野菜作りで交流の輪 南地域包括支援センター 苫小牧

野菜作りで交流の輪 南地域包括支援センター 苫小牧
フレンドリーファームで作業に励む人たち

 苫小牧市南地域包括支援センター(新富町)の敷地内の農園「フレンドリーファーム」で、今年も作物づくりが進んでいる。認知症の男性が「子どもたちに野菜を作って食べさせてあげたい」と話した一言から始まった活動。地域の高齢者がトマトやイチゴなどを栽培し、子どもたちの喜ぶ顔を楽しみに畑の手入れに精を出している。

   同センターが日ごろ関わる高齢の男女2人が中心となり、5月にトマトやキュウリ、トウモロコシ、ジャガイモ、ニンジン、イチゴなどの苗や種を植え、活動をスタート。時間を見つけて雑草抜きや間引き、水やりも行っている。

   6月中旬には弥生町のキラキラ保育園の1、2歳児やニチイケアセンターの利用者と職員、苫小牧看護専門学校の学生らが参加。園児たちはイチゴの青い実を発見し、「早く食べたい!」と待ち切れない様子。高齢者らは苗を寒さから守るため、ボールとビニールで囲いを作った。

   地域看護学の実習で訪れた同校の学生は高齢者と触れ合いながら、苗のネット掛けや柵の設置に汗を流した。2年生の三上楓子さん(20)は「病院に限らず、地域の中での働き方も知ることができ、興味が湧いた」と語り、髙山愛梨さん(20)も「地域の高齢者と接することができて楽しかった」と話した。

   同ファームは、認知症で周りの人との関係がうまく築けなくなった高齢男性の支援策として、2021年にスタート。市民ボランティアが一緒に作業したり、保育園児が立ち寄ってトマトを摘んだり、苫小牧西高校の生徒が看板を作ったりと、畑を通じて交流の輪が広がった。

   男性はその後、病気の進行で施設に入所し、来られなくなったが、他の高齢者らとファームの活動は継続。昨年度は保育園児と一緒に野菜を味わう収穫祭も開いた。

   同センター管理者の桃井直樹さんは「高齢化の進展でおのずと認知症の人が増え、本人の生きがいづくりや、やりたいことをかなえる支援策が今後さらに重要になる。その一つのアプローチとして、農園の活用法を探っていきたい」と話している。