秋サケ不漁 漁獲量前年同期比22%減 定置網にはブリやマグロ 苫小牧漁協

秋サケ定置網に入っていた全長約2メートルの本マグロ

 苫小牧漁業協同組合(伊藤信孝組合長)の秋サケ定置網漁は9月30日現在、漁獲量は前年同期比22・4%減の12・5トンで、統計史上最低だった前年を下回る序盤となった。海水温の高さを示すようにブリやサバなどが取れ、全長2メートル近い本マグロ(クロマグロ)が上がった日も。漁業者は海洋環境の変化に戸惑いつつ、「これから回復すれば」とサケの回帰を願っている。

   同漁協のまとめによる速報値。同漁協は苫小牧沿岸の西側海域に、秋サケ定置網5カ統の権利を保有し、漁期は9月1日~12月3日。今年は資源の回復につなげようと、9月4日から定置網を仕掛け、初水揚げも同9日に遅らせた。

   しかし、初日から「海の異変」は顕著だった。漁船3隻でサケはわずか約360キロにとどまり、選別する台の上はフクラギ、サバがびっしり。漁業者は抱きかかえるようにブリを運び、クロマグロをクレーンでつるすなど、秋サケ漁とは思えない光景が広がった。

   サケは9月30日現在、漁獲高は前年同期比約15%減の960万円。同漁協は「しけも多かった影響があるが、そもそも量が取れていない。魚がいれば船を出せた日もあったが、週2回しか操業しないこともあった」と話す。

   1キロ当たりの平均卸売価格は767円で、著しい不漁で品薄だった前年と比べて67円高。いわゆる「傷物」も含めた単価だが、近年の不漁続きで冷凍の在庫が枯渇し、生鮮、加工いずれも需要増で高値が続いている。

   一方、サバは漁獲量が約35%増の15・5トンで、漁獲高が約10%増の110万円。ブリやフクラギなど「その他」は漁獲量が約2%増の46・8トン、漁獲高は約25%減の570万円。同漁協は「サケが取れなければ厳しい」と嘆き、「例年は10月が漁獲ピーク。これから上向いてくれれば」と話す。

   ただ、10月~翌年3月が漁期のスケトウダラも、「近年はサメ被害が目立ち、開始時期をずらしている」といい、今季はいまだ操業開始に至っていないのが現状。当面は海水温の低下とサケの回帰を願う日が続きそうだ。

   北海道立総合研究機構さけます・内水面水産試験場(恵庭市)によると、今年の胆振海区の秋サケ来遊予測数は、前年実績比73・6%増の16万2000匹。ただ、昨年は胆振海区漁業調整委員会に記録が残る1997年以降、漁獲量、漁獲高いずれも最低だった。