旧エガオ再開発へ市と地権者合意、まちの声は

旧エガオ再開発へ市と地権者合意、まちの声は
中心街衰退の象徴となっている旧商業施設「苫小牧駅前プラザエガオ」

 JR苫小牧駅南口の旧商業施設「苫小牧駅前プラザエガオ」(旧エガオ)について、苫小牧市は5日、旧エガオの土地を一部所有する不動産会社「大東開発」と再開発することで合意したと発表した。かつてのまちの顔は2014年8月に経営悪化で閉鎖して以来、中心街衰退の象徴。市民からは「閉鎖から10年は長すぎた」「再び駅前ににぎわいを」などとさまざまな声が上がった。

   駅前通りのライブハウス経営者で、14年から中心市街地活性化を目指す野外音楽フェス「活性の火」に実行委員長として携わってきた杉村原生さん(46)=表町=は再開発について「今まではどこか本当にできるのか―という思いもあったがエガオビル解体に現実味が出てきたので、もっと真剣に考えなければという気持ち」と今回の合意を歓迎する。

   「長く氷河期のような駅前だったが、かつてのにぎわいを知る世代なのでポテンシャルは十分に感じている」と強調。「活気を取り戻すために中心部を選んで働いている者として、もっと積極的に意見を出していかなければ」と力を込めた。

   「まちの中心部に廃ビルがあると景観が損なわれる。早く再開発が進んでほしい」と訴えるのは、光洋町の近藤誠さん(74)。美園町の主婦片岡静さん(81)は旧エガオビルが約10年間も放置されたことに不満をにじませつつ「解体後は商業施設建設など市民のための再開発が進むことを願っている」と話した。

   エガオの運営会社だったサンプラザの元社員で、澄川町の会社役員杉本一さん(54)は「道内の地方都市における再開発は権利関係が非常に複雑で、岩見沢や滝川などいまだに交渉が難航し問題解決に至っていないまちもある中、苫小牧で早期に決着がついたことは評価すべき」と指摘。「サンプラザ(エガオ)ビル解体を公費で行うのか、隣の土地を取得した不動産会社がどのように開発を進めるのか。駅周辺の老朽化した他のビルを含め、どんなふうに再開発されていくのかに関心がある」と述べ、駅前全体の活性化を願った。

   通学、通勤で旧エガオ前を通る人たちからも歓迎の声が上がった。

   苫小牧西高校2年の橋本杏里さん(16)は「イオン(モール苫小牧)みたいな洋服店やゲームセンターのある大型商業施設が駅前にできたら若者は喜ぶ」と笑顔。同級生の工藤理央さん(16)は「営業しているのを見たことがなく、何かできればいい」と話した。

   緑町の会社員原田雄一郎さん(25)は「駅前のビルが廃ビルというのは、苫小牧市民にとって恥だった。まずは解体し、すっきりしてくれたら何か変わるかもしれない」と期待を込めた。

   まちなかで親子らの居場所づくりに取り組んできた市民団体「できることからはじめのIPPO(いっぽ)」のメンバーで、メーク講師の太田ちさとさん(47)=北光町=は「旧エガオビルの近くを通るたび子どもとも『暗いね』と話していた」とようやく事態が動きだしたことに安堵(あんど)の色を見せた。

   20~40代の母親を中心に18年に結成された同団体は、行政や商業関係者などと連携しながらイベント開催を重ね、中心街に親子連れが集まり、交流する場の在り方を模索してきた。太田さんはかつてビルに入居していたダイエー苫小牧店内の化粧品テナントで働いていた経験からも、今後進められる駅前の再開発に「商業施設など大きな施設を新たに建てることで一時はにぎわっても、時代の流れでいずれ衰退してしまう」と懸念。「市民主体のイベントがいつでも開かれているなど、人が自然に集まるような仕掛けが必要」と提言する。