宮沢賢治来苫 あす100年 記念の講演会や花展

賢治研究者・髙橋さんの講演に耳を傾ける参加者

 多数の名作童話や詩を残した宮沢賢治(1896~1933年)が苫小牧を訪れてからあす21日で丸100年となるのを前に18、19の両日、苫小牧市内で有志団体主催の講演会が相次いで開かれた。20日には、賢治の植物愛に着目した花展が始まった。

  現代に通じる先進的指導 妙見寺で教育手法学ぶ

  「斎藤征義記念 宮沢賢治ライブラリ虔十庵」(けんじゅうあん、末澤隆信代表)は18日、音羽町の妙見寺本堂で、記念講演会を実施した。賢治の研究者で札幌新陽高校教諭の髙橋励起(こうき)さん(44)が「賢治に学ぶ、未来の教育」と題して講演。市民ら40人が、現代にも通じる賢治の教育手法を学んだ。

   髙橋さんは現代教育について「社会は変化しているが教育は昔のまま」と指摘。賢治は教科書が重視された時代に体験と対話、多様性を重視した先進的な指導で生徒の学ぶ意欲を高めたと力説した。

   講演後は、「銀河鉄道の夜」のワンシーンをイメージして末澤代表が考案したケーキ「白鳥の停車場」が登場。参加者は舌鼓を打ちながら髙橋氏とざっくばらんに懇談し、「現代を生きる大人が子どもの個性を引き出すことの大切さを学べた」といった声が上がっていた。

   会場には賢治の童話や詩の世界を描く函館市の版画家佐藤国男さん(72)の作品約30点が展示され、参加者は耳と目で、賢治の世界観を堪能していた。

  独自表現と道内での体験 ライター・編集者中川さん解説

   斎藤征義と賢治を語る会(丸山伸也代表)は19日、表町のとまこまい元気ホールで学術講演会を開いた。函館市在住の編集工房かぜまち舎ライター・編集者の中川大介さん(61)が「賢治と北海道」の演題で登壇。市民ら60人が、賢治の「心象スケッチ」と呼ばれる独自の表現法や北海道との関わりについて知識を深めた。

   中川さんは、賢治が来道した当時について「農業から工業化が進む活況な時代だった。作品の中に明るさを感じる詩もあり心境の変化がうかがえる」と述べた。

   心象スケッチに関しては「目にした風景から過去と未来の時間に内在する刹那(せつな)を捉えた。これが多くの人を引き付ける」と指摘。詩の陰鬱(いんうつ)な印象と相反する明るい表現には北海道での体験が垣間見えると述べ、参加者をうならせた。

   講演後は、朗読サークル響の秋田美枝子さんが短編小説「よだかの星」を朗読。シンガー・ソングライターかんばやしまなぶさんは賢治の詩「牛」の歌などを披露した。

 詩の情景を生け花に あすまで苫信市民サロンに展示

 池坊苫小牧支部田中弘琳社中でつくる「宮沢賢治来苫から百年記念会」(田中弘美代表)は、表町の苫小牧信用金庫2階の市民サロンで記念花展を開催。植物を愛した賢治の人物像に着目した企画で、賢治の詩からイメージされる情景を表現した作品など26点が並ぶ。21日まで。

 苫小牧民報社のホールを会場に活動するとまみん池坊生け花教室と、市民活動センターを拠点とするおはな教室ことりクラブの生徒らが出展した。

 とまみん池坊生け花教室の生徒らは賢治の詩を題材とした作品を手掛けた。「雨ニモマケズ」をムシカリの枝だけでしなやかに表現したものや、「おいけとばすな」をヒマワリやアリウムで印象的に仕上げた作品など、個性豊か。

 「ことりクラブ」の未就学児や小中学生による元気いっぱいな作品も展示。賢治が苫小牧を訪れた大正や昭和初期の苫小牧駅前の風景写真も飾られている。

 田中代表は「賢治が愛した草花で駅前通りを飾りたいと企画した。想像を巡らせながら鑑賞を楽しんでもらえれば」と来場を呼び掛ける。

 入場無料。午前9時~午後3時。