高齢者に作業機会提供 苫小牧のデイサービスこぶし

高齢者に作業機会提供
苫小牧のデイサービスこぶし
得意や関心に合わせ、さまざまな作業活動に打ち込む高齢者

 苫小牧市本幸町のデイサービスセンター「こぶし」は、機能訓練を通じた高齢者の社会参加として、匂い袋や毛布、雑巾などを作る作業プログラムを展開している。作業活動専門のデイサービスは市内でも珍しく、完成した作品は企業や学校などで使われている。担当する精神保健福祉士の田中亮太さんは「年齢を重ね、介護が必要となっても、誰かの役に立っているという実感は大切」と語る。

   同デイサービスは、市内の企業コミュニティ苫小牧が運営。定員20人で、1日平均10~15人が利用している。作業活動を取り入れたプログラムを始めたのは、約5年前。個人の余暇としてではなく、自身の役割や社会とのつながりを実感できる場を提供しよう―と、作業活動を軸に据えた。

   プログラムでは、病気や加齢で手指がうまく動かせない人や、新しいことを記憶するのが難しい人もスムーズに取り組めるよう、作業を細分化。「布を裂く」「毛糸で組ひもを作る」「せっけんを削る」「ワイヤにビーズを通す」「毛糸を10センチ四方の四角形に編む」―などさまざまな種類の中から一人一人が選んだ作業を組み合わせ、せっけんの香りがする匂い袋、ひざ掛けにもなる毛布、刺しゅうが施された雑巾、テニスのラケット型のストラップなどを作っている。

   材料は、市民や企業などから寄せられた使用済みの茶封筒や半端に余った毛糸などを活用し、完成品を市内の保育園や小学校、協力企業に寄贈することで社会に還元している。今年度はこれまでに30件以上の寄贈を行った。

   寄贈の際は田中さんら担当スタッフが訪問し、取り組みの趣旨や、高齢者が生き生きと活動に励んでいる様子を説明する。昨年12月には、提携企業のテニススクールノア(木場町)の担当者と清水小学校を訪れ、ラケットストラップを寄贈。品を届けた田中さんは、井村友美校長に「子どもたちにも高齢者の力を知ってもらう機会になれば」と述べた。

   田中さんは「介護が必要になっても、認知症になっても、人は社会とつながり、役に立ち続けたいと願うもの。その思いを実現できるよう、さらに多くの理解と協力を得て、取り組みを拡大していきたい」と話している。