことを踏まえ、それを強みにして生きる数々の処方箋を提示する。温かいまなざしが

    • 2025年6月3日
  • 「かずをはぐくむ」/森田真生著、西淑(絵)/間違えるという豊かさ
    「かずをはぐくむ」/森田真生著、西淑(絵)/間違えるという豊かさ

       生まれたばかりのわが子が、いつか言葉を覚え、数を数えたり計算したりするようになる。2児の父親で、数学を修めた著者も、その日を楽しみにしていた。しかし、規則通りに計算するだけの機械より、新たな概念が芽生える瞬間に立ち会える物語の方が数学の本質に近いと考える著者は、子供たちのたわいない言動の中に、数を

    • 2025年6月3日
  • 世界の本棚
    世界の本棚

       韓国でベストセラーとなり、日本でも2024年本屋大賞翻訳小説部門1位を獲得した「ようこそ、ヒュナム洞(どう)書店へ」の著者ファン・ボルムによる読書エッセー「毎日読みます」(牧野美加訳、集英社、1980円)。本を読むことの喜びがあふれんばかりに詰まっていて、本好きの読者は「あるある」と何度も膝を打つ

    • 2025年6月3日
  • 梅雨時の  さっぱり献立/トマトとミョウガのだしマリネ
    梅雨時の  さっぱり献立/トマトとミョウガのだしマリネ

       ミニトマト10個ミョウガ1本 じめじめした暑さが続くと食欲が落ちやすい。そんな梅雨時にさっぱり食べられるパスタ、マリネ、デザートの3品を、管理栄養士の坂本ひかるさんに教えてもらった。グリーンキウイ2個ヨーグルト100㌘蜂蜜【作り方】①キウイは皮をむき、ざく切りにする。②冷凍用の保存袋に

    • 2025年6月2日
  • 「誰かの心に/寄り添える/   歌を」/2社で同時メジャデビュー/歌心 りえ
    「誰かの心に/寄り添える/   歌を」/2社で同時メジャデビュー/歌心 りえ

       圧倒的な歌唱力を武器に、日本と韓国で人気の歌手、歌心りえ。3人組ユニットでの活動などを経て、このほどソロでメジャーデビュー。ビクターから「SONGS」、エイベックスから「HEARTS」と、2枚のアルバムを同時にリリースした。 どちらもカバー曲を主軸に構成しつつ、「SONGS」には故郷栃木や家族へ

    • 2025年5月27日
  • 「FPU~若き勇者たち~」/命懸けの任務に挑むアクション
    「FPU~若き勇者たち~」/命懸けの任務に挑むアクション

       国連平和維持活動(PKO)のために組織される警察部隊=FPU。その中国部隊の分隊長(ホアン・ジンユー)と狙撃手(ワン・イーボー)らが、派遣されたアフリカの某国で、命懸けの任務に挑むアクション。製作総指揮を「インファナル・アフェア」のアンドリュー・ラウが担当した。(ハーク、DVD、101分、418

    • 2025年5月27日
  • 「厨房から見たロシア」/ヴィトルト・シャブウォフスキ著        芝田文乃訳/食と権力の深い関わり
    「厨房から見たロシア」/ヴィトルト・シャブウォフスキ著        芝田文乃訳/食と権力の深い関わり

       著者はポーランドのジャーナリスト。前作「独裁者の料理人」で、イラクのフセインやキューバのカストロといった独裁者に仕えたシェフらを取材し、グルマン世界料理本賞を受賞している。 本書では、旧ソ連やロシアをめぐり、さまざまな時代の食の現場に立ち会った人たちから話を聞き出した。まさに厨房(ちゅうぼう)か

    • 2025年5月27日
  • 「父が牛飼いになった理由」/河崎秋子著
    「父が牛飼いになった理由」/河崎秋子著

       北海道の酪農家に生まれた直木賞作家が、自身のルーツをたどる。旧満州から引き揚げ、大阪から北海道に移住を決めた祖父と、独立して自分の牧場を開いた父。酪農家の日常も紹介しながら、脳卒中で倒れた父への思いと介護、酪農を取り巻く厳しい状況から暴れ牛との戦い方まで、軽やかで温かい筆致で描く。(集英社新書・

    • 2025年5月27日
  • 「働くことの小さな革命」/工藤律子著/社会的連帯経済の可能性
    「働くことの小さな革命」/工藤律子著/社会的連帯経済の可能性

       非正規雇用で不安な日々を送る人が増加。働き方改革が取り入れられても名ばかりで、労働時間が減った分の収入を副業で補うという現実もある。年金だけでは暮らしていけない高齢者も少なくない。政府が教育を通して効率的で生産性の高い「経済成長に役立つ能力」を持つ人間を育てるための競争をさせている―。 根源にあ

    • 2025年5月27日
  • 「青ひげ夫人と秘密の部屋」/千野帽子著/「ある感じ」からの文学探究
    「青ひげ夫人と秘密の部屋」/千野帽子著/「ある感じ」からの文学探究

       「青ひげ」は説話であり、本の世界に現れたのはフランスの詩人シャルル・ペローが1695年に刊行した手書きの説話集が初めてである。7番目の妻を館に迎え入れた青ひげは、ある部屋にだけは入ってはならないと妻に命ずる。しかし、彼女は好奇心に負けてその部屋の前に立つ。ドアを開けた彼女が見たものは…といった筋立

    • 2025年5月27日
  • 「春のこわいもの」/川上未映子著
    「春のこわいもの」/川上未映子著

       不穏で甘美かつ官能的な恋愛を描いた短編集。快楽に生き、エゴイズムを通す主人公たちに、悪夢のようなラストが待ち受ける。意中の女子からもらった手紙を紛失した男子高校生に起こる悲劇を描いた「ブルー・インク」、死に際の老女が衰える身体を慰めながら夫以外の男性と情欲に燃えた日々を回顧する「花瓶」など6編。

    • 2025年5月27日
  • 「物語の作り方」/G・ガルシア=マルケス著       木村栄一訳
    「物語の作り方」/G・ガルシア=マルケス著       木村栄一訳

       「ストーリーテラー(の能力)は生まれつきのものさ。でも技巧やトリックなら教えられるよ」。映画やドラマ制作の経験も豊富なノーベル賞作家が、脚本家らとの討論で、小説に限らない「物語ること」の極意を伝える。「本当らしい話には少しのうそが必要」など、日常の言語表現に役立つヒントにも出合える。(岩波現代文

    • 2025年5月27日
  • きょうの献立
    きょうの献立

       作り方①ブリをザルに入れて熱湯を回し掛け、キッチンペーパーで水気を拭き取り、かたくり粉小さじ2をまぶす。②大根は皮をむいてすり下ろす。大葉は千切りにする。③フライパンにごま油小さじ2を熱し、①を中火で4分ずつ両面を焼く。④しょうゆ、みりん各小さじ2、酢小さじ1、下ろし大根を合わせ、フライパン

    • 2025年5月26日
  • 映画「今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は」/切なく、みずみずしい感情表現/出演の萩原利久、河合優実
    映画「今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は」/切なく、みずみずしい感情表現/出演の萩原利久、河合優実

       お笑いコンビ「ジャルジャル」の福徳秀介の小説を映画化した「今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は」(大九明子監督・脚本)=公開中=。主人公の大学生を萩原利久、ヒロインを河合優実が演じる。◇  ◇  ◇ 大九監督とはそれぞれ縁があり、「また機会をもらえてうれしい」と萩原。河合は「(2023年の初

    • 2025年5月22日
  • 「あなたとAIが     融合する日」/スーザン・シュナイダー著、/小山虎監訳、永盛鷹司訳
    「あなたとAIが     融合する日」/スーザン・シュナイダー著、/小山虎監訳、永盛鷹司訳

       ポスト人間としての超知能AIと、AIを駆使して強化されるわれわれ人間の究極の脳。意識とは何か。意識は人為的に生み出せるのか。AIが意識を持ち得た時、倫理的に起こり得る問題は―。地球上で最高の知的生命体の地位をAIが取って代わる可能性について、哲学者が持論を展開する。筆致は近未来SFのよう。(ニュ

    • 2025年5月20日
  • 会社員だって面白い/「高宮麻綾の引継書」を書いた/城戸川りょうさん
    会社員だって面白い/「高宮麻綾の引継書」を書いた/城戸川りょうさん

       「高宮麻綾のモデルは3人いる。夢中になったら一直線なところは私自身」と語る城戸川りょうさん=東京都千代田区 商社に勤める女性が奮闘する姿を描いた「高宮麻綾の引継書」で、作家デビューを果たした城戸川りょうさん。自身も商社で働く会社員だ。組織に所属するがゆえの制約もあるが、「会社員だって冒険できるし、社

    • 2025年5月20日
  • 「世界を変えたスパイたち」/春名幹男著/ウクライナ侵攻の真相に迫る
    「世界を変えたスパイたち」/春名幹男著/ウクライナ侵攻の真相に迫る

       「ソ連崩壊」からプーチン大統領の登場、そしてウクライナ戦争に至るまで国際舞台の裏側にいたスパイの暗躍を暴き、現代史の一端を解き明かす。著者はジャーナリストの視点で機密性の高い文書などに当たり、自ら取材する手法を取り、読者を大いに引き付ける。 ソ連はなぜ終わりを迎えたのか、プーチン大統領はなぜウク

    • 2025年5月20日
  • 「アニメーションと国家」/雪村まゆみ著/民主的な制作現場へ
    「アニメーションと国家」/雪村まゆみ著/民主的な制作現場へ

       一般的に「アニメの現場」と聞いて思い浮かぶのは、2019年のNHK朝ドラ「なつぞら」で描かれた高畑勲、宮崎駿らアニメーターや、アニメ「SHIROBAKO」でリアルに表現されたアニメスタジオなどだろう。所狭しと机が並んだスタジオで、アニメーターが原画を描いてはほごにし、うろうろと歩き回る。そうした典

    • 2025年5月20日
  • 「移動そのもの」/井戸川射子著/世界映す異様な9編
    「移動そのもの」/井戸川射子著/世界映す異様な9編

       著者は詩人として注目されたのち、小説でも芥川賞を受賞した。そんな著者の新刊「移動そのもの」は、一見すると9編を収めた短編集のような体裁であるが、詩と小説の中間のような散文作品集である。 冒頭の表題作がまず変わっている。他人の葬儀に入り込み遺産を横取りする詐欺師の2人組がいて、なぜかチンパンジーと

    • 2025年5月20日
  • 「命の交差点」/秋谷りんこ著
    「命の交差点」/秋谷りんこ著

       がん病棟で働く看護師の卯月咲笑は、患者の思い残したことが「見える」特別な能力を持つ。患者の傍らに一人息子の幻影が見えたり、透き通った美しい空が見えたり…。寄り添いながら心のこもったケアをする咲笑。とりとめのない会話の中から、生きるヒントが見つかる。命の尊さと希望を描いた感動のシリーズ第3弾。(文

    • 2025年5月20日
  • 「天路の旅人」(上・下)/沢木耕太郎著
    「天路の旅人」(上・下)/沢木耕太郎著

       戦時中、日本の密偵として敵地の中国大陸奥深くに潜入した西川一三の壮大な旅を描くノンフィクション。チベット仏教の巡礼僧に成り済まし、敗戦後も歩みを止めず、ヒマラヤを越えてインドに向かう。足かけ8年に及んだ軌跡をたどり、未知の世界への探究心に突き動かされた生きざまに迫る。(新潮文庫・上737円、下

    • 2025年5月20日
  • 「マイナス×マイナスはなぜプラスになるのか」/鈴木貫太郎著
    「マイナス×マイナスはなぜプラスになるのか」/鈴木貫太郎著

       マイナス×マイナスはプラス、三角すいの体積は同じ底面積の三角柱の3分の1、分数の割り算は引っ繰り返して掛ける…。中高生時代に丸暗記した数学の公式や定理。でも、なぜそうなるのか。論理構成を理解する数学の本当の面白さを学び直す。実生活での直感と一致しない確率の話も、読者の数学的思考が試されて興味を引く

    • 2025年5月20日
  • 「勢いに任せて/突き進む」  /朝美{{あさみ}} 絢{{じゅん}}/宝塚雪組新トップのお披露目公演-東京
    「勢いに任せて/突き進む」  /朝美{{あさみ}} 絢{{じゅん}}/宝塚雪組新トップのお披露目公演-東京

       「ROBIN THE HERO」でロビンを演じる朝美絢=東京・日比谷の東京宝塚劇場「新生雪組の魅力は勢い」と話す朝美絢(左)とトップ娘役の夢白あや=東京・日比谷の東京宝塚劇場 宝塚歌劇団雪組の新トップスター、朝美絢のお披露目公演「ROBIN THE HERO/オーヴァチュア!」が、東京・日比谷の東京

    • 2025年5月20日