新千歳空港を拠点に東京、函館とネットワークを結び、デジタル技術を活用してインバウンド(訪日外国人旅行者)への観光案内を強化する実証事業が展開されている。観光庁の応募事業を受託した東急(東京)が、空港を管理・運営する北海道エアポート(HAP)と連携し、観光案内所の機能強化や効率化を推進。HAPは「インバウンドの本道誘客、地方空港のサービス充実の足掛かりになれば」と期待している。
実証事業の期間は昨年12月20日~今年2月15日。東急の観光案内DX(デジタルトランスフォーメーション)ツールを活用し、新千歳空港、東京渋谷駅地下の渋谷ちかみち総合インフォメーション、函館空港をネットワーク化した。新千歳の外国人観光案内所で普段から多言語に対応するスタッフが、函館、渋谷に訪れたインバウンドにオンライン通話で北海道観光を案内。渋谷は1日当たりおおむね40組、函館は同5組がサービスを利用している。
渋谷、函館に同社の「リモート&AIコンシェルジュサービス」端末を設置。インバウンドがタッチパネルを操作して質問に答えれば、ニーズに合った旅行プランが自動で提案される仕組み。オンライン接客でよりきめ細かく、ローカルな情報を提供しており、インバウンドから「お薦めのスキー場を教えて」「ニセコ付近で犬ぞり体験できる所は?」などの質問が寄せられている。
中には「豊富温泉(宗谷管内豊富町)の行き方は?」など具体的で詳細な問い合わせもあり、HAPは「端末で潜在的な観光ニーズを掘り起こし、新千歳のスタッフが生きた情報を紹介することで、より有意義な対応につなげている」と強調。端末の質問回答やオンライン案内の結果をデジタル技術でテキスト化し、マーケティングデータとして蓄積する。
また、国際線の直航便が就航していない地方空港でも、多言語案内の充実が図れるとあり、「地方で人材の確保が難しくなる中、案内所を効率的に運営できる」と見通す。実際の導入についてはまだ検証段階だが「インバウンドの満足度を高めることができ、得られたデータを地域に還元し、観光振興に役立てることも考えられる」と展望している。