苫小牧市立病院は経営強化プラン(2023~27年度)を策定した。入院環境の整備やデジタル化への対応など、収入の確保に力を入れる一方、経費削減や抑制策、目標管理体制の強化などを進め、計画最終年度の経常黒字を目指す。22年度に7万3503人だった年間延べ入院患者数を、27年度目標では9万9000人とするなど、東胆振の重点医療機関として高い成果指標を掲げている。
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同プランの目標では、27年度の経常収支比率は100%とし、単年度資金収支見通しも23年度が4億1700万円の赤字、24年度が5億9600万円の赤字、25年度が1億9600万円の赤字に対し、26年度は2900万円の黒字、27年度は1億3700万円の黒字。同院は、20年度から新型コロナウイルス感染症対策に伴い、国や道の補助金で黒字運営だが、19年度以前は赤字が続いていた。
収入の確保では医療収益の増加を目指し、専門性の高い良質な医療サービスの提供に努める。病床利用率は、コロナ対策による病床確保もあって、22年度は52・7%と低迷していたが、27年度目標は80・7%に設定。入院患者1人一日当たり診療収入も、22年度の6万9455円から、27年度に7万202円まで増加をもくろむ。
同院は新規患者の獲得に向けて、情報発信や各医療機関のニーズ把握、地域の医療機関との信頼関係構築に努めるほか、患者の在院日数適正化に向け、入院から退院までの検査や治療を経過日ごとに記載した診療計画表クリニカルパスの積極的な活用や、病床管理一元化による病床の効率的な運用を推進する。
また、入院環境の整備では、病室の個室か準個室化によるユニット化を実施。2人・4人部屋の一部を可動式パーテーションなどで仕切り、プライベートに配慮した空間の確保を検討する。22年度から進めていた病室へのエアコン設置も24年度までに完了する。
デジタル化への対応も推進。患者が診察後の会計を待たずに済む医療費後払いサービスなどのキャッシュレス決済導入、感染症対策にも資する外来診療のウェブ予約システムやデジタル問診システムなどの新規導入、大学病院との遠隔画像診断の拡充などを考えている。
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また、経費削減は早期の目標達成を掲げ、給与費対医業収益比率は22年度の60%に対して26年度までに53・2%、材料費対医業収益比率は22年度の23・7%に対して25年度までに23・0%とする。後発医薬品(ジェネリック)の採用促進、院内照明設備の発光ダイオード(LED)化などにも取り組んで各費用を抑制する。同院は「プランを着実に実行し、今後も東胆振、日高圏域の基幹病院として二次救急輪番の担当、周産期医療体制を堅持していきたい」としている。
総務省が22年3月に策定した「持続可能な地域医療提供体制を確保するための公立病院経営強化ガイドライン」に基づく取り組み。地域で必要な医療を安定的、継続的に提供するため、総務省は公立病院に抜本的な経営改革を求め、同院もSDGs(持続可能な開発目標)の理念を反映した同プランを策定した。