岸田文雄首相は20日、新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けについて、今春に現在の「2類相当」から季節性インフルエンザなどと同じ「5類」へ引き下げることを検討するよう、加藤勝信厚生労働相ら関係閣僚に指示した。屋内でのマスク着用の在り方や、ワクチン接種などの公費負担が大幅に見直される。3年に及ぶコロナ禍からの社会経済活動の正常化に向けて、大きな転換点を迎えた。
政府関係者によると、引き下げの時期は、自治体の準備期間などを踏まえ、5月の大型連休前後を想定している。
首相は20日、首相官邸で記者団に対し、「平時の日本を取り戻していくために、さまざまな政策、措置の対応について段階的に移行し、具体的な検討、調整を進める」と強調。マスクの着用についても見直す考えを明らかにした。厚労省は審議会の感染症部会を23日に開き、移行に向けた本格的な議論を始める。
感染症法では症状の重さや感染力の強さから、感染症を危険度の高い順に1~5類に分類。5類に引き下げると、入院勧告や医療費の公費負担は法律上の根拠がなくなる。新型コロナ対策の特別措置法に基づく「緊急事態宣言」「まん延防止等重点措置」といった対策も取れなくなり、感染者数は全数把握から、特定の医療機関からの報告に基づく「定点把握」などに簡素化される。
マスク着用を巡っては、政府内に5類への引き下げと同時に屋内でも原則不要とする案がある。発熱などの症状がある人や高齢者施設など感染リスクが高い場所に関しては取り扱いを検討する。
感染拡大に伴う医療提供体制の逼迫(ひっぱく)や、医療費の自己負担に伴う受診控えを避けるため、ワクチン接種や医療機関への財政措置などは移行期間を設けた上で、段階的に縮小する案が出ている。