衆院選道9区(胆振・日高管内)で、前回(2021年10月)に続いて選挙区で勝利を果たした立憲民主党の山岡達丸氏、及ばなかった自民党新人の松下英樹氏、共産党新人の立野広志氏をそれぞれ担当した記者が選挙戦を振り返った。
A「山岡氏は管内全18市町で得票数がトップ。完勝で4選を果たした。現職として3期10年、浪人時代を含めて15年、地域をくまなく回り、きめ細かに活動したことが実を結んだ」
B「政治とカネの問題が争点となり、自民党支持層の票が山岡氏に流れ、松下氏は重たいハンディを背負っての厳しい戦い。下馬評からもはるか先の山岡氏を追う立場だったが、その背中はあまりにも遠かった」
A「自民党派閥の裏金事件で、堀井学元衆院議員が辞職した影響もあったが、それを差し引いても山岡氏への評判は高かった。前回に引き続き苫小牧市医師連盟の推薦を得るなど、有権者の困りごとなどに丁寧に対応してきた成果や姿勢が評価された」
B「堀井氏に対しては、前回選挙後も『地元で顔を見ない』などの厳しい声が多く、同党苫小牧支部も不信感を抱き、3月に異例の意見書を出した。身内から厳しい批判が上がり、これまでの支持層が離れた」
A「山岡陣営は『楽勝ムード』を警戒し、関係各所に檄(げき)文を送るなど、組織の引き締めを図ったが、終始余裕さえ感じさせる雰囲気だった。選挙期間中に日高地域の大雨被害を受け、急きょ街頭演説を切り上げて被災地視察に当てるなど、有権者は頼もしく思ったのではないか」
B「松下氏は、堀井氏の後任として9月29日に候補予定者となったが、首相就任から衆院解散・総選挙まで戦後最短の日程。知名度も後援会組織もない松下氏にとって、準備もままならない厳しい選挙戦。堀井氏の批判もまともに受けた。
さらに候補者選考を巡ってもひともんちゃくあった。道9区支部は当初3人を党本部に推薦する方針だったが、候補者の一人を『不適格』とする発言があり、再投票を行う事態になった。藤沢澄雄道議が選考委員長を辞任し、党内でも意見が割れたまま選挙戦を迎えた」
C「立野氏は、裏金事件を踏まえて『政治を変える特効薬は共産党。副作用もない』と訴えた。選挙戦後半で、自民党が非公認とした候補が代表を務める党支部に2000万円を支給した問題を、同党機関紙『しんぶん赤旗』が報じるなど、特効薬としての影響力を感じた。
ただ、候補を出した前々回(2017年)の3万5000票余りを大きく下回り、選対幹部が『組織としての地力のなさが出た』と振り返ったように、党としての発信力や訴求力に課題が見えた選挙でもあった」
B「松下氏はまだ30代前半と若く、『今後伸びる可能性は大いにある』と期待を寄せる声もあった。今回は自民党への批判をまともに受けた選挙戦でもあり、党関係者からは『ようやくスタートラインに立てた』との声もある。党として至らなかった点を見直し、地に足を着けて再出発を図ってほしい」
A「投票率は過去最低と低迷し、政権与党の地元議員はいなくなった。振り返ると山岡氏も9区で初挑戦した際は大差の負けから始まった。山岡氏はこれからも有権者の信任に応え、選挙戦で訴えたように政治の信頼を取り戻せるよう、取り組んでもらいたい」