防風林の働き可視化 ドローンやiPadで 苫高専の鳥田准教授らの共同研究

防風林の働き可視化 ドローンやiPadで 苫高専の鳥田准教授らの共同研究
防風林の効果を見極める研究の一場面(提供)

 苫小牧工業高等専門学校の創造工学科都市・環境系の鳥田宏行准教授(57)は9月、畑の土や作物を風の被害から守る防風林の効果について、ドローンやiPadなどを使って高精度に可視化する研究の成果を発表した。国内の他の研究機関との共同研究で、日照や土地の有効活用などを理由に道内で防風林が減りつつある中、防風林が果たす役割を農業関係者に分かりやすく伝える内容となっている。

 研究グループは同校と、森林研究・整備機構森林総合研究所、道立総合研究機構、農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)北海道農業研究センター、京都府立大の計5機関。

 研究は2022年、農研機構が十勝管内芽室町に所有するジャガイモ畑で着手。植え付け時に畝(うね)を同じ高さにそろえ、強風の後に高さがどのように変化したかをドローンで計測した。12・5メートルの木を2列植えた防風林の近くでは風速が急速に低下し、畝の高さも維持。防風林から離れるほど侵食が大きくなることが視覚的に示された。

 さらに、iPadに搭載されたセンサーや無料アプリを使って畝の高さを計測することで、同様に防風林の効果を可視化できることも確認。栄養を蓄えた表土が畑から失われなかったことに加え、ジャガイモが日光に当たって緑色になる緑化被害も防げることを証明した。

 これらの結果は3月、農業とコンピューターに関する国際的な学術誌「Computers and Electronics in Agriculture」のオンラインサイトで公開。9月に報道発表された。

 鳥田准教授は国内で気候変動による自然災害が多発する中、「従来のインフラだけでは災害に耐えられない」と、人工建築物に加え自然の持つ機能を活用したグリーンインフラの役割に注目した。防風林の研究もその一環。

 防風林は基本的に農業関係者の個人的な所有物で、最近は農作業の効率化などを背景に減少している。その結果、風による土壌侵食や作物被害が発生しており、防風林の効果を農業関係者に十分に理解してもらった上で取り扱いを検討してもらおう―と研究に臨んだという。

 鳥田准教授は「地球環境が大きく変わる中で人間が暮らし続けるためには、自然の力を生かすという視点が大切。今後も研究を重ねていきたい」と語る。