東京電力福島第1原発事故による立ち入り禁止区域内の牧場にとどまり、牛の世話をし続ける酪農家の姿を描いた絵本「希望の牧場」(岩崎書店)の原画展が20日まで、苫小牧市東開町の東開文化交流サロンで開かれている。絵本画家・吉田尚令さんの挿絵やラフ画のほか、被ばくした牛たちの姿を収めた記録写真なども展示している。
希望の牧場は、直木賞作家森絵都さんが文章を手掛け、2014年に発行。放射性物質の汚染によって避難指示が出された同県浪江町にとどまり、国から任意の殺処分が指示されている肉牛たちの世話を続ける”牛飼い”の奮闘を描いている。
会場では、表紙や挿絵に使われた吉田さん直筆の18枚の原画を展示。福島の美しい風景を緻密に描き込んだ作品や何かを訴えるかのように、じっとこちらを見詰めている牛の絵などが並ぶ。
牛舎に取り残さたまま餓死した牛や、母牛の亡きがらの近くで必死に生き延びた子牛の写真などもあり、原画と合わせて見ることで、絵本の中の牛たちが伝えようとしているメッセージに思いを巡らせてもらいたい考えだ。
企画した苫小牧市立中央図書館の富田歩美館長は「絵本とは一味違う、原画ならではの美しさを楽しんでほしい」と語る。
原画展は開館時間(午前9時~午後9時)内で、自由に鑑賞できる。吉田さんの協力で全道各地の公共図書館を約2年かけて巡回し、市立中央図書館でも9月に実施予定という。