国の2023年度予算案に、二酸化炭素(CO2)を回収、貯留する「CCS」の社会実装に向けた新規事業、先進的CCS支援に35億円が計上された。実施場所は適地調査などを経て決まるが、苫小牧CCUS・カーボンリサイクル促進協議会(会長・岩倉博文市長)などは、地元での事業化に期待を高める。また、CCSに有効利用の「U」を加えたCCUS拠点化実証は23年度、前年度比約2億円減の80億円が計上され、市内真砂町などで事業が計画通り進む。
23日に政府が23年度予算案を閣議決定した。両事業は経済産業省の概算要求ベースと比べて減額されたが、いずれも50年のカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出ゼロ)達成に必要な技術と位置付けられた。
先進的CCS支援は、30年までの社会実装を目指し、試掘、設備の建設、操業まで段階的に全面支援する内容。独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)に交付金を支出し、民間企業に委託して行う。24年度まで適地調査した上、先進的CCS事業を選定する。
苫小牧では12年から国のCCS実証が展開され、日本CCS調査(JCCS)が19年11月、目標のCO2圧入量30万トンを達成。地質構造上はCO2約5億トンの貯留も可能とみられているだけに、同協議会は「関係団体の説明と理解が前提だが、苫小牧で事業が進んでいけば」と期待する。
市内で天然ガスや原油を商業生産する石油資源開発(JAPEX)は、今年10月に市内で開かれた会合でも「苫小牧の地中は知見があって有利。苫小牧で事業を応募したい」と発言しており、今回の予算化に「ありがたい」と歓迎。事業公募に向けて「具体的な方向性が示され、適合すれば、前向きに検討する」としている。
また、21年度から継続しているCCUS拠点化実証は、概算要求ベースと比べて約28億円の減額となったが、ほぼ前年度並みの予算を確保した。世界初とされる液化CO2の船舶長距離輸送の24年度スタートに向け、今年5月から市内真砂町で液化CO2の受け入れ設備を建てており、来年は液化CO2の出荷側となる京都府舞鶴市でも関連設備を着工する予定だ。